「靖ちゃんっ!」

ちゃんっ!」


………


「瞳子っ!」

さま!!」



………



「基子さん!」


さん」



…………






っ!!!!!」



「うおっ、ビビったぁ…」



肩を竦ませて恐る恐るこちらを振り向くに、

私の我慢も限界





「いい加減にして、何故私の家のお手伝いさん達とも打ち解けているのよ」


「何故って…可愛いから?」


「……この女垂らし」




見事なまでにお手伝いさんの中でも女性にしか声をかけない所で男の人を避けているのが判った

女であるにその言葉は合わないけど、


でもちゃんとのために存在する言葉にしか思えない





今日はやっと私の家に誘えたと思ったら、

隅から隅までの女性達に声をかけているだけ



久しぶりに2人で過ごせると思ったら、

お母様や瞳子を呼びつけて一緒に騒ぎ始める始末




私の堪忍袋の緒も頑丈ではなくてよ?






でも鈍さでは令に引けを取らないこの子だから、

そんな私の想いなどお構いなし





「女垂らしで結構」

「何開き直っているのよ、…いつもの事だけど」

「祥子姉ちゃんこそ怖いよ、…いつもの事だけど」




…いい度胸じゃない

いつもは私が怒った時点で怯む、というか令の後ろに隠れるくせに






「いいじゃない、祥子さんも…ちゃんを独り占めするなんてズルいわ」

「そうですよ、祥子お姉さま、私も幼馴染なんですから」

「私も小さい頃から見てきてますからね…」




「お母様も瞳子も基子さんも!は私の幼馴染ではなくて恋人なのですよ!?少しは配慮してくださいませんこと?」


「「「………」」」



「恋人だからって独占権は無いよ、祥子姉ちゃん」




ピキッ


そう、そう来るならね…



私は極上の笑みを基子さんへと向ける




「優さん呼んでいただける?」



「…っ!!!」


突然顔が蒼白になるに、
勝ち誇った笑みを向けてやった


基子さんが良いのかオロオロしていたから早くするように促す




「ちょっ…基子さんっ!?」

「ごめんなさいね、私はお嬢様に仕えている身なものですから」



「うぅっ…靖ちゃん!!」

「あら、優さんは良い人よ?まだ仲悪かったの?」



「……瞳子」

「私も久しぶりに優お兄様にお会いしたいわ」





「………………祥子姉ちゃん」



「何かしら?」




床にこれ以上は無理だと言うくらい頭を沈めて、
が懇願してくる

その顔は今にも泣きそうな切れそうな…




「オネガイシマスカラアノオトコダケハヨバナイデクダサイ」




動揺しまくりなのが見え見えの片言の言葉でそう言う

私はふふっ、と深い笑みを見せた



「じゃあこれから私の部屋へ行って2人きりで過ごすって約束する?」


「…ハイ」



むしろ投げやりになったのか、は明後日の方向を見て自虐的に微笑みがながら頷く

私の勝ちね




「じゃあそうと決まったら行きましょう、お母様と瞳子はここで優さんが来たら相手をして差し上げてくださいね?」


「「…」」

有無を言わせないわ


目を泳がす2人に、念を押す





「間違っても!部屋には来ないで」



「「はいっ」」





「…私何されるの?」


小さな声で呟くに、私はニッコリと微笑んで腕を引いた

目指すは私の部屋



何度か隙をみては逃げ出そうとする彼女の腕は離すまいと掴み続ける






「さて、…」

「はい?」



そこまで怯えなくてもいいじゃない

傷つくわ




「ほら、くれるって言ってた写真見せてくれる?」


「…あぁ!うん、いいよ」

幾分安堵の表情をしてみせてポケットに手を突っ込んだ
やつぱり鞄は持たない主義なのね


のポケットは四次元袋の如く何でも入っていた






「はい、コレ」


そう言って差し出してくれたのは、

いつかの部屋で見た山百合会の人全員が集った写真
どうしても欲しくて焼き増しを頼んだのだ


「やっぱり良い腕をしているわね、ちゃんと全員の笑っている所を撮れているわ」


「うん、一応カメラマン志望だからね」


「あら、そうなの?ふふっ、向いていると思うわ」



「ありがと」



ベッドに腰掛けていた私の隣に座る

自分よりは小さな身体を抱き寄せて、その額にそっと口付けた


擽ったそうに身を捩る






好き、だと伝わるように心を込めてもう一度頬に口付けると、


今度はの方からキスをねだってきた


唇にして欲しいと





だから私はもっともっと心を込めて

唇を唇に重ねる







私の恋人は天然で


我侭で



自己中心だけど






手のかかるほど可愛いって言うじゃない?



だから私は大好きなの、この子が





















fin