ねぇ、空よ



光り輝く太陽よ

教えてくれないか




別れの無い出会いなんてあるの…?






















もう一度あの夜に



いますぐ戻れるのならば


去ってゆく君の背を





抱きしめ

引きとめよう...―――――――























「聞いてない」

「言ったわよ」

「でも聞いてない」

「ちゃんと言ったもの」

「知らなかったって事は私は聞いてないって事だよ」






何時になっても平行線の話の流れ


永遠に繰り返されるのだろうかと誰もが心配した時

終止符を打ったのは伊音だった







「言っても、貴方聞いていなかったわ。お菓子を咀嚼するのに夢中で」

「聞いてないって判ってたんだったら私に判るようにちゃんと告げるべきでしょ?」

「言いなおす気にならなかったんだもの」

「そんなの言い訳にもならないよ!」






苛々してそう言うに、伊音は微笑んだ

何処か寂しそうに




引っ越す前日の夜


令の家に再びお馴染みのメンバーが集まった

そして引越しの挨拶を告げた栞に、
其れまでのんびりとソファでコーラを飲んでいたが勢い良く反応した

すぐさま隣に居る伊音を見るけれど、
何の変わりもなく静かに紅茶を飲んでいた


カッとなったから出た言葉が「聞いてないよ!」だったのだ








「でも告げた所でどうにもならないでしょう?もう決まってる事なのだし」

「っ伊音は!!」

「何かしら?」

「伊音は私と離れちゃっても平気なの!?」

「……平気なのは貴方の方でしょう」

「何をっ…」







大人達が息を呑んで見守る中


果敢にも伊音はスッとを見てから小さくため息を吐いて、そして口を開く









「貴方は私を…恋人だ、好きだ、愛してるって言ってくれるけれど」

「……けれど?」

「私は1度だって貴方に愛されているって感じた事はないわ」

「なっ…」

「貴方の全ての行動の裏には、この方々が関わってるの」

「この方々って、皆の事?」

「まず、私と知り合ったのはこの方々との関係に対して屈折していた貴方に声を掛けたのが始まりだったわ」

「……うん」

「そして、親密な関係になったのはこの方々に如何程貴方が愛されているかを語った時ね」

「…うん」

「キス…初めてキスをした時も貴方の頭の中には、令さまが浮かんでいたでしょう?自分のファーストキスの事を」

「………」








辺りは黙り込んでしまい、

すらもじっと口を結んでしまった


其の中で伊音はため息をもう1度吐いた











「ずっとよ、貴方は私と居る時もずっと此処にいらっしゃる方々の事しか考えて居なかった」

「…っでも!それだったら虐められていた君を助けるなんて事…」

「其れも、皆様が通われていたリリアンでそんな卑劣な行為がある事が許せなかったのよ」

「そんな…」

「貴方は…"愛"の意味判ってる?」

「…伊音……」









人は


初めて自分が過ちを犯していた事に気づいた時

どうするんだろう?




素直に謝る?


それとも断じて違うと主張を続ける?



どうなんだろう…












密かに輝きを放つ月よ


教えてくれないか













もう後には引き返せない場合まで来てしまった時、どうすればいいのかを…



















幾千ものの仲間達と輝く星達よ


教えてくれよ














私は何処で道を間違えたというの…?


























































夜も更けた頃

支倉家には聖と蓉子、令と祥子、累と江利子の6人だけが残っていた



あの後は誰に何と声を掛けられようが黙り込んでしまった


ソファの上で膝を抱え、じっと何か考え込んでいるようで



いつもならこういう湿っぽい空気を嫌い、明るくしてくれる累でさえには声を掛けないでいた

ベランダで夜空を見上げながら1人で煙草をふかしている



キッチンでは令と祥子と蓉子が夕食の片付けをしており、

聖と江利子はの居るソファから離れて静かに談笑していた




そんな中、ベランダの引き戸を横に開けて累が顔を出す

そして何処か嬉しそうに






「江利子さん」







と、手招きをした

聖と江利子が顔を向けると、ニッコリと微笑んで累は言う







「月が綺麗だよ」

「あら、そう。良かったわね」

「こっちで一緒に見ようよ」

「ロマンチストね、意外と」

「いいじゃない、聖さんも。ほら」

「ま、たまには良いかもね。珈琲飲みながら月見ってのも」







外は暑いから嫌だとごねる江利子に、
累は聖にも声をかけると聖は先程まで飲んでいたアイスコーヒーを手に立ち上がった


其れに続いて江利子ものろのろと着いて来て、

累の手が届く範囲まで来ると腕を引っ張られて半ば強引にベランダへと引っ張り出される



しかし其れまで渋っていた顔も直ぐに柔らかなものに変わった








「あら、本当。見事な満月だわ」

「でしょ?」

「うん、雲ひとつ無くて綺麗な星空だね」








3人が和気藹々と微笑み合う夜空の下


交わされた会話も其れまで

只後は互いに煙草を吸ったり、珈琲を飲んだり、ボーっとしていたりしていた





けれど



突然江利子が微笑んで聖に向き直った
















「さて、いろいろと遠回りしたけれど」


「ん?」


「いよいよ貴女の出番よ」


「…何が?」


「佐藤の親として、出来る事は1つだけ。そして其れが出来るのも1人だけ」


「………」


「貴女だけよ、佐藤聖。覚悟を決めていってらっしゃい」










ビシッと聖に人差し指を向けて、
宣戦布告を持ち掛けるかのように挑発的な笑みを浮かべる江利子を見て

聖はしばらく呆けてはいたものの、直ぐにフッと笑って


自分へと付きつけられている腕を下ろしてから穏やかな笑顔のまま目を閉じる










「勇気、分けて」

「情けないわね」

「うん、だって私は蓉子や江利子…皆に後押しされないと踏み出せないからさ」

「…サービスよ」

「うん」







そう言って江利子は微笑み返し、
大事な悪友もとい親友の肩をぽんぽんと軽く叩く











「大丈夫、勇気を出して」


「……うん、ありがと」
















しばらくして随分と落ち着いた雰囲気を出した聖が力強く頷き、


そして右腕をめくり回しながら何かを叫んで室内へと戻っていった







「うん、よしよし。勇気100%ッ!!」

























そんな聖の後姿を眺めながら江利子と累はプッと小さく噴き出した

そして至近距離に居た江利子の腰を片手で引き寄せ、耳元で囁く









「聖さんには勇気を、私には…もちろん愛をくれるよね?」

「……サービス、だからね。利子5倍増しよ?」

「うん」






そう言って嬉しそうに目を瞑る累に、
江利子は口付けを贈った



































ねぇ、空よ



光り輝く太陽よ

教えてくれないか








密かに輝きを放つ月よ


教えてくれないか








幾千ものの仲間達と輝く星達よ



教えてくれよ


























この世界で生きるという事


とても難しい事





この世界で生きていく理を……――――――――――






















勝手なことだと



百も承知の上だよ

すぐじゃなくていい









僕はひとりで待ち続ける....
































next...