『お腹が、空いていたんだ…』










随分前に、にどうしてそんなバイトをしているのかと問い詰めた所


其れまで苦笑しながらのらりくらりと話題を変えていたは、小さな声でそう呟いた






衝撃的だった


私は生まれてこのかた、物に困った事なんて無くて
あまつさえ食べ物に困る事なんて絶対有り得なかったのに…





綺麗なスーツを着こなしていたは、


そんな過去なんて想像させないくらいに裕福に見えていた


それでも中身は




ボロボロだった
















『本当に、お金が無くて…だから僕は、身体をおにぎり1つで売ったんだよ』




『そんな……』




『信じられない?まぁ今となっては女性限定で抱いてあげるだけだけど。此れでも人気でね、今はお金に困らないくらい稼いでるさ』

















私の其れまでの世界と、

リリアンの世界と、



余りにもかけ離れた世界を生きてきた






とても強い眼差しで今の世界を見下ろしていた










きっと彼女が見下ろしている世界に居る私は、

ちっぽけで脆い存在なんだろう






























「好きよ、









「有難う」

















何度伝えても、伝わらぬこの想い


否、はきっと気付いていてはぐらかしているだけね







いつもそう



何かが変わりそうな気がすると、はそれを阻止する


何かが変わるのを恐れている












「私達は全然違う世界で育ったわ。それでも惹かれあったのは運命だと思わないの?」








「……さぁ、どうだろうね?」
















の手の中から、本を取って

真剣に話すように促す



私のベッドに身体を横にして寝そべっていた彼女は、そんな私を見てまた苦笑した




ベッドに腰かけてから、の顔を覗き見る

彼女が一瞬だけ、驚いたように見開くのが判った











「…勘弁してよ、祥子」





、私は本気よ?」




「お願いだから、離れてくれないか」










はそう言いながら左手で顔を覆ってしまう

そのせいで表情は窺い知れなくなったけれど、
きっと心底困っているんだろう



そして、搾り出すように聞き取れるか取れないか小さな声で紡ぎ出された言葉



















「何故?」
















「その顔で、あの人と同じ事を言わないで…」


































時々どきりとさせられる程、彼女と彼女は似ている

母娘なんだから当たり前かもしれないけど



普段は全然違うくせに、こういう時だけは2人の影が重なる程にそっくりだ







その度に僕の胸は締め付けられて



息が出来なくなる










こういう展開を望んだのは、自分なのに

まるで自分で自分の首を絞めているみたいだった







自分で、世界を狭くしているのは判っているんだ


自分で、進む道を縮めているのは判っているんだ







だってこの先に待つ未来なんて決して明るいものじゃないって判っているんだから






















僕は、何のためにこの旅路を歩き続けているんだろう











僕は、何のためにこの世界に産み落とされたのだろう























ねぇ、母さん









僕は、…僕の生きる道はこれしか無かったのかな?




僕は、………貴方に尽くすために生まれてきたの?
















あの人に会うまで、僕は…自分で進むべき道を選んじゃいけないの?
















































『貴方はあの人に復讐するために生まれきたんだからね』

























どうして僕は  


    迷いながら

       逃げ出す事出来ないんだろう?



 
望むのは光射す日を
          

             日を……






















next..