昔
まだ人間だった頃
死神とは悪魔の使いだと思っていた
そして人間の命を奪う化け物だと
おかしなものだ
その自分が今は死神で、
現在の子ども達に怖がられる存在なんだから
でもよく考えれば、そんな筈ないと判ったのに
死神とは
"死を司る神"なんだ
恐ろしい事などないのに―――――――――
「朽木、アンタを責めるつもりは毛頭ないわよ。でも、今回こんな事になった原因はアンタにあるのを心に留めておきなさい」
乱菊から苦虫を噛み潰したかのような顔で発される言葉に、
ルキアは目を見開いて潤ませる
今しがた聞いた事は本当なのか?
聞き間違いではないのだろうか
けれど、学校の屋上に集っている面子を見れば此れが只の冗談で済まされる筈がない
恋次、日番谷、乱菊
どれも護廷十三隊の幹部格で
余程の事が無い限りわざわざ現世などに出向いて来る訳がない
なのに、此処に居るという事は
冗談なんかでは済まされない出来事に発展してしまっているという事だ
「そんな…どうして……」
「ルキア、此ればっかしは…」
「何故だ、恋次!は朝、私に会いに来たのだぞ!?私は気付かなかったが、アイツを目撃している生徒が沢山居る!」
「『気付かなかった』…?」
「あ、ああ…」
「そうか、ルキア。は…深く深く、傷ついたんだろうな…」
「え?」
苦しそうにそういう恋次に、ルキアは突っかかる
そしてある言葉を聞いた瞬間恋次の眉が顰められ、ルキアを凝視した
それから、恋次は困ったように微笑みルキアの頭を撫でると、
フェンスに寄りかかって静観していた日番谷が口を開く
「とにかく、の事は尸魂界で下る指令待ちだ。其れまでお前は黒崎の援護をしろ」
「……っ」
「今すぐにでもを追いかけて引き止めたいか?」
「其れは、もちろんです!」
「ならん。アイツの…アイツ等の目的は黒崎一護を殺す事だろうからな、身近で見張っていられるのはお前だけだ」
「一護を…殺す?が?!」
「ああ、そうだ。まぁ簡単に言えばお前は黒崎の所に居た方がに会える可能性が高い」
「………判りました」
日番谷に頭を下げ、悔しそうに唇を噛み締めるルキアを見て
一護はため息を吐く
「大丈夫だって、俺もさんも簡単にくたばるようなたまじゃねぇ」
「ああ」
「もしさんが襲ってきたら、捕らえてやる。そしてお前の前に突き出すさ」
「…貴様じゃ無理だな」
「んだと!?」
挑発すればいとも容易く引っかかってくれる青年に、
ルキアの張り詰めていた顔にも笑みが再び現れた
尸魂界では、一足先に戻ってきた七緒の報告により瀞霊廷内は大きく揺らいでいた
が藍染側へ就いた事
そして黒崎一護を狙っている事
藍染側にが就いたのは大きな痛手となる事を誰もが思った
天才児と謳われる日番谷冬獅朗と義姉弟で、
山本総隊長には孫のように甘やかされ、
浮竹隊長と京楽隊長と卯ノ花隊長に面倒を見てもらい、
朽木隊長と四楓院夜一、浦原喜助に妹分として可愛がられ、
更木隊長と砕蜂隊長と剣を交え鍛え合い、
乱菊副隊長と射場副隊長と斑目三席と檜佐木副隊長とは酒飲み仲間で、
普段無口な涅副隊長や狗村隊長とも仲が良く、
伊勢副隊長、吉良副隊長、虎徹副隊長、雛森副隊長とはお茶飲み仲間で、
草鹿副隊長とは遊び仲間
そして朽木家の養女である朽木ルキアと、
阿散井副隊長とは幼馴染であるという
幹部でもない只の隊員が異例の交友関係だというだけで
尸魂界中から注目されていた
その交友関係のおかげか、生まれついた時からの才能かは定かではないが
少なくとも大虚ぐらいは容易く倒す事の出来る実力の持ち主
そんな彼女が尸魂界にとって脅威の存在である藍染惣右介側に就いたとなると
此方の被害はどれだけのものになるか
考えただけで恐ろしい
隊集会では、各々深刻な顔つきで黙りこくっていた
が、何故?
誰もがそう思っていたであろう
その沈黙を破ったのは、朽木白哉だった
「其れでは、は反逆者として捕らえ処刑すると決めて宜しいのですね」
その言葉に、一行は唾を飲み苦しそうな顔をする
そんなメンバーを見回して白哉は眉を顰め、くるりと踵を返して集会場から出て行く
その途中、扉の所で振り返らずに首だけ後ろに向けて
呟くように低い言葉で口を開く
「どのみちいずれせねばならなかった事だろうに、何を今更迷う事でもあるまい」
『ルキア!』
『何だ?』
『ほら、此れ見ろ!』
『む?』
小さい頃
ボロボロになりながらも走り寄って来る私に、
ルキアは怪訝そうに眉を顰めた
そんな彼女に私は両手を差し出し、中に包み込んでいる物を見せた
1枚の高そうな紙
『何だ、此れは』
『私に弟というものが居るそうだ、瀞霊廷から連絡が来たんだ』
『弟だと?』
『ああ、血は繋がっていないそうだが。其れでも私に家族が居るんだぞ!?』
『……お前の家族は私達だろう?』
『…ううん、違うよ』
つまらなさそうに、不貞腐れるルキアに
はにっこりと微笑んでルキアに抱きつく
『ルキアは家族、じゃなくて家族よりも大切な存在』
『なっ、何を言っておるのだお前は!?』
『大好きだよ、ルキア』
『ええい、離れろ!』
『大好き』
『判ったから離れぬか、たわけ!恋次達に見られたら何とからかわれるか』
『ルキア、愛してるよ』
『ええい、鬱陶しい!!!』
何度私が拒絶の言葉を吐いても、
は優しい笑みを浮かべながら私を抱き締めてくれた
正直、その温もりと
腕の力強さがとても心地よかった
そして囁いてくれる愛の言葉が嬉しかった
お前はもう、私に愛の言葉を囁いてはくれぬのか
お前はもう、私を抱き締めてはくれぬのか……?
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