「……しょーもないな」



「………ごめんなさい」



















ごきげんよう




佐藤 聖です

知る人ぞ知る白薔薇さまです
…元・白薔薇さまです



こう見えても実は私凄い人気者だったんですよ?
只のセクハラ親父だなんて言っているのは誰かな?

我等アイドルの子狸ちゃんだって私には一目置いてたんです

それくらい凄い人なんです

自分で言うのも何ですけど




土下座をしてる私を見た事がある人なんて世界中探しても存在しないと思います


あ、訂正させて頂きますと目の前に居る人物しか居ないと思います

















「……白薔薇さまの名が泣くね、こんなにしょうも無い人間だったなんて」


「…ちょっと言い過ぎじゃないかな、


「あ?」


「いえ、何でもありません」


「ったく、ド変態」


「せめてもの情けでドは付けないで欲しいかな」


「あ?」


「いえ、何でもありません」



















情けない、そりゃ自分でも判っていますよ


土下座だなんて情けないですもん

しかも相手は2つも年下の後輩






もう白薔薇さまとしての威厳も、

いち先輩としての尊厳も何もあったもんじゃない



そんな物とうの昔に跡形も無く消え去りました










むしろこの子の前では最初からそんな物存在してなかったかのように扱われます
















「誰に説明してんだか知らないけど」


「え?そりゃあ大好きな私のファンの方々に…」


「大方私が悪者みたいに言ってんだろう。プライドのために言っておくが、お前が悪いんだからな」


「ええ、存じております。痛い程に存じております」


「…いきなり部屋に連れ込むなり襲うたぁ、何処生まれの狼だ阿呆!!」


「しいて言えば日本生まれの、絶滅機種のニホンオオカミというものに値します」


「絶滅しろや」


「なっ…酷い……」

















ええ、私が土下座してまで許しを請うとります彼女は裸でベッドの中に隠れております


シーツを被り、頭だけ突き出すその有様は場違いだけど可愛いと思います





……あ、また睨まれました

何やら彼女には人の思考を読み取る力があるようなのでお開きにしておきます



これからは随時、想像でお楽しみ下さい





あでゅう




















「もう2度としないからそろそろ機嫌直して?」


「何回言った、其れ。毎回毎回馬鹿のひとつ覚えか。鶏に劣るな、お前の脳みそは」


「ねぇ、〜。そろそろ足痺れてきたしさ、今後良い方向に検討しますって事で」


「曖昧に答えてやり過ごすズル賢い政治家みたいな事言うな」


「……わっかりました、もう触らなければいいんでしょ!いいよ、もう。が泣いて頼んでも絶対指1本触らないもんね」


「…其れが何時まで続くかな」


「………ごめんなさい、嘘です。無理です、せめて指1本は許し…あ、いや指5本…腕2本は許してください」


「全っ然反省してねぇな、テメェは!!」












は目の前にあった枕を聖に勢い良く投げつける

そして其れを寸前でキャッチした聖に、またしても更に機嫌は悪くなり眉を顰める











「……いいじゃん別に」


「本音が出たな」


「否、だってさ。もう…恋人同士なんでしょ?私達。だったらこういう事するのも承諾済みってな訳じゃない」


「だから、私は……」


「何ではキスするだけでも、手を繋ぐだけでも嫌がるのさ。正直言ってヘコむよ」


「私は只…」












聖が正座を崩して不貞腐れたように言うと、

其れまで頑として譲らなかったが困ったように口を紡ぐ



しばらく聖は部屋の中にあった小さな犬の人形を指先で玩ぶ



するとは頭から布団を被ってしまい、完全にベッドの中へ潜り込んでしまった





そんな恋人の異変に気付いた聖は犬の人形を床に置いてベッドに腕を置く

その腕に顎を置いて布団を観察し始める


















「…ねぇ、ちゃ〜ん」


「………」


「狸寝入りは祐巳ちゃんだけの技だよ」


「………」


「あ、でも祐巳ちゃんは素直だからそんな卑屈な事しないか」


「………」


「じゃあ何だろ、兎寝入り?」


「…何で兎なんだ」


「だって兎ちゃんは大人しく狼さんに食べられちゃうのだよ」


「大人しく食べられなどせんわ。むしろ食べ返す」


「乱暴者の兎だなぁ。でも草食動物の方が案外強いっていうから合っているかもね」
















ぼそりと呟き返したの頭がある辺りを軽くぽんぽんと叩く

すると布団の中でモゾッと動く音がした







聖はベッド上に乗り上げて布団を優しく剥がす



するとバツが悪そうなの顔が現れる


















「何だかんだ言っては私を拒まないでしょ、本当に嫌だったら何が何でも拒む筈だもん」


「…お前が拒む隙も与えないんじゃないか」


「それは、ねぇ。拒まれたら寂しいじゃない」


「お前の頭の中には其れしかないのか」


「……え?」















ふと、の見せた寂しそうな顔に一瞬戸惑ってしまった隙に
腕を引かれて体勢を入れ替えられてしまう



聖の上に馬乗りになったは、

何時もの様に勝ち誇った顔をする訳でもなく



只無表情で見下ろす

















「私とは付き合っているのだからこういう行為はあって当然だと言っただろ」


「…うん?」


「聖は、私をそういう対象としてしか見てないの?」


「………」


「聖は、私を只行為の対象としてしか見てないのか?」


、違う」


「私は、只の性欲解消道具なのかっ!?」


「違うってば!」
















自分の上に乗っているの両頬を叩く様に掴んで止める

そして聖は自分の額にの額を付けるように下ろす













「ふっ…」


、ごめん。君を不安にさせちゃったなら、ごめん」


「この、馬鹿野郎…」


「でも違うよ、断じて違う。私は……が好きだから何時だって君を抱いていたいと思うんだ」


「………」


「其れはおかしい事なの?…好きだったら何時だって一緒に居たいと思わない?」


「………」


「もう、…どうすれば信じてくれるのさ……」












半ば自放棄になったかのように苦笑する聖の上で、の口角が上がる


そして自分の両手を聖の頬に当てて唇を奪う













「んっ……?!」


「抱かせてくれたら信じる」


「ちょっ…まさかっ!?」


「ん?あぁ…もちろん最初から計画済み」














怪しく笑う年下の恋人に、

聖は一気に脱力する









もうされるがままになる





キスされて


自分は一寸の乱れも無かった服を剥がされて


いい様に指先で弄ばれて








絶頂に達した



















拝啓


前略







皆様、年下だからとはいえ曲者が潜んでいる場合があります。

取り扱いにはご注意下さい。

説明書は良く読みましょう。



さもないと、喰われます。



















佐藤 聖


















fin