「でも、見事にちゃんの斬魄刀はあの2人を支える能力に仕上がってんねぇ」

「……」

「やっぱり持ち主が大事に想っていると斬魄刀も応えてくれるん」

「……ギン、さっきから煩い」

「そらすんまへんなぁ、僕なりに感動してんのやけどな」












後ろで座りながら、感想を述べる市丸をはじろりと睨む


するといつもの笑みを浮かべながら弁解してみせる彼に、ため息を吐きながら始解した斬魄刀を鞘に収める










「…………別に引き立て役じゃない」

「そんなこと言ってへんよ、ちゃん個人でえらい強さなのはわかっとる」

「…何の因果か知らんけど、たまたまあの2人の力を増大させる力だっただけだ」

「そうか」












けれど、と
は言葉を続ける













「コイツも此処に来てから闘うのを嫌がっている……やっぱり斬魄刀にも意志があるんだな」

「…そろそろ行くよ、早めに片付けな隊長の機嫌を損ねてしまう」

「………ああ」
























































ルキアは自らの斬魄刀を持ち掲げて眺める


真っ白な、純白の斬魄刀







触れるもの全てを凍らせる恐ろしい力










けれど、其の力を発せたのはが居る時だけだった






氷の龍を操る日番谷に対して、

水の龍を操る





つまり


氷系の能力を持っているルキアと日番谷は

と組むと普段の倍以上の力が発揮出来るのだ







今は只、意識した固定の場所だけを氷の柱が立ち昇るだけ








けれど

と一緒に大虚を退治に向かった時は










周りに居た30体程の虚と共に大虚も氷付けにしてしまえた





其の様子は雪が降るように綺麗な神秘的な世界で


一瞬見惚れてしまったほど






其の中で、氷の粒に囲まれた中で水龍に乗り
此方を見下ろして優しく微笑んでいるは、

氷の神様みたいだと思った



差し詰め雪の女王といった処か

けれど童話に出てくるような冷酷な女王ではなく


全てを温かく見守ってくれている女神






私は、そんなに憧れたのだ












そんなが、大好きだった



自分から表には出ずに影から支えてくれる

謙虚な




けれどいざとなったら身体を張って前面に出てきて、

命がけで守ってくれる























考えれば考える程、涙が頬を伝う


涙が止まらない






一護の妹達の部屋でルキアは人知れず静かに涙を流した


其の時、伝令機が音を立てて震えた


重たい腕を伸ばして其れを取ると、画面を見る









「此れは…」








































































ルキアは、ずっと私達の中で

姫みたいな存在で



私達は命に代えてでもこの小さな姫を守ろうと恋次と誓った






気が強くて、可愛げがない性格なのに
何故か気品が漂っていてとても綺麗な子だった


ルキアと恋次と3人で組んで、盗めなかった物はない











何でも盗めた



ルキアの猫被りで、大人達を惹きつけて気を逸らさせ

隙が出来た大人共を恋次が背後から襲う

その間に足の早いが家の中からあらゆる物を頂戴し、



合図を出して3人で一斉に逃げる






本当に息のピッタリな三人組だったんだ





でも、ある日どうしても食材が手に入らず私達はお腹が空いて極限に陥った

だから


私は2人に何も言わずに瀞霊廷に入り


死神になった




そして弟であるという冬獅朗と初対面で、

いきなり喧嘩になったのを乱菊に救われた



そんな繋がりで護廷十三隊とどんどん仲良くなって


やっと流魂街に外出する許可を貰った時に、
1日だけ死神の学校、"真央霊術院"の生徒達の前で実技模範を見せて欲しいと言われ行った時




其処でルキア、恋次と再会した時は度肝を抜かれたんだ




全校生徒達の前だというのに呆けている私を引率の檜佐木が叩く

そのお陰で目が覚めた私は、咳払いをして
護廷十三隊の隊員らしく斬魄刀を抜いてみせて力をお披露目した



其れが終わった後、駆け寄ってくるルキアと恋次の怒りの表情に目を合わせる事が出来ず


冬獅朗の幼馴染だという桃と、首席だという吉良と和気藹々と仲良くなったりして誤魔化した







そして、


ルキアが白哉の妹として朽木家に養子に取られた時も

恋次が白哉が率いる六番隊の副隊長になった時も





白哉と仲の良かった私は何も言わずに受け止めてきた



白哉は本当はとても優しい男だと知っていたから



白哉の妻だったルキアの姉とも面識はあった
其の時は既に床に伏せっていて重体だったけれど

其れでもルキアの事を出来るだけ話して聞かせた

そうすると彼女はとても嬉しそうに、
ルキアと同じ笑顔を見せてくれて



ちゃんが来てくれるだけでとても元気になれるのよ』



と言いながら頭を撫でてくれた



緋真が死んだ時白哉が物凄く落ち込み、
彼女の位牌に手を合わせに来た時白哉は私にこう言った



『私はもう2度と規則を破るまい、幾らお主が例え濡れ衣で捕らえられたりしようが規則に従う。心得ておけ』

『……ああ、そうしろ』

『…すまない』

『否、いいさ』







私は、ルキアの事は言わなかった




きっとルキアの事を知ったら今度こそ白哉は窮地に陥ってしまうだろうから


だから、私は自然に白哉が気付くまで黙認している事にした
其の方が、もしかしたら緋真も喜ぶとでも思ったのだろうか




ルキアが朽木家に養子になると聞いて、

悔しがっている恋次を尻目に私は黙っていた






いいんだ




此れで



ルキアは…護られる


































そうして何十年も我慢してきた


ルキアが自分の物にならない事を我慢して

ずっと


我慢してきた










其れをいとも容易く奪ったのは、黒埼一護




確かにルキアを救うという心意気は買った
私も同じ意志だったから


でも







心を許した覚えは無い

なのに何故夜一も喜助も奴を手助けする?





私は




















黒崎一護がずっと憎かった















ルキアを奪いやがったあの男が


だから











だから


























だから殺す

















































黒崎一護の家は病院を営んでいると聞いてはいたが

思ったより小さな事に驚いた


個人経営の小さな町医者なんだろう





向かいの家の屋根から黒崎一護の部屋の窓を覗き見る


自分に引けをとらないくらいに目立つ髪の色
オレンジが、窓辺に添えられているベッドに見えた







斬魄刀を音も立てずに静かに抜き取り、

構える






足を踏み、力を入れて飛び立つ





霊体のこの身には壁や物質など通じない

直接すり抜けて、素早くベッドに切りかかる








ドスッという音を立てて枕の真ん中に斬魄刀を突き立てると、

枕に詰め込まれている羽毛が舞う



その中から見る景色はルキアと一緒に闘う時に現れる景色に似ている、と思った










「…………?」









ふと、手ごたえを感じられない事に疑問を持ち刀を抜く

其の瞬間首にひんやりと冷たい感触がした





















「…やっぱり待ち構えていて正解だったようだな」


「………なるほど」


















其の刀に沿って目を下げると、



其処には死覇装姿のルキアが自分の首に斬魄刀を突き立てていた

眉を顰めて皺を作り此方を睨んでいるルキアを背後越しに見て、薄い笑みを浮かべる








「…本当に一護を狙って来るとはな」

「私は1度言った事は守るのは君が良く知っているだろう?」

「ああ、そして例え其れが悪でも自分の信念は貫く人間だとも知っているぞ」

「さすが、ルキア」








低い声で、くつくつと笑いながら自分の名前を呼ばれたルキアは

その懐かしい声に戸惑い、緊迫していた顔が急に緩んだ



そして、刀を握り直すと空いている方の手での背中に恐る恐る触れる









「…

「……ん?」

「どうしてだ?」

「…さぁ……どうしてだろ」







少しだけ困ったような笑みを浮かべて、首を傾げてみせる


ルキアは背中に添えていた手をそっと伸ばして自分より少し大きいその肩を抱き締める











「どうしてだ…っ、!」

「…泣かないで」

「お前が泣かしておるのが判らぬか!?」

「………ごめん…」

「謝るな、謝られると…期待してしまうではないか」

「…ごめん」

「謝るなというのだ!」







涙を浮かべながら懇願するルキアに、
は只謝る事しか出来なかった

謝るなと言われても、其れでも謝るしかない



首に回された細くて白い腕に手を添えて唇を落とす












「……ごめんってば、ルキア…」

「…っ戻って来い、今ならまだ間に合う」

「………」

「尸魂界も動き出しているのだぞ?兄様も、隊長殿達も皆動き出している!」

「……ごめん」

「其れしか言えぬのか、貴様は!」







段々怒りが募っていくルキアに、
は振り向きざま頬に口付けをする







「っ…!?」

「もう、後戻りは出来ないから。だから…」

「私達の敵となるのか?一護を、狙うというのか?」

「…違う、狙うんじゃない。殺す、んだ」

!!」






ルキアの腕と刀の間からするりと綺麗に抜け出すと、
窓淵に足を掛けて

夜の月を背面に逆光のせいで顔が見えなくなっているに叫ぶルキア



そんな彼女に最後に笑みを見せ、

黒い死覇装を翻らせて風に乗る









「じゃあね、ルキア。…次に会う時は泣かせてしまうだろうけど、今の内に謝っておく」

「…











月へ帰るかぐや姫のように静かに夜の街を昇って行く



其の先には市丸が待っていて、が近寄ると頭を軽く下げ、その後ろに着く

市丸は後ろに着く時に一護の部屋の窓から自分達を見上げているルキアに、ニコリと微笑んだ




呆気に取られながらも、
夜空にポッカリと口を開けた穴に消えていく2人を見送る





そして先程までの肩を抱いていた自分の腕を見て、

が唇を当ててきた腕の箇所へ唇を寄せる









涙が頬を伝い、腕に落ちる



























「決めたぞ……お前は私が斬る…、其れで良いな?」



































その決意に応える者など居なかった



一護は先程伝令機に来た指令のせいで少し町外れまで虚退治に行っている

が一護と見間違えたのは、恐らくコンの身体だ



ルキアはコンを一護の身体に入れて、少し離れた所へ行ってろと伝えたお陰で


コンを一護の頭を見間違え、
その胴体に綺麗な切り傷を作っただけだった


此れは石田の所へ持っていけば直してくれるだろうから、

コンには其れで勘弁してくれと伝えよう






と市丸ギンの霊圧は、もう既に現世組の3人は感じ取っている筈だ


恐らく此方へ向かってるであろう恋次と日番谷隊長と松本副隊長









何と、今起こった事を告げれば良いのだろうか










今は


何も考えられない

















尸魂界の護廷十三隊の誰かが手を掛けてしまう前に


私が




誰かに手を掛けられて息を引き取るくらいなら、
私が

止めを刺そう














其れが今私に出来る事


あやつを救える事、だと思うから













だから其れまで


この斬魄刀






貴様に向けて抜くために磨いておこう


























貴様の水龍が空を舞う前に、

私の氷柱が空を突き刺す























貴様目掛けて骨まで貫き通す




此の氷の世界は、

2度と見れないようにしてやろう








せめて最後は苦しまずに逝かせてやりたい―――――――――――


























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