見つかった





お終いだ



もう、何もかも









終わりよ――――――――



















「まさか、リリアンを辞めようなんて思ってはいないでしょうね?」









いつの間にか私は手にしていた缶珈琲を力一杯握りこんでいたらしく、少しだけヘコんでいた


其の可哀相な缶を私の手から取り上げて、口に運びながら放った江利子の言葉に私は顔を上げる

そして苦笑いをすると江利子は鋭い目つきで私を見据えた








「許さないわよ、そんな事」

「なっ…」

「今までだったら良かったかもしれないけど」

「…」

「今は貴女は私の物よ。簡単に手放してたまるかってのよ」

「…江利子、でも…」







困り果てた顔で私が声を掛けると、
江利子は夕方の公園でブランコに座っている私を抱きしめてきた


其の腕がとても強くて痛いくらいだった



其れ程に私の事を大事にしてくれているんだってこと

悲しくなる程に江利子は私を大事にしてくれている



…痛いよ、江利子










「だから私の物だって言ってるでしょう?聖の物、じゃないんだから。気にしなくていいじゃない」

「………」

「貴女の元へ聖が来たら私が守るわ」

「江利子」








ね?と

口答えは許さない、というように顔を覗き込んでくる江利子の笑みがとても綺麗だった






嗚呼、恋をすると人は綺麗になるってあの人が言っていたわ



そう、江利子

私なんかに恋なんてしてくれているから貴女はとても綺麗なのね



眩しいわ










そしてちらりと見やった腕時計の指す時刻に、私は勢い良く立ち上がった


その際、上の方にあった江利子の顔と私の額がぶつかる

互いにあまりの痛さに其々ぶつけた箇所を押さえながら黙り込んでしまって



涙目になりながらも何とか言葉を紡ぎだして私は江利子の顔を見やる










「楓のお迎え、行かないと」

「…痛いわ」

「ごめん、大丈夫?」







本当に顔を抑えたまま唸っている江利子が心配になってきて顔を下から覗き込むと、


パッと両手を顔から離して
其処から現れた顔は悪戯っ子のようなものだった



そして私の手を握ると行きましょうと笑顔で促してくる




いつも江利子には振り回されっぱなしだけれど

でもこうやって江利子は私を元気付けてくれる



そうね、今だったら言えるわね





江利子は大事な人です、って






















ねぇ、聖

私ね




貴方には想像も出来ない数年を過ごしてきたの







其の数年はあまりにもいろんな事がありすぎて

貴方の事を想う暇なんてなかった



でも、こうして











貴方は未だに私の心に居座り続けるのね…




ならば今度こそさよならしましょう







私を何よりも大切にしてくれる江利子を、裏切ることなんて出来ない―――――




























「聖…江利子の言っていた、"抱くだけ抱く都合の良い存在"って…どういう事?」

「………其の通りだよ」









帰り道

もう下校する生徒は見当たらないくらい陽の沈んだリリアン
マリア様に手を合わせた後蓉子は私にそう切り出した


私は自虐的に笑いながら返事をする








「ねぇ、まさか貴方がそんな事するなんて信じられないわ」

「…昔は無知だったから」

「昔って何時よ?」

「中学生の時」

「……」

「まだ蓉子と親しくなる前だったから、ね。知らないのも仕方ないよ」

「じゃあ教えて。 さんって貴方と江利子にとってどういう存在なの?」







蓉子より1歩先を歩いていた私は、
深呼吸をしてから後ろを歩いていた蓉子を振り返った



風が


夕方の秋の風が私達の髪を撫でて消えていく





銀杏並木の下で私達だけの時間が止まったみたいだった












「江利子がずっと恋していた人で、私は彼女を傷つけた。江利子はこの数年私を許した事はないよ」




「…其れが……其の理由が彼女と身体だけの関係を持っていたから、なの?」




「そう。私はの事は何とも思っていなかった、気にすらかけていなかった。だから江利子は癪に障ったんだろうね」




「でも今は、違うんでしょう?」




「……謝りたいんだ、傷つけてしまった事。そして償いたいんだ…」






















視界に写る蓉子の目が滲んでくる



泣いてくれるの?


こんなにも不器用で、自業自得な私のために…













「応援、してくれる?」



「…っ当然よ、私は貴方の親友だもの」



「ありがと」












笑いかけて首を傾けながら尋ねると、

蓉子は涙をぼろぼろ零しながら私の肩へと拳を叩きつけてきた



其れを受け止めながら蓉子の後頭部を抱き寄せてもう一度耳元で礼を告げた





蓉子、君は最高の親友だ








君に出会えて良かったよ














きっと明日からは今まで以上に私を意識して避けてくるだろう


だけど、もう2度と逃がしはしない




今度こそ、あの子の腕を掴んで引き止めるんだ








…あの頃から私達はきっとやり直せるよ



やり直せると信じている――――――――







































けれど運命は残酷にも2人を引き裂こうとしている






本当は心の深い所で繋がりたがっているのに、


2人とも足の向かう先は其々反対側で





其れに気づいていないのがまた残酷だ









まるでロミオとジュリエットのよう…――――――――


























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