何でこんな事になったんだろう



否、プールに行くって所までは良かったんだけど

問題は行った後なんだよね


忘れてた
この人達と出かけるとお決まりの展開がある事を






肉を食べて力を付けた後、令のワゴンで総員出発

水着は其のプールのシステムでレンタル出来るらしく
皆でわいわい騒ぎながら時間を掛けて選んでいた


私はそんな大人達を尻目にそこ等辺にあった無難な物を適当に選んだ


すると隣に居て、大人達の馬鹿騒ぎに混じっていなかった累さんが私が手に取った水着を見て笑う





「色気が無いね〜」



…だから言い返してやった




「中学生に色気求めないでください」

「まぁ其れもそうだ。あまり色気があり過ぎるとあの人達みたいな事になっちゃうからね」

「うん…自覚しているのかな、あれって」

「もちろん、其れを逆手にとって楽しんでいるから。特に江利子さんは」

「だよね」






際どい水着を手に、蓉子に勧めたりしている江利子を見て累さんはため息を吐いていた

恋人としては複雑な心境なのだろう
人前で必要以上に肌を曝け出すというのは


其の証拠に聖が江利子の蓉子へと選ぶ水着をことごとく却下している




確かに、伊音があんな水着着ていたら嫌だなぁ……








日曜なのでプールは混んでいた

私達の周りを通り過ぎていく人々が2度見なんかしてきて
有り得ないくらいに美人な人達が沢山居る事に我が眼を疑っている


最初は累さんが例の秘密のツテでプールを貸切にしようかと言っていたけれど

其れは蓉子によってお金の無駄遣いは止めなさいと認められなかった



それにこういう人混みというのも季節らしさを感じて良いじゃない?という言葉により累さんは渋々承諾した

本当は江利子も含めて皆を好機の目に晒したくないという心だったのだが
其処まで言われてしまっては反論も出来ようがない



さっきからなるべく人目から江利子達を遮るように自らの身体で壁を作っているのだが、

累さんこそ元モデルをやっていただけあって独特のオーラを放っており、
美少年として目立つものだから余計に人目を集めてしまっている事に気づいていない



そしてようやっと其々納得のいく物が選べたらしく、

それぞれ水着を片手に更衣室へと向かった



物凄く簡易な、スポーツ系の水着を選んだ私と、
最初からプールで本質的に泳ぐ気はないらしく下にはズボンのような水着を着て上にはパーカーを羽織っているだけの累さんが、

更衣室の前のベンチで鉢合わせた


そして私の水着姿を見るなり累さんはまた要らん事を言いやがった









「ふむ、胸が目立つのはもう少し先か…」







私は何も言わずに手にしていたゴーグルを思いっきり顔面に投げつけてやった


隣にどかっと座った累さんと私は残りのメンバーの到着を待っている












「ふむ、暇だねぇ…暑いし……」

「だね」





先程からじりじり照りつける太陽にあがらえず、
累さんが買ってきてくれたコーラを飲みながら私は相槌を打った

そしてもう1度少しした静寂が訪れてから累さんは口を開いた







「よし、江利子さんから聞いた話だけど…君の小さい頃の話をしてやろうか」

「私の?」

「此れがまた傑作揃いでさぁ、笑えるんだよ」

「何それ、ちょっと気になるな…」

「其れは昔の事、君はまだ4歳だった」







少しもったいぶってから累さんは話し始めた


私はコーラを飲みながら耳を傾けていた









まだ口調は頼り気ないものの、いっぱしの口を利いていた子だったらしい

俗に言う生意気な子供、なのかもしれないけれど
でも皆そんな事は欠片も思った事ないらしい


そしてある日令の作ったケーキを食べながら皆で和気藹々していた時


令の料理の上手さはどうやって開花したのかという話になったようだ

由乃ちゃんのお陰だとか


ああでもない
こうでもない

いろいろ話していた時、其れまでケーキを頬張っていた私が顔を上げたらしい






『いっちょ、にせき、でじょうずになるものじゃないよね?』





その意味不明な言葉に皆頭を抱えたようだけど、

考えていた蓉子が思い当たったらしく提案したんだって






『一石二鳥?』

『…一石二鳥?どうして?』

『判らないわよ、其処までは』





問いかける聖に蓉子は眉を顰めて答えた

けれどまた蓉子が思い当たったらしい





『あ、"一昼一夜"って言いたいの?』

『…なんでそんな難しい言葉知ってるの……』







あまりに年と掛け離れた言葉を使うに、聖は本気で別の意味で心配していたそうだ

















「あははっ、何で心配するのさ!」

「そりゃ不安にもなるよ、この子何者だろうって」

「訳判んないや。其れに多分其れ言っている私自身良く判っていなかったと思うよ」

「まぁ、そんな事があったんだ。他にもこんな事がある」














聖は寝起きが最悪である

直ぐには覚醒しない聖の脳を1回洗濯機に入れて洗ってやりたいわ、と蓉子がぼやいていた時もあるくらいに




そんな聖には恐れている事が1つあったらしい


其れは、"魔法の呪文"


其れを囁かれると突然目が覚めてしまうと言っていた

蓉子は其れが何なのかは知らない



けれど知っているのはだと言う


そしてもう1人…其れをに教えた江利子なのだ






いつものように聖がぐっすりと気持ち良く眠りこけていた朝


ふとお腹に重みを感じて、其れがなんだというのは直ぐに判った
けれど何度起こされようと聖は寝ていたらしい

不機嫌そうになった頃、はふと思いついた

江利子から教えて貰った"魔法の呪文"があると



そして聖の耳に口を近づけて、そっと囁いたんだそうだ












『ごしゅじんさま、おきるにゃあ』
















其の出来事を聖は未だに悪夢だった、と語る


江利子への殺意が芽生えた、と

本気で怖い顔をして詰め寄ってきながら聖はそう言った















「ふはははっ!そんなに嫌だったんだ!」

「そして更に、更に面白い話がある」









今でこそ蓉子の努力により改ざんされていはいるものの、

だって聖に負け劣らず寝起きが悪かった
一応身体を起こして起きてくるが、ぼーっとしていたそうだ




ある日の誕生日が近づいてきた日の事


江利子が寝ぼけ眼のに誕生日に何か欲しい物はないか尋ねた


すると、眠そうな目を擦りは…






『たんじょび……ほしいもの、…ない』

『無いって事はないでしょう。貴方も人間なんだから欲しい物の1つや2つ…』

『うぅん…ない……ないねん』

『何で其処だけ大阪弁なのよ』

『わいは……きゅうしゅうだんじ…むにゃ』






江利子は其の日からにベタ惚れし、
観察日記を付けようかと本気で悩んだらしい















「かん……」

「観察日記」

「…怖っ」

「いやぁ、私も其れ聞いてどうしてもっと早く帰って来なかったのかと嘆いたよ」

「江利子といい累さんも完璧私の事玩具にしてるでしょ!」






「あら、今更気づいたの?」











私が憤慨してそう叫ぶと、
目の前から得意げな憎たらしい自信満々な声がした

私と累さんが目線をあげると其処にはビキニを纏ったセクシーな江利子






「どう?」

「…あちゃあ…」





ぐっと胸を強制してポーズを取ってみせる江利子に、
私は額に手を当てながらそろりと隣に居る累さんを見た

先程までの和やかさは一体何処へ


累さんは真っ白にフリーズして固まっていた

でもまぁ、面倒くさいからと言って江利子の水着選びに参加しなかった累さんも悪い



其の証拠に江利子の後ろからやってきた蓉子と祥子は色気は出ているものの控えめに可愛らしい水着だった

此れが限度だ、でも可愛い、と其の隣で聖と令がうんうん頷き合いながら納得した顔を見せている



聖と令はと同じくスポーティな水着で動きやすさを優先したらしい




本気でヘコんでいて使い物にならない累さんを私と令で両脇から抱えてプールサイドへと向かう


当の原因である江利子は鼻歌まで歌いながら楽しそうに先頭を切って歩いていってしまっていた
















でも、私は


何か





何かを忘れている気がして……













ずっと胸のつっかえが取れず、

まるで喉に魚の骨でも刺さったかのようなもどかしさを感じていたんだ――――――――




























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