が目覚めて判った事

其れはあやつの尸魂界での人脈の広さだった


元から人見知りせずに万人から好かれるタイプだとは思っていたが、
まさか此れ程までとは思わず

私は少し複雑な気分になる




あの夜
が目覚めた夜何が起きたのかは知らない

一部始終を見ていた筈の卯ノ花隊長も頑なに口を閉ざしていた

も言わないのだから、あえて此方から聞くのも気が引けて


でも言葉を発せずともに異変が起きたのは皆判っている



以前は慣れていない者や霊圧の弱い者は一緒に居るだけでびしびしと感じていた凄まじい霊圧が跡形も無く消えているのだ






恐らくは、もう死神としての力を持ちえていない














でも


私の大好きな幼馴染で
大切な人なんだ

其れに変わりはない、が



時々無性にこやつを殴り飛ばしたくなる時がある




…ほら、また来た
















、体調はどう?」

「おぉ、七緒。うん、ピンピンしてるよ」






微笑しながら顔を出してきたのは伊勢七緒副隊長


けれど病室の様子を見て眉間に皺を寄せた
此処に訪れる女性は皆、同じような行動を取る

何故なら







「林檎剥いたわよ、食べる?」

「うん、食べる!」

「はい、あ〜ん」

「あ〜…もがっ」

は桃の方が好きなんだぞ、美味しいだろう?」

「おいひい…もぐもぐ」

「………」





女性死神の幹部がほとんど常に揃っていたから


例えば松本乱菊副隊長と砕蜂隊長のの取り合い
2人の間には見えない稲妻が走っている

そんな2人の状況などお構い無しに(むしろ慣れているふう)横から入れられた桃を美味しそうに味わっている


…殴り飛ばしたくなる






ちゃん、怪我まだ治んないの〜?あたしと遊んでよ」

「もう少し待ってね、まだ少し痛いから」

「えぇええ?!大丈夫だよ、ちゃんなんだから!」

「いや、やちるんとこの隊長サンに付けられた傷が物凄く痛いの」

「まだ痛むの!?其れは大変じゃない!今すぐ痛み止めの薬呑まないと!」

「え?だ、大丈夫だから…勇音……」

「駄目だよ、ほら此れ呑んで!!」

「…へぇい……」







例えば草鹿やちる副隊長の催促をかわすための嘘を、
虎徹勇音副隊長に鵜呑みにされて困っているけど何処かデレデレしている


…殴り飛ばしたくなる










さん、此れを…」

「ん〜、遠慮しとく」

「此れは体中の傷をたちまち塞いでしまうという優れものです」

「でも私が其れを貰ったのバレたらあの変人にネムが怒られるでしょ?」

「其れは…いいのです。さんが元気になってくだされば」

「駄〜目、ネムが変人に罵られるの見たくないもん」

「でも……」

「其れよりネムの膝枕が良いな」

「あ…はい、もちろん」






真剣な顔で怪しい瓶を差し出す涅ネム副隊長に、
思いっきり甘えてみせる


…殴り飛ばしたくなる






此処まででも充分最悪なのだが、集まってるのは女性死神だけではない











「ほれ、呑むか?」

「うわぁ!呑む呑む!!」

「よし、ぐび〜っといけ!ぐびっと!」

「ういっす!」

「お、いける口だな。さすがだ」

「へへっ」






現世から来ている四楓院夜一殿と、
流魂街の花火師志波空鶴殿まで居る

病室で病人相手だというのにお酒を勧める2人

其れを嬉しそうに煽るように飲む



…殴り飛ばしたくなる


















………はぁ、私はこんなにモテる奴を好いておったのか


此れから先の事を考えると気苦労が増える








がちゃ



…また来た

今度は誰だ






さぁ〜〜んっ!!!!!」

「うあっ」

「会いたかったよ〜!あんな大変な事になってるなんてあたしちっとも知らなかったよ!」

「痛い痛い痛い、織姫胸が傷口に当たってる」

「あっ、ごめんねっ!!」

「否、むしろラッキー…」

「もぉ〜さんったら!!」



井上
お主まで来るか

其れもわざわざ現世から此処まで…


井上と一緒に来たらしい一護が入り口で固まっていた


そりゃ、男から見たら羨ましいような嫉ましいような光景なのだろう
先程来た恋次も一瞬固まり、すぐに帰った(というか逃げた)










「…、黒崎一護が来たわよ」

「え?」





花瓶の水を変えていた七緒に呼びかけられ、
は織姫をべりっと引き剥がしてから入り口付近を見る

そして病室の中の賑やかな空気は張り詰めた


皆がと一護の2人をはらはらと見やっている







「……よぉ、元気そうだな」

「………」

「ルキアがボロボロ泣きながらうろたえていたからもう駄目かと思ったぜ」

「………」

「……」

「………」





最初は誤魔化すように笑いながら話す一護だったが、
表情1つ変えぬに一護もとうとう黙ってしまった

私はベッド際に置かれている椅子に座って、
の側に居たため

の身体を肘で小突く




「謝れ」

「…え?」

「今回の件では一護に1番迷惑をかけた、だから謝るのだ」

「何で?」




この期に置いて不思議そうに首を傾げるに、
私は脳の何処かがプチンと切れる音がした







「貴様!まだ惚けるのか!!いい加減に素直になれ!」




振り上げた拳、裏拳が見事にの頬に命中し
は起こしていた上半身をよろめさせ己の頬を押さえる



「痛っ、何すんだよ!!」

「黙れ、貴様が悪い!自業自得だ」

「お前こそ素直になれよ、さっきから私の事妬みの視線で見つめて!」

「なっ、何を言うか!誰も妬いてなどおらぬ!」

「妬いてんなら『は私の物だ、手を出すな!』宣言ぐらいしろ!!」

「こんの…全然懲りておらぬようだな!!!制裁してくれる!!」

「掛かって来い!」





「ちょっと、アンタ達。そんな事してる場合じゃないでしょ」









お互いの頬を抓りながらいがみ合いをしている私達を、
松本副隊長がため息を漏らしながら制する

其処で我に返って私達はパッと離れた



いつの間にか白けてる病室の中で居心地悪そうに蹲る

其れとは対照的にはふんと鼻を鳴らして不貞腐れていた









「まぁ、何と言うか…俺は別に気にしちゃあいないし」

「だ、そうだ。なら私が謝る必要ないじゃん」

「……あ〜でもちょびぃ〜っと謝って欲しい気もすっかな。命狙われたんだしなぁ」

「とりあえず言っておくが、私の辞書に謝るという文字は無い」



〜っ、いい加減にしないか!!」

「あだっ」




とうとう我慢の限界だったらしいルキアが拳骨で頭を殴る

再び開始されたやり取りに部屋に居た一行は苦笑するしかなく
一護は先程のの言葉にムッとしたようで眉間に皺を寄せて佇んでいた








「でも朽木に怒られて、仕方なく謝るという文字はあるんでしょ?」

「ぐっ……」



乱菊にも窘められる駄目人間



「謝りなさい、誠心誠意込めて」

「…っ……」



七緒にも窘められる駄目人間



「謝っとけば〜?」

「お前にまでっ」


子どもやちるにまで窘められる(?)駄目人間



「そうだよ、今回の事はが悪いよ。謝らないと」

「がーん」



勇音にも窘められる駄目人間




「潔く腹を割れ、未熟者が」

「未熟っ!?」



砕蜂にも窘められる駄目人間




「此処は謝った方が得策かと」

「…うぅ……」




ネムにも窘められる駄目人間




「さっさと済ませぬか、馬鹿者」

「馬鹿っ!?」




夜一にも窘められる駄目人間




「男らしくねぇなぁ、覚悟決めろ」

「いやいや、女だしっ!!」



空鶴にも窘められる駄目人間














周りに味方の消えたは心底ショックそうに項垂れた
けれど辺りを恐る恐る見回しても皆呆れた目で見ているだけ



は、折れた

















「あぁ…んんっ!何だ、その…あれだ。黒崎一護」

「……」

「悪かった……なっ!」











…やはり駄目人間


最初の方こそしおらしく謝るものの
我慢出来なかったらしく最後にはまた踏ん反りかえって偉そうになる





けれど一応頭は下げたのだし、
此れでも良いか、と心の広いメンバーは認めてあげたらしい

ルキアはふわりと微笑むとの頭を撫でてやる




「良く出来たな」

「……」







拗ねているを見て、一護も仕方なく許す事にした


















でもやっぱりしおらしく謝るなんてじゃない、と




誰もがそう思い

許す事にしたのだ



















「ったく、アンタは何も変わってないわね」





乱菊もの頭を撫でると可笑しそうに笑う

そして病室を出て行く寸前、振り返る







「忘れないでよ、明日の昼。十番隊室に来なさいよ」

「…判ってるよ」
















まだ片付けなくてはならない事は沢山残っている




正直言うと面倒くさい




けれど其れはが自分で巻き起こした事なのだから
其れを片付けるのはの役目だ

















「そう落ち込むな、私も付いて行ってやる」

「…ありがと」
















今は只、ルキアの笑みが嬉しい
ふとホッとした気分にさせてくれる―――――






















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