私が本当に好きなのは、誰なの?
どっちも好きよ
比べたりなんて出来やしない―――――――
あれからどれくらいの時間が流れたのかは判らない
泣き疲れたのだろうか、は今私の腕の中で眠ってしまっている
本棚の背にして座り込んでいる私の心は虚ろだった
散らばっている本達は可哀想に其の侭だ
図書カードを握り締めている手と反対の手での頭を抱きかかえて
只々時間が過ぎていくだけ
ねぇ、
君の考えている事が判らないよ
私も江利子も本気で君を愛しいと思っている
君はどちらも好きだと言ってくれている
けれどどちらかを選ぶという時に君は江利子を選んだね
でも
こうして私に助けを求めてくる
ねぇ、
君は一体どうしたいの…?
何もかもが判らないよ………
「…聖?」
ふと自分の名を呼ぶ声に顔を上げると、
其処には怪訝そうな顔をした江利子が居た
本棚の並ぶこの場所を探していたようで、
少し息を切らしながら本棚の間を潜り抜けて此方へと近付いてくる
そして散乱している辺りを見回して更に眉間の皺を寄せた
「何があったのよ?」
「…よくわかんないや」
ははっ、と弱々しく苦笑いをすると
江利子は私の腕の中のの顔が濡れている事に気づいた
私達の前にしゃがみ込んで其の頬を指で拭う
「泣かせた、の?」
「………ごめん」
「…そう」
叩かれる、と
何故かそう思った
けれど江利子は小さくため息を吐いて窓の方へ顔をやった
「江利子」
「何?」
「、こういう事よくあるの?」
「…そうね」
「何で?」
冷静に肯定してきた江利子に多少苛つきを覚えながらも、
突っ込むと江利子はよいしょと其の場に本格的に腰を下ろす
窓から差し込む夕日が、
図書室の狭い空間で向き合っている私達と其の間に居るを照らしていた
江利子はの頭を優しく撫でながら口を開く
「多分…の中で決着ついてない事があるんだと思うわ」
「決着……」
「其れが毎晩のように夢で押し寄せてくるのよ」
「つまり?」
「こういう事は最近常に起こってるという事。私は発作と言っているけれど」
「発作、ね…それで江利子はどうしてるの?」
「どうもしないわ」
其の台詞に私は耳を疑った
呆気に取られている私を見て江利子は苦笑いをする
「どうも、出来ないもの…只抱きしめて傍に居る事だけしか」
「……江利子、君はこの子の恋人だよね」
「そうよ」
「なら、どうして其の発作を鎮まらせる事が出来ないの?」
私の質問に江利子はしばらく答えなかった
撫でているの髪を梳きながら、
本当に愛しそうにの寝顔を見つめていて
そしてしばらくしてから江利子は其の目を離さずに呟いた
「は私を求めていないもの、貴方に…求めたんでしょう?」
「……そんな事…」
「いいえ、この子の顔を見ていれば判るわ。凄く安心しきってる」
「江利子」
「ねぇ、聖。頼んでも良い?のこと」
「………」
そう言って微笑んだ江利子の笑みには悲しみが見え隠れしていた
親友の初めて見る顔に私は何も言えなくなってしまった―――――――
「飲み過ぎよ」
「…」
そう言って私の手から麦酒の缶を取り上げる蓉子に、
聖は抗議の視線を投げかける
夜も大分更けた頃
あの後を江利子に返して、聖は帰宅した
けれど家に居ても落ち着かず
コンビニで酒類を買って親友の家へと向かったのだ
只ならぬ様子の聖に蓉子は何も言わず部屋へと上げてくれた
そして黙々とお酒を飲み続ける聖に蓉子は何も言わず付き合ってくれて
真面目な蓉子はお酒は飲まずに机で課題を片付けていたけれど、
聖の目が座り始めた頃に蓉子は聖から其れを没収したのだった
「未成年が酔い潰れるまで飲むものじゃないわ」
「…たまにはいいじゃない」
「お酒に頼らずとも私が居るでしょう?聞くわよ」
「………蓉子は、優しいね」
自虐的に微笑む聖に蓉子は困ったように笑った
聖は蓉子の手を握って、引き寄せると其の身体をギュッと抱きしめる
「…こら」
「たまにはいいじゃない」
「……もう…」
「…ねぇ、蓉子」
「何よ」
「私と付き合ってよ」
「…聖……」
本当に
本当に無意識にその言葉は出ていた
蓉子の温かい身体が涙が出そうなくらい優し過ぎて
このまま手放したくないと思ったんだ
でも蓉子は弱りきった私を突き放すなんて事はしなかった
蓉子は、優しいから
私を受け止めてくれたんだ、こんな酷い私を…―――――――――
顔を上げれば
空は広がり
星達は輝くいつも
一番大切な人とは
どうして一緒にいられない
君に会いたい...
next...