「基本的には貴方の女たらし癖が移っていると思うのよね」
空は快晴
視界も快晴
私の脳みそも快晴
…でも私の親友の脳みそは大雨
なんのこっちゃ
「そうみたいね」
サングラス越しにピチピチの女の子達を眺め、
口元は豪勢でカラフルなアロハジュースから繋がってるストローが
其々私の顔の部品達は忙しなく働いてくれている
でもこの、
隣のどんよりした空気をどうにかして欲しい
蓉子はさっきからと其の級友達に混じって遊んでいる聖を見る度にため息を吐いているのだ
なんだなんだ
なら私は鼻の下をだらしなく伸ばしてデレデレしている我が亭主に向かってどうしろというのだ
格好つけたがりな聖が歯をきらりと輝かせて爽やかな顔を保っている方がまともじゃないか
「肯定しないでくれる?」
「…自分で言っといて肯定されると不機嫌になるのやめてくれる?」
「…………そうね」
じろりと睨んできた蓉子に、
尤もな返答をすると
蓉子は少し黙り込んでから再び視線を前へ向け、苦笑しながら謝ってきた
あれ、素直だわ
にしても、うちの亭主は時々ぶっ飛ばしたくなる
まぁ正直私も少なからずとも驚いてはいる
は基本的にクールだと思っていた
年に似合わず大人びた子だと
でもこうして見ると判るのね
多分、きっと、もしかしたら
女の子達にきゃーきゃー言われるのが嫌いじゃないみたい
クールで知的なキャラクターを学校でのファン達に求められているから、
自然とそんな振る舞いが身についてしまっていたのだろう
にしても、うちの亭主は本当恥ずかしい
………
「る〜い」
思いっきり語尾にハートマークをつけて手を振りながら呼ぶ
私に気づいた累がきょとんと顔を此方へ向けた
ゆっくりと手招きしながら告げる
「肩揉んで」
再び語尾にハートマークを思いっきり散らかす
なんちゅう女だ、と聖とが此方を見てきて
累はえぇ〜っと渋る
おいでおいでしていた手の平を上へと向けて、人差し指だけを掲げて自分の方へ強く折る
"つべこべ言わずに来い!"
背後にそんな台詞が浮かんでた
ぞっと青ざめる蓉子と聖とと令と祥子
でも累は1人慣れているので、
ちぇっと渋々此方へ素直にやって来た
肩に軽く掛けていたタオルを剥ぎ取り、
肩を露出させると其処に累が両手を置いてマッサージを開始してくれる
うんうん、仕込んだだけあって上手になったわね
私専属のマッサージ師ね、累は
昼も夜も
「ちょっと、累可哀想じゃない。折角のプールなんだから…」
「甘やかしちゃ駄目よ、蓉子。貴方も聖に此れ位調教しておかないと」
「調教…ってねぇ、貴女…」
「じゃないと他の雌犬の所へ尻尾振って行っちゃうわよ?」
「………貴女もう一度リリアンで言葉遣いとか振る舞いを学んだ方がいいんじゃないの?」
蓉子が真剣に私の頭を心配しているけれど気にしない
逆に倍返しで反撃するのが目的だから
足を組んで、肘杖を突き、不敵な笑みを浮かべる
「特にお預けを食らい続けている盛り真っ最中の聖は、ね」
「なっ…!?」
「そんなんで聖が他の女に走っても文句は言えないわよ」
「なぁ〜〜っ!?」
「にぬねの」
「じゃなくてっ、何で貴女がそんな事知ってるのよ!?」
「知らなかった?聖の相談相手は累よ、そして累を操ってるのはこの私…すなわち最強!」
大口を開けてポカンとしている蓉子に向けて、
握りこぶしでガッツポーズを作り悪魔の微笑みを作る
すると段々蒼白になってく蓉子を見て私は満足出来た
大事な親友を虐めるのもここら辺にしておいて、と
律儀にずっと肩を揉んでいてくれた累の手を引いてプールの方へと歩み寄って行く
「…虐め過ぎじゃない?」
後ろをしきりに振り返り、
蓉子をの姿を確認してから累がこそこそと問いかけてきた
でも私は得意げに口角を上げて受け流す
「いいのよ、忘れているようだけど私は聖の親友でもあるのよ?」
「其れと蓉子さん虐めるのにどう関係が…」
「蓉子をけしかけておけば聖にとって万々歳な展開がやってくるじゃない」
「ふぅん、相変わらず強引なやり方するねぇ」
しょうがないなぁと肩を竦めて笑う累に、
私も全くだわなんて思ったり思わなかったり
「でも、の事でそれどころじゃないのも正直な処じゃない?」
「そんなの気にしてたらあの子達一生セックス出来ないわよ」
「う〜わ、聖さん悲惨」
「でしょ?だからけしかけてるの」
私達はどんな状況でも毎晩のように愛し合ってるものね、と笑い掛けると
累は珍しく少し照れたようで目を背けて小さな声でそだねと肯定してきた
それに、と私は続ける
「だって自分の事で周りに遠慮されたら気分悪くするでしょ」
「じゃ、私この子達送ってくるから」
少しは近づけたのか、
にしては随分な心遣いに女の子達は吃驚していた
でも蓉子が笑顔で送り出すともはにかんでから其の子達を引き連れて歩いて数分の場所にある駅へと姿を消す
其の背中が見えなくなるまで見送りながら聖がぼそりと呟いた
「成長、っていうのかねぇ」
「あっという間ですよね」
「そして反抗期、っていうのかねぇ」
「其れに関してはなんとも」
「うぅ、聖ちゃん寂しい…」
令に弱々しく抱きつき、涙を流す振りをする聖
そして聖の腕の中で固まっている令
そんな2人を見ていた蓉子はふっと笑い出した
「そんなに気にする事ないわよ、只あれは時間の問題だからもう少し待ってあげなさい」
「もう少しってどんくらい?」
「そうね、ほんの少し…よ」
「…わかったよ」
蓉子の柔らかな物言いに安心したのか、
聖もほっとため息を吐いてから満面の笑みで背伸びをした
「あ〜、明日も晴れるかな?」
そうね、きっとそうだわ、と蓉子
判らないわよ、と江利子
またそんな事言う…と累
いいえ、絶対晴れますよ、と令
私もそんな気がします、と祥子
夏の終わりに君に聴かせたい言葉があるんだ
夏が終わると、君と出会った季節がやってくるから
君に、
君に聴かせたい言葉があるんだ……―――――――――――
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