言い方は相応しくないけど…
そうだね、類は友を呼ぶって処かな
言葉の通り、鏡を再び見た気がした
1回目は志摩子の時
あの時はまるでもう1人の自分を見た気がした
けど
あの子は違ったね
鏡じゃない
硝子越しに見る昔の自分、だ
1年前とは違う状況で
今度は自分は傍観者で
あの子をただひたすらに眺めていた
いつからかな
ただ眺めているだけじゃ足りなくて
この心を埋めるにはどうすればいいのか考え始めて
行き着いた結論が
私はまた恋をしているのだと気がついたのは…
そうだったね
君を猫だと例えたのは私だった
だって本当にとてつもなく猫としか言いようがなかったんだ
悪い意味じゃなくて良い意味でね
誰に対しても
爪先を立てて、毛を逆立てて
牙を剥いている様子が
出会った頃のゴロンタに似ていたからさ
そっと手を差し伸ばすと、
今にも噛み付きそうな
でも本当は
優しく撫でて欲しいのに
それに甘える事自体を怖がっている
そんな子だったよ、
男性が嫌いというのは私もそうだけど
それは明らかに原点の違うものだよ
私は、ただ柏木優が嫌いなだけで
君は、男という生き物の存在すら無視している
そうだろう?
何故そうなったか、
そんなの考えずとも判った
少なくとも私には判った
男は最低だから
力で片付けるから
相応しい建前すら持ち得ていなくても、
常に自分が有利であろうとするから
もちろん世の中の男性全てがそうだと言う訳じゃないけど
だからそれら全てを否定する訳じゃないけど
きっとは、
私達が逆立ちしても
平穏な日本という国で普通に暮らしていれば出会う事のない
佳境を乗り越えたんだね
乗り越え…られたのかな
私はそうだったよ
蓉子のおかげで、
お姉さまのおかげで、
皆のおかげで乗り越えられた
は…その時周りには誰が居た?
………誰も居なかったんだろう?
だから記憶を忘却するという手段を否応無しに受け入れるしかなかったんだ
そうだね、全てを忘れてしまう程楽な方法は無いよ
でも
それは凄く淋しい事じゃない?
悲しかった、辛かった思い出ならとにかく
楽しかった思い出達まで全て忘れるつもり?
じゃあ、全てを忘れた後に
君には何が残る?
……だからね、
私は
ううん、私だけじゃない
皆も
君のその生き方を新たな道に誘導してあげたいと思っているんだ
その新たな道は
私達が常に歩んでいる道
それは決して楽しい事ばかりじゃないけど
いつかこう思う事が出来る道なんだ
あの頃はそんな事があったっけなぁ、って
どんなに辛い思い出も
きっと笑い話に出来るかもしれない
それは努力次第だけど
その努力を支えてあげたいと思っているから、さ
だからもう1人で泣かなくていいんだよ
道しるべは誰にでも必要なものだから
「何読んでんの?」
気付かれないようにこっそりとの後ろに周ってそう訪ねる
でも突然の声に驚く風でもなく、
ただこちらを振り向いて読んでいた本を見せてくれた
「えぇと…ドラえもん……?…何これ」
差し出されたのは、
ドラえもんだった
否、その通りなんだけど
いつも見ているのとは何だか違った感じ
「英語版だよ」
「…あぁ!本当だ」
確かに、表紙だけではただ飾られたドラえもんだったけど、
中身を見ればフキダシが全部英語になっていた
「へぇ…こんなのあるんだ、って英語も大丈夫なの?」
「お母さんとお父さんが出会ったのはお互いがイギリスに留学中だったからね」
小さい頃から何度かイギリスにも行ってたから…と
「凄いね、ドイツ語だけじゃなくて英語も平気なんだ」
「…聖だって英語は出来るでしょ」
「まぁ、得意分野だけど…2ヶ国語が使えるのとはまた別問題だって」
「3ヶ国、それともアレか?日本は国じゃないのか」
鋭いツッコミを入れて、勝手に締めくくるが何だか面白かった
本当マイペースだな、って
「何笑ってるの」
「いや…、あ、コーヒー淹れるんなら私のも頂戴」
「嫌だ」
「何でさ、ついででしょ」
「自分のは自分でやれ、阿呆」
……仮にも天下の白薔薇様にそんな事言えるのは君だけだ!
間違いなく
ジッチャンの名にかけて
…誰だ、ジッチャンて
「じゃあ、これもらいっ♪」
「あ」
元の場所に座り込んで再びドラえもんを開いている隙にカップを奪い取った
それに対しても大した反応は見せず見ているだけの
「……間接キッス頂きぃ」
「…馬鹿だろう、お前」
「………」
「…あははっ、何だか最近蓉子と江利子と居る聖が令に見えて仕方ないんだけど!」
「つまりヘタレだと?」
「それ以外に何がある」
「ほら、麗しきのだんでぃな聖さま、とか」
「何処が麗しきのだんでぃ、だ。ボケ」
軽口を叩く私の手からカップを奪い取ると、
睨む素振りをしてみせた
段々2人共それは笑みに変わっていて
気がついたら2人して薔薇の館で爆笑していた
今は、
君は光の道を歩んでいるね
前みたいな茨の道なんて何処にも見当たらない
それは…
少なくとも自惚れだと思われてもいい
でも私達の
私のおかげだなんて思っていい?
だったら、
もっと
苦しみの、
悲しみのない道へ導くよ
この身を呈してでもその壁は私が壊す
だから君はもう二度と
聳え立つ高い壁の前で立ち竦む事はない
手を差し伸べたら、
そっと取ってくれるよね?
next...