「はぁ…どうしようかな……」









呟いた言葉は夜の闇にかき消されていく

秋の夜はとても冷えていて寒い
吐いた息も白くなっていた



そんな中私は家の近くの公園のブランコに座って思考に更けていた



昨日退院する時蓉子と江利子は来てくれたけれど

楓ちゃんとはいなかった



そりゃ当然か



にとって私は只の知り合いだもん






楓の言葉には正直言って胸を刺すものがあった


栞とだって、楓の言う通り簡単に崩れていった




でもは?



との仲をそんなに簡単に消してしまえる?


…答えは否だ







だって









失いたくない人だもん















「………よし…」















立ち上がるとブランコが小さく揺れてぎぃっと音を立てた




コートに手を突っ込んで公園を後にする――――――――――






















『もうそんなおかあさんきらい』





あの日病院から帰ってくるなり楓にそう言われた

ここしばらく楓の泣き顔なんて見た事なかった


けれどその楓が、江利子の手をギュッと握り締めて


俯いてそう言った



その楓の手を握っている江利子は苦笑していて


とりあえず今日はゆっくり寝かせてあげて、と言って帰っていった







何があったのだろう



楓の鞄を開けてみたら、出掛ける前に聖に見せるんだと言って持っていた筈の

絵がなくなっていた





絵はどうしたの?と尋ねてみると




聖にあげた、と




そう言ってまた新しい絵を描き始めた


そしてその日から




楓は一生懸命描いた絵を、


最後には破って

またセロテープでくっ付けるという意味不明な行動をするようになった





ただそれだけなら捨ててしまってもいいのだろうけれど



あまりにも

描く時よりも



一生懸命絵を繋ぎ合わせるものだから





捨てられずにいてリビングに貼ってある






昨日聖さんが退院した事を報告に来てくれた江利子がリビングを見て、

更に苦笑して側に居た楓の頭を撫でた





この行動と

江利子の苦笑は



一体何を意味するものなのだろう…










現在夜11時



楓はとっくに寝ていて

私はここ数日の楓の絵を眺めながら就寝前の珈琲を飲んでいた



この時間は1人でいろいろと考える事がある

この間聖さんに言われた事






『私は、君が特別な人なんだ
 
  そして、きっと君は私が特別な人なんだよ』








あれは、どういう事なのだろう








ズキンッ



またあの頭痛が襲ってくる








何か、大切な事を思い出せと








ズキズキ






そんな中電話が鳴った

こんな遅くに誰からだろうと疑問に思いながらも受話器と取ると







(こんばんわ)







何処かで聞いた事のあるような



懐かしいような








何だかとても愛しいような







そんな声













「もしもし?何方ですか?」

(佐藤 聖です)

「っ…」









たった今考えていた相手の事だから驚きを隠せず


息を呑む





受話器の向こうで彼女はきっと困ったように笑っているのかな















(ね)

「…はい?」

(ちょっとベランダ出れる?)

「え…はい」




突然の要求に戸惑いつつも承諾して受話器を手にベランダへと出た



すると

見下ろした所にある暗い路地には彼女がいた








「せ、聖さん!?退院したばかりでしょう?こんな寒い中…」

(ありがとう、でもどうしても君に言いたい事があって)

「言いたい事?」






すぐ階下にいる聖さんの口から漏れる息は白くて


とても寒そう

決して楽ではなさそう








けれどそんな聖さんは携帯電話を握って私に微笑みかけてきた














「大好きだよ、



















今までずっと好きだった






そしてこれからも、ずっとずっと好きだよ――――――――





















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