1度出会って泣く泣く別れて
そしてもう1度、それも数年もの年月が過ぎた後にまた巡り会えたのは
運命の他に何と言う?
そう、偶然とも言えるかもしれない
けれど偶然なんて言葉は何時でも幾らでも運命という言葉に変えられる
本人がそう思えば、偶然なんて運命になる
だから私達は思うよ
、君と出会えたのは偶然なんかじゃない
運命だったんだ――――
を警察に連れて行くと、直ぐに警察は動いた
最初はまさか目の前の赤ん坊が世間で大事になっている当人だと信じられなかったらしく半信半疑だったけれど
出会った時の状況や場所
そしての腕や足を見せたら慌てふためいて本庁へ連絡したり
私と蓉子を事情聴取し始める
とりあえずは施設送りだろうと教えて貰った後
表で待っていた令の車に乗り込むと
令は複雑そうな顔でが取り残されたであろう警察の建物の中を見やっていた
蓉子はずっと伏せたままで警官の若い男の人に最低必要限の事だけを答えていた
自惚れていると言われてもいいけど、
私と蓉子の人並み外れた外見に薄らと頬を染めている警官達には腹が煮えくり返る
それどころじゃないだろう
私と、蓉子の大切な…
少なくともこの数日で私達にとって大切な存在となったを巡っての話なのに
全く不謹慎な彼らには腸が煮えくり返る
それでももう高校生の頃の私じゃない
嫌だという感情を露骨に出したりしない
蓉子の肩を抱きかかえて最後に一礼してから、
の頭を撫でる
これからの事を全く把握出来ない小さい子どもはきょとん顔で私と蓉子の顔を見比べていた
令の運転するワゴンが走り出すと
少し開いていた窓からあの泣き声がした
車内の後ろの窓から振り返って見ると、年配の警官の腕の中では泣き喚いて暴れていた
私達が離れてからやっと、赤ん坊ながらに現状を把握出来たのか
必死で私達に戻ってきて欲しいと泣き叫ぶ有様に蓉子は耳を塞いでしまう
私も塞ぎたくなったけれど、でも何だか其れはいけない気がしてただ小さくなっていくその姿をいつまでも見つめていた
「なん…か、胸にぽっかり穴が空いた感じだわ」
「うん、あんなに短い時間しか一緒に居なかったのにね」
さよなら、
もうという名前で君を呼ぶ人間は居ないよ
本当の名前はちらりと聞いたけれど
私達にとって君はやっぱりだもの
2年が過ぎた
私達の日常からもうは姿を消していて
居ないのが当たり前の、元の生活に戻っていた
久しぶりに2人揃って休みが貰えて上機嫌だった私達は近所の公園に弁当持参で散歩に出掛ける事にする
あの公園だったけど、今となってはもう気にもならない
特別な出来事があった思い出のある場所以外何物でもない
広い広場が見渡せる場所にあるベンチに2人で座って蓉子の手作りの弁当を頬張っていると
2人を見守るように日差しが私達の上で輝いている
広場で数人の子ども達がサッカーをしていた
「ん〜ピクニック日和だね」
「そうね、こんな日に仕事なんてしていても憂鬱になるだけだわ」
「おわ、仕事マンの蓉子からそんな台詞聞けるとは夢にも思わなかった」
「それにたまには構ってあげないと誰かさんが煩いしね」
「へぇ、そんな人が居るんだ。想われていて羨ましいこった」
食後の一服をしながら空を仰ぐと丁度良い風が頬を撫でる
隣で蓉子は食べ終えた弁当箱を律儀にもきっちり片付けている
微笑し合いながら顔を正面に戻して、拙いサッカーをしている子ども達に目をやった
年齢はまちまちの子ども達が一緒に遊んでいる光景なんてなかなか見れるものじゃない
上は中学生くらいの男の子と女の子、そして1番下はまだ幼稚園児ぐらいじゃないかと思えるくらい小さい女の子
何も会話を交わさずにただ2人でのんびりとしていたら、
ふとその小さな女の子が近寄ってくる
小さいからまだサッカーなど出来ないのか、
それとも興味が無いのか、
少し離れた木陰で草を意味無く毟っていた子だった
トテトテと頼りない足つきで私達の座るベンチの前に来ると
何も言わずに、何もせずに私達を見上げている
「……どうかしたの?」
「皆と一緒に遊ばなくていいの?」
私と蓉子が代わる代わる声をかけると、
その子はジッと見つめていた目を私達から外して手を差し伸ばしてくる
何かとそれを見やると、
その手には先ほど毟っていたであろう草が握られていた
「…くれるの?」
「あら、有難う。素敵なプレゼントね」
その手の下に手の平を広げると、
その子はやはり何も言わずに小さな手をパッと広げた
草がハラハラと手の平に舞う中、私はふと気付く
まだ年端も往かない少女の割には表情の変化が無い
ニコリとも、
何の変化も見せない
そんな口から言葉が紡がれる
「…………うそつき」
「えっ…?」
「……そう思うんなら何故くれるの?」
吃驚している蓉子の隣で、私は上半身を屈めて少女と同じ目線に合わせる
笑顔を崩さないように問いかけてみると
その円らな瞳が私だけを映す
「……………」
今度も問いに答えずに言葉すら発さないで少女は踵を返して子ども達の集っている所へ戻って行ってしまう
よたよたと走るその後ろ姿は何だか初めて会った気がしなくて
急激に胸を締め付けられる
ただ走っているだけなのに頼り気無く左足が石にでも躓いたかのように力を失っていた
その度に体勢を整え直してまた懸命に走り出す
遠くからでも見て判る、その原因は
左足が外側に少しだけ曲がっていた……
「蓉子…私の勘がとんでもない事を告げているんだけど」
「……そうね、私の勘も告げているわ」
私達は、
君に出会った
そしてもう1度夢を見るために
その夢を叶えるために
立ち上がって子ども達が帰っていった小さな建物に足を向ける
”ひまわり孤児院”
あの赤ん坊が預けられたと電話で聞いた、場所だった――――――
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