いつだって1人だった





いつだって孤独だった









そう君は言うけれど



私は







ずっとずっと君を想ってたよ―――――――




















『君は不器用なんだよ』









夜中に目が覚めた



汗だくになりながらも

辺りを見回してみると



すぐ側でオレンジ色の髪をした女性が眠っていた



その手は私の手をしっかりと握っている




もう離さない、とでもいうように



その気持ちがくすぐったくて

とても嬉しくて



そっと手を抜き取って

女部屋を後にした




船は海の真ん中に浮かんでいた


航海を始めたばかりの新しい船

新しい仲間



つい先日お別れをした仲間、メリー号に愛着が沸きすぎて


たった1つの居場所みたいになっていたから

この新しい船はまだ何だか落ち着かない



もちろんこの子にだって愛着は芽生えつつある


けれど小さい頃から居場所を転々としていた私にとって




メリー号はかけがえのない大切な仲間だったから








満開の星空をバックに、聳え立つ船のマットを見上げると

見張り台から遥か上の方のマットの柱の所に彼女の姿があった








「危ないわよ」







声をかけると

星を見上げていた彼女は


私に気付いて、見下ろしてくる


そしてニコリと微笑んだ







「大丈夫さ」







灰色の短い髪を風に靡かせて

透き通る程真っ白な肌で


ブルーの瞳を持った彼女は



私の大切な幼馴染で恋人だった



私の故郷で出会い、

恋に堕ち、


故郷との別れと同時に彼女とも別れざるをえなくなった




そして再会したのはついこの間のこと
 



海軍本部に連行された時


見張りとしてCP9のいる中に囚われていた私に

彼女はCP9が頭を下げる中ツカツカと歩み寄ってきた



海軍の制服も身に纏っていなくて


それでもあのCP9が頭を下げるくらいなのだから

相当高い地位にいたんだと思う




そして私と目を合わせる否や





『久しぶりだね』







と昔と同じ顔で微笑んだ


私は嬉しくて涙が零れるのを押さえ切れなかった



そんな私を見た瞬間

彼女は二ヤッと笑って



私を抱き上げて窓から飛び降りた





そして船長さん達がCP9と戦っている間


彼女は

その闘ってる様子がよく見える所に私を連れて行ってくれて



私の肩を抱き寄せて囁いた







『見ろよ、こんなにも君を想ってる仲間がいる』

『…っ……』

『もう素直になれよ』

『……貴女……』

『帰りたい、って言ってあげな』




そう言って

彼女は身を翻して姿を消した






そして仲間達に助けられて


海軍の船に囲まれて絶体絶命の危機に陥ったときに、


彼女は再び姿を現した

メリー号と一緒に





彼女は、狙撃手さんに


『私は操縦しちゃいない。メリーが自分の意思で君らを助けに来たんだよ』


と伝えて

そして船長さんにまたあの笑みで








『こんちわ、海軍本部大将です。仲間にしてくれないかな』






そう言い放って

その地位にクルーの皆が驚きと敵意を向ける中


船長さんは何を思ったか一言返事で





『いいぞ』




と笑った



最強の腕を持つ者同士、何処か通じるものがあったのかもしれない








そして旅が再び始まって数日


今、こうしてはマットの上にいる訳だけども…










会えなかった数年があまりにも大きすぎて

私にもの事はよく判らない



誰よりものことを知っていて

誰よりも私のことを知っていてくれる


かけがえのない存在だと思っていたのに



今はこんなにも貴女が遠い―――――











「ロビン」


「…えっ?」


「おいで」







ボーッとしてた私に降りかかる優しい声

虚をつかれて顔を上げてみれば


またあの笑顔で手を差し伸べてくる



届くはずないのに


それでも自然と私は手を伸ばしていた



その瞬間私は水に抱かれていて


気付けば彼女の隣にいた








「……え?」






何が起こったのかわからず目をシバシバさせていると彼女が笑った









「まだ話してなかったね」


「…?」


「私は悪魔の実の能力者。ミズミズの実を手に入れたんだ」


「ミズミズ…?」


「そ。この世の水は全て思いのままに動かせる。そして私自身も水になって動ける」






それが私の力、と

は自分の手を透明…否、水にしてみせた


けれど私は腑におちなくて


その手をそっと掴んでみた

水だけれど

決して手から零れ落ちることなく其処に在る

 





「悪魔の実の能力者はカナヅチになる、のに水の能力があるのはおかしいわ」

「そう、不思議だけどね。私はカナヅチじゃない」

「そんな事って…」

「だから、この力で悪魔の実の能力者達を捕らえて大将の座まで上り詰めたんだ」

「ああ…」

「能力者達を捕らえ続けていれば、いつか君に会えると思って」








「…え?」











彼女の顔を見れば


とても優しく微笑んでいた

そして自分の手を元に戻してから



私の肩に腕を回してくる












「ずっと会いたかったよ、ロビン」

「…っ」
















やっと

やっと



昔大好きだった貴女が見れた




あの頃とは若干声も低くなっているし


私よりも背も大きくなってるし





戦ってきていたせいか身体も筋肉がついて逞しくなっている













それでも


それでも私の大好きなだった


















「正直言うとね…」

「ん?」

「貴女がわからなかったの」

「?」





どして?

とでも言う様に首を傾げる
私は首に回されてるの腕にそっと手を添えて続けた






「約20年…貴女と離れてたわ」

「うん」

「その間にお互いにあった事を全て把握できる訳じゃない」

「だね」

「だから私の知ってる貴女を探してしまうの」








でも、その貴女はいなかった


そう寂しそうに言うと

は声をあげて笑った




そして腕を腰へと移して

更に私を引き寄せてから囁くように言う










「私は私だよ。ロビンが大好きな私、昔も今も変わらない」

「…ええ、私も貴女を愛してるわ。それだけは変わらない」

「逆に心配だよ、こんな綺麗になっちゃって」

「ふふっ、ありがとう。貴女もよ?」









これからはずっと側にいるから





ずっと君を守るから


ずっと君だけを見てくから












そう告げられた愛の告白に




私は唇を重ねて返した







久しぶりに重ねた唇は暖かくて

涙が出そうなくらいだった









やっと



やっとここへ帰って来れたわ










何度も何度も思い描いていたこの暖かい場所




もう、離さない―――――



























fin