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「隊長!!たった今っ…」

「……ああ、俺も感じた」








屋根の上に凄い剣幕で飛び上がってきた部下に、
日番谷は静かにため息を吐くように頷く

その視線の先は町の上空


先程空間の歪みを日番谷も感じた

そして其処から市丸ギンの霊圧を感じ、
その後秦の霊圧が消えてしまった事


其の事は恐らく尸魂界組の皆、そして浦原、夜一も感じ取った筈だ







「じゃあっ…」

秦は、市丸の野郎とあちら側に行った。所謂裏切り行為だ、只では済まないだろうな」

「そんな、秦がどうして…」

「大方見当は付くさ」






乱菊の顔を青ざめさせている原因である出来事は恐らく朽木ルキアが関わっている


きっと





何かが秦の心を深く傷つけて

その傷口に市丸が入り込んできた


だから秦はいとも容易く市丸に着いて行った






日番谷はやり切れない思いを拳にして、瓦を叩く

其の部分だけバリンと音を立てて割れてしまう








「あの野郎…早く帰れって言ったのに……」

「隊長……」

「松本」

「はい」

「行くぞ、黒崎と朽木の所に」

「…はい!」








怒りに震えながら立ち上がる日番谷を見守り、乱菊は顔を引き締めてその傍らにしゃがみ頭を下げる


その屋根の下で、恋次と七緒は空を見上げながら立ち尽くしていた











「まさか、こんな事になるなんて思ってもいなかったっすよ」

「そうね、私もよ……私達が思っていた以上に秦の想いは強かったのかもしれない」

「アイツは、…アイツとルキアは昔から不器用だったんです。1番近くで見ていた俺が判るんですから」

「…此れから大変な事になるわね、私達も気を引き締めないと」

「…………はい」




















縁側で浦原は暑い緑茶を胃袋に流し込み、
目の前の庭でジッと立っている夜一を見やる





「夜一サン、そう自分を責める事は無いですよ」

「…しかしわしがあやつを突き放しておらなければ」

「いいえ、貴方の選択は正しかったと思います。けれど其れに向き合うだけの力が秦サンには無かった、其れだけの事っス」

「此れから尸魂界は荒れるじゃろう、わしはもう1度向こうに戻るとする」

「そうですか」

「お前はどうする?」

「私はこっちでこっちの世界を見守るとしますよ」

「そうか」







そう言うと、夜一は瞬足を使いその場から消える
帽子の下で妖しく微笑みながら浦原は再び空を見上げた







「さて、忙しくなるっスね」







































信じられない

今こやつは何と言った?






ルキアは驚愕に開かれた目と口を閉じる事が出来ずに

目の前で何も知らないままに喋る少年を凝視している






『今朝商店街の所に白い髪の女の子?が居たけどアレ不良かなぁ』






「っ白い、髪の女…だと?」

「え?朽木さん知り合い?」

「ソイツの身体的特徴をもっと教えろ!」

「えっ、あ…えっと、背丈は低くもなく高くもなく…」

「其れで!?」

「鋭い目で、でも何だか何を考えているのか判らない顔で」

「………」

「他には、え~と…」







特徴を思い出そうと唸る浅野に、
ルキアは堰を切って口を開く





「そいつは、もしかして肩口ぐらいまでの髪に少年顔の綺麗な女か?」

「そうそう!そんな感じだった」

「…そうか、こっちにきているのか、秦」






間違いなく秦だと認識できて、
ルキアは眉を顰めたまま机の上を睨みつける

そんなルキアを一護と織姫は心配げに見守るが


至って行動を起こす訳でもなく静かにその席に着いたルキアに何を言えば良いのか判らない












それぞれの思いが渦巻く中




秦は市丸に着いて行った先で、数え切れない程の虚に囲まれ

藍染惣右介に再会した









「惣右介、元気そうじゃないか」

秦こそ元気…でもないな。とんだ面だ、随分と参っているようだな?」

「……貴様には関係ないだろう、貴様等の望みは黒崎一護を排除する事。私にある用は其れだけだろうが」

「其の通り。其れでは君に任せるとしようか、黒崎一護の事は。其れさえちゃんとしてくれれば何をしても許そう」

「其れは有り難い事だな」

「ふっ、では100体の虚を君に授けよう。好きに動いてくれ」

「ああ」










自分達のボスである藍染に、対等の口を効く秦を睨む虚の軍団



けれども殺気を丸出しの彼等に、秦はけん制を投げかけ

じろりと睨む


その空気の鋭さに殺気を向ける者は無くなり、ジッと動かなくなってしまう















「惣右介が、天に立つというのならば私は地獄に立つさ」



「ああ、是非ともそうしてくれ。心強い限りだ」



「……1つ頼みがある」



「ん?」




「ギンは私と共に行動して貰いたい、いいか?」




「なるほど、という訳らしい。ギン、大丈夫か?」




「仰せのままに」















藍染に尋ねられ、秦の後ろに居た市丸は頭を下げて忠誠の証を見せる

そして秦にニコリと笑いかけた








「よろしゅう、秦ちゃん」

「…ああ」





































嗚呼、もしも私達が関わりあう事のない人生だったら


こんな苦しさを感じる事は無かっただろうに





けれど私達は出会ってしまった



だからもう出会う前に戻る事なんて出来る訳ないだろう










ならば、どうすればいいというのだ?













私はあの手を握りたい



抱き締めたい




あの腕に抱き締めて欲しい










けれど、秦の心は私には無い











ずっと


ずっと






どちらかが再び死ぬまで私は此の想いを秘めて押し殺して生きていかねばならないのか















死神になんか、なりたくなかった―――――






























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