理屈だらけの世の中で




矛盾だらけの世の中で










本当の想いが伝わるのは、

















ほんの少しの



勇気と、



可能性に賭けるしかないんだ

















そんなのなんだか少しだけ









切ない……























「こんな所に居たのね、…どうかした?」








いつか、隊長達と花火を見たあの屋根の上で、



は寝転がって夜空を見ていた







私は探し回っていた事を知られたくなくて、
荒げていた息を収めてから声をかける




はただ視線だけをこちらに向けてから再び天を仰いだ












「ここまで探しに来たんだから何があったかくらい知っているくせに」















的確な処を突いてくる彼女に私は苦笑を漏らす





そりゃこんな所でたまたま会ったなんて事は無いし、


待ち合わせしたとか、他には探しているという理由以外では来ない場所だから









ぶっきらぼうに喋ったつもりだろうけど


その言い方はなんだか拗ねているみたいで





先程聞かされた事実が微笑ましいものになってきた













なんて事無い、ただの姉弟喧嘩だった














いつもはクールな隊長とだけど



カッとなると見境が付かなくなる所まで似なくてもいいのに…









お互いが斬魄刀に手を掛けた所で見兼ねた卯ノ花隊長が止めてくれたらしい



そして卯ノ花隊長から経緯を聞いてすぐに姿を消したを探しにここまで来た








「聞いたわよ、隊長と喧嘩したんだって?」







彼女の隣に腰掛けて含みのある笑いをしてみせたら、

また不機嫌そうにため息をついた









「隊長だろうと何時になってもアイツは子どもっぽいんだ」




「ふふっ、貴方と同い年なんだから貴方も子どもっぽいって肯定している事になるんじゃない?」









「違うっ!精神の問題だ、精神の!!」










ムキになって否定する所自体が子どもっぽいんじゃない



自覚していないのね



















「はいはい……、で?何で斬り合おうとするまでの喧嘩になったの?」






伸ばしきっている私の両足に、は寝転がったまま寄り添ってきて


私の腰にギュッと抱きついてきた





拗ねている事も自覚ないのかしら…














「桃の事をいい加減割り切れって言っただけなんだ…」








まだ昏睡状態の桃ちゃんをただ黙って見つめているだけの隊長の事を、


は快く思っていなかった









目を覚まして欲しいのなら声を掛ければいい




これは卯ノ花隊長も言っていた事







私もそう思う







誰よりも彼女を想っている隊長が声を掛ければ、
彼女は目を覚ますはずだ







けれど、それを隊長は自分に枷を付けて押し留めている







そんな不甲斐ない弟を強気な姉が快く思うはずがない




これまでだって何度かそれで口論になっていた












「それは無理ね、今の隊長には」





















「判ってる、……判ってるんだ。けど!」







「貴方の気持ちも判らないでは無いわよ、でもね。人間にはどうしても無理な事があるの」












「どうして!?好きなら好きって言えばいい!!目を覚まして再び笑っていて欲しいならそう言えばいい…!それだけじゃないか」



















貴方みたいに想いをそのまま言える人を人間は羨ましく思うでしょうね









でも、


















心と頭は別の物なのよ













心がこうしたいと告げていても



脳がそれを押し留める










だから頭の良い人は無駄に考えすぎると言われるじゃない?


良い例が朽木隊長ね

















「大丈夫よ、隊長も何時までもこのままじゃ居ないわよ」











「……………」























は、いつも隊長の事を『血が繋がってないから』って言うけど」











「……?」





















「でも誰よりも心配しているのよね、隊長の事を」



















貴方も上手く言えないじゃない








想いを口に出来ないじゃない













本当は、



毎日辛そうな顔をしている弟が心配で心配で堪らないって









前みたいに減らず口を叩く自信満々な弟に戻って欲しいって思っているんでしょう?



















「人間て難しいな」






















「だから面白いんじゃない、相手が考えている事が何もかも判ったらつまらないわ」
























だから、人は










その小さな可能性に掛けて










小さな一絞りの勇気を搾り出す













だから、
















想いが伝わった時の喜び程大きいものはないのよ




































fin