『面倒くさい性格だね、君』






初対面での第一声はどう受け取っても馬鹿にされているようにしか思えなかった





自分の周りの環境に興味を持たなかった私にとって中2の夏に転校してきた子なんて知る故もなく

教室で1人、窓の外を眺めていた私には突然そう言ったのだ












『……何がおっしゃりたいのか良く判らないわ』





『だろうね、判ってたらそんな態度で居られるはずない』


『大体貴方にそんな事言われる筋合いないんじゃないかしら』


『そりゃ失礼。余計なお世話ってか』


『あら、良く理解出来ているようで。それならば構わないでくださらない?』






机の脇に立って自分を見下ろす視線が不愉快で、再び窓の外に顔をやる
それなのには空いていた私の前の席の椅子に座って、目線を合わせてきた









『それは無理な相談だな、だって口説いているんだもん』












初めて会った時から、は軽かった

軽いと言うより女性の扱いに慣れているという感じで、





その瞳からもう逃げ出すことは出来なかった――――――――






























「本当にもう令は可愛いな〜」


「だからもう止めてってば、!恥ずかしいじゃない」


「え?何で?本当の事じゃん」


「いいよ、もう其処まで煽てなくて。可愛いなんて誰にも言われた事ないし」


「お世辞なんて言わないよ、僕は。つぅか言えん。歯が浮いてさぁ」






「ちょっと」








同じくらいの身長の2人が、廊下に居ると壁みたいでしょうがない

決して低くもない背の祥子でも2人と居ると小さく見えてしまう



その2人の背中に苛つきを含めて退いてくれと言うと、2人共笑顔のまま振り返ってきた










「こんな所で突っ立ってないで頂戴。邪魔なのよ」




「うわ、邪魔だって。キっツイな〜、ねぇ令?」




「ごめんごめん」










令が苦笑しながら自らの身体を窓辺に寄せてと並ぶように壁に背を預ける

大袈裟に肩を竦めてみせるの腹に先程職員室で受け取った書類を叩きつけた









「何これ」



「追加課題だそうよ、貴方専用の」



「……うっそ!追加?無理無理」







首を勢い良く左右に振りながら、それを私の腕の中に押し戻してくる

そんな親友に一瞥くれてから、今度はファイルを令の方に渡しながら口を開いた








「休みがちな貴方のために此れをやるだけで単位の埋め合わせをしてくれる先生に感謝しなさい」



「え?何で私?」






ファイルと私の顔を見比べて慌てている令の言葉に、ため息を1つ吐いてから返す








「預けたわよ、責任を持ってに受け取らせて頂戴」



「…いやっ、私じゃ無理だよ!祥子じゃないと受け取らないって」










たった今、が祥子にファイルを突き返したのを見てたのか見てなかったのか

令は責任を負う事を断った



そんなもう1人の親友に眉を顰める











「私じゃないと、ってどういう意味?」




「え?だってそうでしょ?2人は…」




「違うわよ!勝手な憶測で物を言わないで」







もう2人にファイルを渡す事は諦めて、踵を返して教室へ入っていく










苛つくわ


私とを恋仲だと捉えて決めつける周りがとても苛つく












は優しい














はとても魅力あるけれど、



私を見てくれた事は1度だってない








好きな人が居るのだと想像できるけど、認めたくない自分が居る


















「そ、そうなの?私てっきり…」



「…さぁね?」



、はっきりさせないと噂が独り歩きするよ」







「………荒れてんなぁ」










窓から青空を見上げては1人微笑する

その隣で令が意味が判らないと首をかしげた
其れをちらりと見て、は更に笑みを深くする

















「いろいろあるって事だよ」












































































「はい、もしもし。です」





(私よ、こんな時間なのにまだ起きているのね)










同世代の人達に比べてとても落ち着いた声が大好きだった

それが耳に入ってくるとこそばゆいような、何とも言えない感覚に襲われる



やっぱり相手が清子さんだからだと思う





電話口で自然に笑顔になる

自分で言うのも何だけど、今の自分はきっと優しい顔しているんだろう













「うん、電話待ってたからさ」




(無理して起きてなくてもいいのよ?)




「大丈夫、普段からこのぐらいの時間まで起きてるから」




(こんな時間まで何をしているのかしら?)














電話の向こう側から、小さな笑い声がした

彼女の笑顔が目蓋の裏にすぐに浮かぶ



とても優しい笑い方







…僕の母親は絶対にしなかった笑い方が、大好きなんだ
















「清子さんの事考えてるんだよ、毎晩。それこそこんな時間迄ね」




(ふふっ、嬉しいわ。私もよ)




「本当?嬉しいなぁ」




(素直な人は素敵ね。…実はお願いがあるのだけどいいかしら?)




「ん?どうしたの?」




(明後日、大きなパーティがあるのだけど私と祥子の2人だけでの出席なの。貴方も来ない?)




「…ふふっ、エスコートして欲しいの?」




(ええ、それに貴方が居ると声を殿方に声をかけられなくて助かるのよ)




「あ、それが本音か」










喉の奥で低く笑うと、その反動で長い前髪が顔にかかる

それを後ろに掻き上げながら明後日の予定を思い返していた













(そんな事言わないで頂戴、貴方に会う口実よ?)




「うん…終わったらうち来てくれる?」




(そうね、パーティの後なら誰も不審に思わないでしょうし…)




「本当!?やったぁ!じゃあ待ってるよ」














我ながら子ども染みた声色だったと思う

それでも逸る気持ちを抑えきれずに軽くなる口調



そんな僕に気付いた清子さんも、きっと電話口で微笑んでいるんだろう














(じゃあ、迎えの者を行かせるから夕方5時くらいに準備して待っててくれないかしら)





「うん、判った」





(それじゃ…夜も遅いし、また明後日ね)





「うん、愛してるよ。今夜も貴方が素敵な夢を見て眠りにつけますように」





(有難う、貴方も安らかな眠りにつけるように祈っているわ)
























電話を切った事を改めて思い知りたくなくて

極力、音のしないように受話器を置く





















眠れない夜は、貴方の事を想って独り過ごす




相手が貴方だと、どんなに眠れない長い長い夜でもちっとも嫌じゃない











































FIND THE WAY

    輝く宇宙に


         手は届かなくても


 響く愛だけ頼りに







   進んだ道の先 光が見つかるから…


































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