それだけだよ
じゃあね
そう言って去っていった彼女は
悔しい程にとても格好良かった
夜道に消えていくその背中を見つめながら私は何も発せずにいた
そして胸の何処かで何かが弾けた気がした――――――――
「言い逃げってやつね…ズルいわ…」
そう呟いてはみるものの
でも逆に良かったのかもしれない
突然そう言われても、何も返せなかった
断ればいい?
そう、それはきっと簡単なハズだった
けれどどうしてもそれだけはしてはいけないと心が叫んでいた
むしろ喜んでいる自分がいる
翌日の昼休み私は江利子と中庭にいた
お弁当を食べながら昨夜あった事を江利子に告げた
「聖が?」
目を丸くする江利子に私は頷く
すると江利子は微笑して、一言
「良かったわね」
「…え?」
「だって嬉しそうな顔してる」
言葉の意図が掴めず、きょとんとしていると
江利子は肘杖を突き微笑みながらそう言った
「え…」
「ねぇ、鳴。私貴女が好きだわ」
「…江利子…」
「だからこそ貴女のためにもう1度言うわね」
「?」
「"私にしなさいよ"」
その瞬間
やっと
やっと
思いだした
思い出したくないようで
ずっと思いだしたかった事
江利子の笑顔
江利子の涙
聖の笑顔
聖の涙
2人のいろいろな表情が次々にフラッシュバックする
「あっ……ぁ…江利子、私なんて事を…」
そして、
江利子にその言葉を言わせた事
それがどんなに残酷な事か
私は声を震わせながら目の前の江利子を見つめた
けれど江利子は微笑んだまま私を抱き寄せる
「いいのよ、私は。いいから…」
だから
早く聖の元へ行ってあげなさい
江利子
ありがとう
大好きよ
貴女は私の1番大好きな人よ――――――――
廊下を駆け抜ける
生徒達が何事かと此方を見てる
けれどそんなの関係ないわ
聖の腕を引っ張りながら走る
「ちょっ、!?」
驚いてる聖に私は顔だけ振り返って告げた
「今すぐ言いたいのよ」
「何を?」
「貴方を世界で1番愛してると」
「なっ…」
途端に真っ赤になった貴方がとても愛しくて
でも私はただこの人が好きなだけじゃない
江利子の想いがあって
蓉子さんの想いがあって
だからこそ聖はこんなにも魅力的に見える
ずっと欲しかった人
ずっと側にいて欲しかった人
やっと叶いそうで
自然と足は速くなっていく
向かう先は図書室
貴方と私を結びつけた場所
図書室に入ると駆け足をやめて、静かに歩く
そして洋書の棚へ行くと振り返って聖に向き直る
聖は相変わらず真っ赤なまま信じられないと私を見ていた
「聖」
「…あっ、え?うん?」
緊張してわたわたとする聖に思わず笑みを溢す
そして聖の首に腕を回した
「遅くなってごめんなさい」
「…」
「思い出せなくてごめんなさい」
「…っ」
「思い出せてホッとしてるの、私」
貴方を愛している事を
そう告げると聖はギュッと抱きしめ返してくれて
私の首筋に顔を埋める
まるで甘えるような仕草にくすぐったさを覚えてた
「私も、愛してるよ。、ずっと…」
「ありがとう、聖」
ありがとう、聖
私を愛してくれて
ありがとう、江利子
私を愛してくれて
ありがとう、楓
私を愛してくれて
ありがとう、亡き人
私を愛してくれて
私はようやっと貴方達へ愛を返す事が出来るのね―――――――
いくら泣いても
涙ってものは
決して枯れゆく事などないと知りました
この星空がこんなに輝くのは
このどれかに君が居るからなのでしょう
君が居なくなった
ねぇ一人にしないで
目に映るものが
全て歪み始めてた
顔上げれば空は広がり
星達は輝くけれど
星に手が届くはずない
どうしてこんな空は遠い
君に会いたい
この星空が
こんな切ないのは
このどれかに君が居るからなのでしょう
君が居なくなった
何かも無くなった
目に映るものが
全て色を失った
顔上げれば空は広がり
星達は輝くけれど
一番大切な人とは
どうして一緒にいられない
君に会いたい
そろそろ日が昇る
街がざわめき出す
そして広がってく
無色の世界が
君と会わなければよかったと
後悔する日さえあった
そして今この世界から
星空に向かって飛び立つ
やっと会えるね ...
fin