俺達は気付いた時から
常に反発して合っていた気がする

けれどアイツが、

俺の知らないところで俺を気にかけてくれていたのは知っている




アイツは……もう俺を弟としては見ていない


1人の隊長として見てくれる

もちろん言葉遣いが正されたとかそういうんじゃない




1人の戦力としてみている
それがどんなに心強いか



俺は
こんな事言う柄じゃねぇけど


アイツが好きな方だと思う――――――


















「ごめん、爺ちゃん」

「…自分のした事の大きさは判っておろうな?」

「うん」

「でも、聞いたぞ。松本副隊長から」

「え?」

「反逆者の市丸ギンと松本副隊長を会わそうとした、其れが全ての行動の意味だろう?」

「……うん」

「本当に貴様は昔から不器用な奴じゃ、しかし其れはまた其れで愛い我が娘じゃよ」

「…それじゃっ」





険しい顔つきだった山本総隊長が、
口角を緩めて笑った





「ああ、今回の事は無かった事にしておいてやろう」

「有難う!!爺ちゃん!」

「じゃが今度またこのような事が起きたら、其の時は如何なる理由があろうとも…覚悟しておくんじゃよ」

「うん、判ってる。私がルキアの元を離れるような事2度とする訳ないじゃん」

「ほう?その言い様じゃと朽木女史とは…」

「うん、ラブラブ」





がピースをしてみせ、
満面の笑みで言った瞬間背後にあった扉が開き彼女が侵入して来た





「失礼します!見苦しい事お聞かせしてしまい申し訳ありません!!行くぞ、!」

「う、うむ」




勢いよく頭を下げ、
そう言うとルキアは顔を真っ赤にしたままの腕を引いて隊首室から出て行く


けれど引っ張られていくの様子は、ニコニコしていて嬉しそうで

最初は吃驚したものの山本総隊長はふと微笑んだ







「若いって良いのぅ」




と、1人満足そうに頷いたのだった













「信じられぬ!」

「……ルキア」



すたすたすたすたすたすた



「本当に、信じ難い!!」

「…ル、ルキア」



すたすたすたすたすたすた



「馬鹿げてる!!!!」

「ルキアッ」




ぴたっ







廊下を物凄いスピードで早歩きしているルキアに、
は苦笑しながら声をかける

すると突如立ち止まり勢いよく振り返った

そしての腕をバッと離し、睨みつける







「お主は自分が何を言ったか判っておるのか!?しかもあの総隊長に!」

「痛いな〜もう、乱暴なんだから」

「幾ら個人的に親しいとはいえ、私にとっては上司なのだぞ!其れも1番上の!」

「だって嘘は言ってないじゃん」

「たわけ!何が……っ…」





はそう呟いたかと思うと、
隊舎の廊下にルキアの肩を押し付け自らの身体で進路を塞ぎ逃れられないようにする

そして上から覗き込むように見下ろす


罵声を浴びせていたルキアの口も驚きで閉ざされた
きょとんとしている彼女の耳元に唇を寄せ、はぼそりと呟く





「昨日の夜のルキアの方が可愛かったな」

「…なっ……」

「そんなに罵られると今夜も沢山泣かせちゃうよ?」

「んっ…な…何を言っておる、たわけめ!!」

「照れ隠ししたって駄目駄目、私に通用する訳ないでしょ」

「照れ隠しなど誰がするものか!」

「はっはぁん、そういう事言っちゃうんだ?この口は」

「なっ、何だ?」





あくまでも抵抗するルキアに、
は意地悪な笑みを浮かべてルキアの顎に指を掛ける

ビタッと壁に張り付き警戒しまくるルキア


そんなの問題じゃなくて、
は自分の唇を其れに重ねた

重ねるだけ
けれど甘くて濃厚な口付け


先程から後ろを駆け抜けていく隊員達の足音が聞こえるけれどそんなの気にしない




顔を離すと、赤面したルキアが目の前に居て

は再びニヤリと笑ってルキアの唇に親指を宛がいなぞる








ズゴーーーンッッ




「だっ!?」














突然が叫んだかと思うと、
ルキアの前に蹲り後頭部を両手で押さえた

ルキアの視界を独占していたの身体が消え、
其処に居たのは黒い死覇装を肌蹴て着ている副隊長だった





「アンタは本当に節操ないんだから…昼間っからこんな所で迫るんじゃないわよ」

「ま、松本副隊長…」




優雅に構えて立っている乱菊
あまりの痛さに蹲っていたが乱菊に突っかかる





「酒瓶で殴るな、酒瓶で〜っ!!」

「アンタ程鈍感な奴には此れくらいが丁度良いのよ」

「丁度どころか脳みそ飛び出るから!つか、私まだ病人だし。其れも重傷者だし」





乱菊の手には何故か日本酒瓶


此れで殴られたら相当痛いだろう
さすがのの目元にも涙がうっすらと滲んでいた






「大袈裟ねぇ、まぁいいわ。朽木、良く連れて来てくれたわね」

「あ、はい」

「ん?」

「とりあえず準備は整っているからこっち来なさい」

「へ?」

「皆待ってるわよ」




乱菊に微笑まれて、戸惑いながら頷くルキア

そして取り残されたは2人の顔を交互に見渡す


そんなに気付いた2人はニコリと笑い、両脇からの腕を掴みずるずると歩き出した






「え?え?え?」


















着いた先は、十番隊舎の隊長室だった


執務室の隣にある来客室には、何故か物凄い集合が掛けられていた
むしろもう其れは始まっていて

ほろ酔い気分の幹部達が数名


またーりと寛いでいた



もちろん隣の執務室では怒りマークをつけまくった隊長が黙々と仕事をしている










「お、。もう良いのか?」

「うわ〜い、ちゃん全快!遊ぼ!」

「お疲れさん、

「やぁ、久しぶり。すっかり元気そうだね」

「出たな、ハーレム野郎」

「出たな、男の敵め!」




酔って少し顔が赤い斑目三席

酔いよりも食欲で、いつもの元気満開の草鹿副隊長

酔ってもいつもの調子の浮竹隊長に京楽隊長

酔い過ぎて目が座っている危ない阿散井副隊長に檜佐木副隊長






其処に連れて来られたは困惑するばかりだ


ルキアも聞かされていた当初の目的とは程遠い出来事に呆然としている









「はい、アンタ達も入りなさい」


乱菊に、背中を押して半ば無理矢理其処に参加させられる2人
2人の幼馴染である恋次は
が席に着くなりガシッと肩を組んでくる





「よぉ、昨日のあれは何だ?ん?説明してみろよ」

「れ、恋次酔ってる?」

「んなこたぁどうでも良いんだよ!何なんだ、男にとっちゃ永遠の夢なのによ!」

「あ、そうだったんだ。じゃあ恋次も直ぐ帰ったりしなけりゃ良かったじゃん」

「あん中に平然と入れるのは京楽隊長以外居ねぇ!!」

「もしかしてお前相当欲求不満だったり?」

「…っこンの………ぶっ殺す!!!!!!」



「まぁまぁ、阿散井君。落ち着いて」

「ははは、も罪な人だね」








に殴りかかろうと立ち上がった恋次を抑える京楽と浮竹
苦笑しながらも、此の若者の怒りが納得出来てしまう

外見も性格も人一倍女性に好かれるタイプの

其れを妬まない男が何処に居ようか








ちゃん今日こそ遊ぼ〜!!」


どすっ



恋次を見てニヤニヤと勝ち誇った笑みを浮かべていたに、
脇腹から衝撃が加わる




「……っやちる、だから私はまだ全快じゃないってば」

「だって元気満々じゃん!鬼ごっこしよ!」

「したいのはやまやまだけど、無理なんです。体力的に」

「大丈夫だよ!」

「大丈夫じゃないっつぅの」




ジクジクと痛むお腹にある手術跡を抑えながら、奥歯を噛み締め無理矢理笑顔を作る


けれどの腕をぶらぶらと引っ張って催促するやちる
子どもパワー侮らざぬべし






「遊ぼ、遊ぼ!」

「…っだ〜っ、判ったよ!鬼ごっこでしょ、判ったって」

「やったぁ〜っ!!!じゃ、ちゃん鬼ね!」




やちるはそう言ういなやぴゅーっと走って逃げていく

「やれやれ」とため息を吐きながら立ち上がるに、隣に居たルキアが声を掛けた




「おい、。安静にしろと言われておるだろう、卯ノ花隊長に逆らったらどうなるか」

「仕方ないじゃん、煩いし」

「でもまた倒れたら…」

「大丈夫だよ、丈夫だけが取り得だし。其れにやちるにはいつも勝ってるから」





そしては窓からひらりと地面に降りる
心配そうに見送るルキア

そしてもう1人、乱菊が無言で小さくなるの背中を見守っていた





無神経な男達はそのまま飲み会を続行し、
騒ぎまくっていた

半刻程過ぎた頃が戻って来て、窓ぶちにしがみ付く

は息絶え絶えで脇腹を抑えていて
誰から見ても異常な状態だった





!?」

、ちょっとしっかりしなさいよ!」



ルキアと乱菊が窓際まで駆け寄り、
の身体を引き上げて中へ入れる

ぜぇぜぇと息をするのも苦しそうな彼女


事態に気付いた男達も酒を進める手を止めて駆け寄る





「ごほっ…は、っはぁ……キツ…」

「喋るな、とにかく今は息を整えろ」

「檜佐木、卯ノ花隊長呼んできて!」

「あ、ああ」



ルキアの手を握り、苦笑する
その傍らで物凄い剣幕で乱菊が同期生である檜佐木に指示をする


しばらくして、卯ノ花隊長が飛び込んできた
その傍らに何事かと眉を顰めた日番谷も居た

そしての事態を知った2人はさっと血の気が引いた顔をした






、落ち着いて。落ち着いて息を吸うのよ」

「ふは…っ……すぅ…」

「そうよ、そしてゆっくり息を吐きなさい」

「…はっ…ごほ……はぁ………」

「ちょっとお腹を見せて、傷口が開いたのかもしれないから」




卯ノ花の指示通りにし、幾分か落ち着いたのお腹に手を当て了承を取る

死覇装を少し肌蹴て其処に手を差し入れると、
卯ノ花は少し黙る

そして安堵のため息を漏らした




「傷口は開いてないようね、安静にしてなさいと言ったのに飲み会なんて…言語道断だわ」

「ふ…ごめ、ん……」

「いいわ、大事無かったんだもの」

「あぁ…キツイ……やっぱ私…」






段々小声になる彼女に、辺りに集っていた一同は耳を澄ませた












「死神の力……無くなっちゃって、るな…」













その言葉に皆息を呑んだ
暗黙の了承となっていた其れを、
本人の口から聞くとやはり心臓に悪い

原因などを理解していても、心の何処かではまさかと思っている部分があったからこそ















「追いつけないんだ、やちるを追いかけても追いかけても…」























皆の視線から逃れるようには顔を背け、
腕を目元に宛がう

その震える声は、泣いているようにも聞こえた――――

















どんな 笑顔に出逢えたら


 Every Heart 夢に踏み出せるの


人は 悲しみの向こうに

 
 Every Heart 幸せ浮かべて眠る




いつかいつか
   すべての魂が


やすらかになれるように...














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