人は誰でも孤独を抱えて生きている







常に温かく笑顔で居ると思われている太陽だって、昼間は独り

空の真ん中で日差しを運んでいるだけ





冷たく寂しそうと思われている月の方が実は周りに沢山の仲間が居て
一緒に輝いてくれている








だから、誰が寂しいのか



誰が温かいのかなんて誰にも判別つかない


















私は知っているよ







君が独り寂しく夜を過ごしている事を……


































「あぁ…疲れた……」







帰ってくるなりソファに身体を横たえて呻く彼女に、

服を脱ぐように言うとそんな気力も無いと反抗される



仕方なく哀はソファのサイドに腰を掛けての足を掴んで片足ずつ靴下を脱がせてから
身体全体を包み込んでいる大きなコートを剥がしにかかった










「ご苦労様、ほら身体浮かせて」



「う〜…学校はどうだった?」










が上半身を浮かせている隙にコートも引っこ抜いてソファの背もたれに掛ける

全く、外見はずっと大人なのに手のかかる彼女にはほとほと呆れる

それに反して外見は中学生の私がどうしてこうも面倒を見なくてはいけないのか
哀は自問自答を脳内で繰り返しながらブラウスもボタンを1つ外していく









「別に、毎日同じ事の繰り返しよ」



「それは無いでしょ、折角青春時代をやり直せているのに」



「そうね、じゃあ今日は3人に告白されたわ…」



「ふははっ、相変わらず素晴らしくおモテで」



「そうね、一生懸命告白してくれる彼らは微笑ましいわ」
















そう言うとふと腕を引かれて、のお腹の上に乗る格好になる

そのお陰で服を脱がせられなくなった哀は、迷惑そうに眉を顰めて彼女を見下ろした











「…何?」


「いやぁ、今日も哀は可愛いなぁと思って」


「それはどうも」


「昔の哀を見ているみたいで不思議な感じ」


「そうね、そう言えば私の昔を知っている人ってあまり居ないわ…貴方以外に」


「そりゃあねぇ、あの組織の中で昔からの付き合いなのは私達以外他には無いでしょ」










寝転がったまま哀の茶色い髪をクシャッと撫でる

そんなの手に頭を押し付けるようにするともっと優しく撫でてくれる












「ねぇ、哀は元に戻らないの?」


「…ええ、戻らないわ」


「そっか、じゃあ私達が別れた年に戻るまで後5年か」


「何?戻って欲しいの?元の身体に」


「ん〜、いやぁ…今の哀も十分魅力的だけど大人の君も魅力的だもの」


「あ、そう。18歳の身体を抱きたいのね」


「んな直球な。人が折角言葉を選んでいるのに」


「悪かったわね、幼児体形で」


「そんな事ないよ、胸があまり無いのも新鮮で良い…」








其処まで言いかけたの脇腹を思いっきり抓ると、
顔を顰めて言葉を飲み込んだ


そんな恋人に勝ち誇った笑みを向けると苦笑で返される















全ての戦いが終わって

組織は工藤君との活躍により壊滅して
元の身体に戻る方法を得た工藤君は、元の工藤新一に戻ってあの幼馴染の元へ帰った

けれど私は、それを頑なに断り


今までの事情を知ったごく一部の人々には何故戻らないのかと問い詰められた




私の作った薬により亡くなった人は沢山居る





その罪はこんな事じゃ拭えないかもしれないけれど、
私はそのままで居る人生を選んだ











「あ、そう言えば美和がまた哀の作ったご飯食べたいって言ってたよ」


「あら、旦那さんにご飯作ってあげなくていいのかしら」


「うん、毎日飽きもせずに美味しい美味しい言ってくれるから嬉しいけどたまには人の作ったご飯が食べたいんだって」


「じゃあ今度招待してあげないとね」


「そう言っとく。多分由美もついて来ると思うけど」


「大丈夫よ、それも計算した上でいつも作ってるから」


「さすが、私の嫁さん」


「貴方もちゃんと稼いで来てね。頼りにしているわよ、旦那さん」

















にへらっと笑って敬礼のポーズを取る彼女に、哀は微笑む














哀が組織を抜けた後、も組織を抜け出して

警察関係に潜り込んだ彼女は組織での射撃の腕と頭の切れを利用してあっという間に刑事に上り詰めた




そして小学1年生として密かに暮らしている私を、見つけた時

たまたま工藤君や私達と親しかった佐藤刑事と仕事上で良くペアを組むようになり
今では無二の親友として仲良しになっている












私達が再会した時の事は今でも良く鮮明に覚えている



佐藤刑事経由で私の居場所を知ったは、
それでも私の前に現れて良いものかどうか迷っていてずっと避けていたらしい



けれど佐藤刑事と街を巡回していた時に私達はいつものメンバーで学校からの帰り道で

偶然佐藤刑事に見つかって声をかけられた





私達を顔を合わせないように車の中で息を潜めていたらしいけれど

親友であるを皆に紹介しようと佐藤刑事に車から引き摺り下ろされて



気まずそうに微笑んでいる彼女と、私は久しぶりに会った











『親友の刑事よ、最近この辺りの所轄になって。皆仲良くしてあげてね?』

『…… 、です。宜しく』

















もう2度と会えないと思っていたから余計に

捨てたはずの想いが蘇って来て
私と目も合わせようとしないに飛びついたのは私からだった













!』




『っ……志保…』














佐藤刑事と少年探偵団の皆が驚いた目で見守る中
は恐る恐る小さな私の背に腕を回してくれた

再会の喜びを伝えるためにもっともっと強く抱きしめると、

それに比例するようにしゃがんでから強く抱き返してくれる



筋肉質な腕の力強さに、其れでいて優しくて繊細な腕の中に納まるのが大好きだった事を思い出す





あの頃はもうお姉ちゃんが死んだショックで世の中の全てがどうでも良くなっていたのに


1番近くでこの人が自分を見ていてくれていた事







きっとこの人が居なかったら私はもっと早く自殺でもしていた









やっぱり、が居ないと私は生きていけないんだと


改めて思った日だった








まだ事態を飲み込めないでいる少年探偵団の皆には仲の良かったお姉さんだと告げて

工藤君はやっぱり信じていなかったから
其のまま佐藤刑事の車で博士の家に帰った



送ってくれた佐藤刑事は自分には働かないらしい女の勘で何も言わずにいてくれて

後日ご飯を奢ると言う事でのこの後の仕事に都合をつけてくれる









そして突然の大人の来訪に吃驚している博士と、工藤君を座らせて

隣に居心地悪そうに座るを紹介した






組織に居た頃の幼馴染で恋人だ、とちゃんと







元組織の人間だと言う事で最初は苦い顔をしていた工藤君も
私の恋人だと知ったおかげで気を許してくれた

博士は此処で暮らしてもいいと言ってくれ





今もその博士の家に2人で住ませて貰っている










夜、私の部屋で2人きりになってから私達は離れていた分の隙間を埋めるようにひと時も離れなかった


お互いの耳や額、顔中にキスをしたり触れ合いながら



今は灰原 哀として暮らしている事、

組織を抜け出してから今までの事

工藤君と幼馴染さんの事

少年探偵団の事



全てを最初から説明した








しばらく黙って聞いていて、全て話終えた後




何も言わずに再び強く抱きしめてくれた

そして小さな声で、泣きそうな声で呟く
















『良かった、生きててくれて』





































ずっと不安にさせていたのだと

改めて判って私はどうしようもない気分に陥られた






















「何考えてるの?」


「ん?貴方と会った頃の事を思い出していただけよ」


「ああ…あの頃は毎日が地獄だったのが急に天国に変わって色んな意味で戸惑っていたな」


「それもそうね、突然環境が変わると戸惑うもの」


「でも、幸せだったよ。もちろん、今も」











「愛してるわ、





「私も愛してるよ、哀……志保」




























その名前を呼んでくれるのは、貴方だけよ?


それがどんなに救われている事か




宮野 志保が存在していた事を忘れずに居てくれる人が1人でも居てくれると、

それは誰も居ないよりどんなに心が軽くなるか


















私は、月ね







孤独そうに見えて

実は周りには沢山の人が居るの



本人も知らず知らずのうちに沢山の人々に励まされて輝けているの
















貴方は、太陽かしら?










もともと明るい貴方の周りには沢山の人が居るけど

それでも本当は独りで
独りで寂しさを抱えて生きていたのね






なら、私は貴方に照らして貰って輝ける代わりに



昼間でも








貴方が独りの時は私は傍に居るわ











月だって時々、昼間太陽を見守るように現れるでしょう…?












































fin