月夜に浮かぶ白い雲

ゆるゆると流れていく


漆黒の闇に映える白い光が滑るように降りてくる





其れは神秘的な妖しい輝きで



見るものを惹き付ける魅力を持っていた























「現世にいる戦力は恐らく10人に満たない筈だ」

「尸魂界から応援が集ってると思うで?」

「問題ない、私なら容易く蹴散らす事が出来る。けれど目的はあくまでも黒崎一護1人だけなのを忘れるな」

「もちろん」

「ギン、お前は…十番隊へ行け」








そう言ってちらりと連れの男を見ると、
其の男は一瞬細い目を見開き押し黙るが

直ぐにいつもの笑みを浮かべて困ったように笑う






「そら意地悪いなァ、ちゃんも」

「いいから行けと言ってる。……けれど乱菊には手ェ出すなよ」

「……其れを藍染様に聞かれたら裏切りと取られはるで」

「別に、貴様だって自分より弱い存在を嬲り殺す趣味はないだろう」

「…」









自分より1歩前を歩いていて、
表情を窺い知る事の出来ない彼女にギンは静かに息を吐く










知っている




自分は知っている


藍染や東仙は知らない秘密を







は、裏切るつもりなんかさらさらないんだろう

黒崎一護への憎しみに偽りは無いのだろうけれど、
あの大好きな朽木ルキア達の元をそう容易く離れる事が出来る奴じゃない



目の前の少女の望みはきっと……















「もう数体の虚共はとっくに奇襲を掛けている頃やで」

「……ああ、あちこちからひしひし緊迫した霊圧を感じる」

「…気ィつけてな」

「ああ」

「ほな、全て片付いたら」

「…全てが片付いたら……な」









はちらりと此方を振り返って一瞥してから、
踵を返して死覇装を優雅に翻らせながら闇の中に消えていく

残されたギンは薄い目の奥から、の消えた空間を見つめて


そしてポツリと呟いた













「今も昔も、相変わらず完璧な悪にはなれへんのや」


















































判ってるさ



自分のしている事がルキアを悲しませてる事だなんて

此れからしようとしている事がルキアを泣かせる事になるなんて



どうしようもないくらい
自分の愚かさ加減に飽き飽きしてるさ




でも仕方ないんだ







ごめんね、ルキア




























『そうやって見ると貴方達本当にお似合いね』
















『…え?』

『な、何を言ってるんですか?卯ノ花隊長』

『いいえ、本当にそう思ったのよ。長年連れ添った夫婦みたいで』





女性死神会で宴会を開いた時
私とルキアは2人でお酒を片手にじゃれあっていた

というかいつもの口論と押し退け合いをしていただけだ


そしたら前に座っていた卯ノ花隊長が柔らかく微笑みながら突然そんな事を言った

慌てて否定するルキアに、有無を言わせない空気で再び卯ノ花隊長は微笑む






『そうですね、ルキアは…戦友ですから。同じ戦場を生き抜いた』

『……戦友、だそうです。卯ノ花隊長』

『ん?』

『あら、ちゃん。ルキアちゃんは随分と納得いかなさそうよ?』

『え?』

『いえっ、そんな事ありませんよ!卯ノ花隊長ってば何をおっしゃっていらっしゃるんですか!!』

『…ふふっ』

『……?』















ルキア





ルキアは一体私の事をどう思っていたというんだ?



戦友で納得いかないなら、

一体何だ?





私は、あの時思っていた

本当は此処で大事な大事なパートナーですって答えられたらどんなに良いだろうか、って




でも言えなかった
戦友という立場ですら全身全霊掛けて否定されたから

もし





其れも否定されたら明日から私は何を信じて生きていけば良いんだろう、と














それぐらいルキアは、


君は




私にとって太陽のように必要な存在だった






でも、

こんな私を照らしてくれたのは太陽だけじゃない









其の周りに無数輝き続ける星たち

昼間は太陽の眩しさに隠れて見えないけれど
確実に其処に存在している



其の星達なくしては私は輝く事が出来なかった












そのうちの一粒の星のために――――――――


















『どうして、泣いているのよ』

『……』

『貴方らしくないじゃない』

『…泣いてなんか、いない』

『いいえ、泣いているわ』

『泣いてないって言ってるじゃないか』

『心で、泣いているでしょう?判るわ』

『君に何が判るというんだ、乱菊』

『貴方は私が心で泣いていると、見抜いた。私も貴方が心で泣いていると見抜いた、それだけよ』

『………乱菊』

『うん?』

『泣きたいんだけど、涙が出ない時はどうすればいいんだろう』

『…じゃ、抱き締めてあげるわ。そしたら自然に涙が出るかもしれないわよ』

『…………ふふふっ、有難う。乱菊』

『どう致しまして』


















菊の花のように明るく咲き誇る事はできないけれど



でもその菊にとって大事な栄養分である水を私は与える事が出来るから

だから





例え涙枯れようとも

例え此の手が汚れようとも




君の大好きな水を運ぶよ、君の元へ――――――




































「水面に写せ、水輪丸」






斬魄刀が指す天から、

はらはらと雨が申し訳程度に降り散ってくる




雨が髪を濡らして、頬に張り付ける
数秒目を閉じて

意識を集中させると




ゆっくりと開き、雨雲立ち込める空を仰ぐ















さぁ




終曲の始まりだ


美しい音楽を奏でようではないか























next...