「………しっ……」
「…………」
「くっ………うわぁっ!」
「…………」
「んのっ!!…っ!」
「…………」
「ああっ!?」
身体が宙を飛ぶ
持ち前の身体能力で地面に激突は免れたけど、
身体中の関節が痛い
着地体勢を持ちえたまま、私は息を切らしながら目の前の人物を睨んだ
そいつはただ苦笑しているだけで、
余裕を見せている
それが余計に悔しくて
私の実力の無さを改めて思い知らされた
「糞!!!」
「…っと」
力を振り絞って再び飛び掛るが、
それも容易くかわされる
こんなんじゃ駄目だ
あの人に追いつけない
は小さい頃から夜一と居るから、
それと同様の力を持っていた
でもそれをあまり公にしない事から夜一のように出世はしていない
コイツを超えないと、
裏切り者の夜一には到底勝てない
勝たないといけない
私の想いを全てをかけて、アイツだけには勝たないといけない
だから…
…っなのに!!
私はコイツの足元にさえ及ばない
その事実がただ悲しくなるだけ
「そんな悔しそうな顔しないでよ」
傍らにしゃがんでが私の肩を叩いた
その優しささえが同情に思えてきて苦しい
……触るな
お願いだから触らないで
泣きそうになるから
「強くなったよ、砕蜂も」
「…っ気休めなど言うな!」
その手を払うと、
少し驚いたようには退くけど
また苦笑してみせるだけだった
「気休めなんかじゃない」
「嘘だ!じゃなきゃそんな余裕で居られるはずがない!!」
「余裕なんかじゃない、砕蜂の成長には目を見張る程だよ」
「………っじゃあ何で勝てない!?」
の胸倉を掴んで詰め寄った
自分より少し高い場所にあるその顔に、
本心を訴える
何を考えている?
本当はどう思っている!?
「本当に強くなってるんだ、砕蜂は。でも…」
私の肩に腕が回された
そっと抱き寄せられて、
の胸に顔を埋める
既に泣いているその顔を見られたくなくて
ただされるがままになった
「でも、私も強くなっているから。だから私達はいつまでも平行線なだけだよ」
「私は!!あの人に近づきたくて人の何倍も修行して来た!」
「……うん」
「あの人に怒りと悲しみをぶちまけるために人の何倍も修行して来た!!」
「…………うん」
「っく…どうして……っ、勝てないんだ?強くなりたいのに」
「知ってるよ、砕蜂が人の何倍も修行して来た事」
「…、お前は……」
「でも私はその砕蜂の何十倍も修行してるから」
…今、何と言った?
人の何倍の私
その私の何十倍?
寝る間も惜しんで修行してきた私だけど、
つまりは寝る間すら作らないで修行してるとでも言うのか?
そんな馬鹿な
そんなはずない
……何でそこまでする必要がある?
私はともかくは…
「守らなきゃいけない人がたくさん居るから…」
「…え?」
「私は昔から人に守られて来てたから。夜一にも守って貰ってた」
「…?」
「だから、今度は私が皆を守らなきゃいけないんだ」
その私が弱かったら意味が無いだろ?
とそう微笑むの顔は、
とても辛そうだった
そうか…コイツは
自分を追い詰めて
追い詰めて
誰より強くなろうとしているのか…
「馬鹿だな、お前は」
「え?」
の両頬を掴んで、俯かせた
私と目が合うように…
「お前は私が守るさ、だから…」
「砕蜂…」
「そんな泣きそうな顔をしてまで言う事じゃないだろ?」
ふわりと抱きしめられた
私の肩口に顔を埋めて黙り込む
震えている身体を包み込むように抱き返す
「何もかも1人で背負い込むな」
「…うん」
「誰かを守りたいって気持ちがあるから人は強くなれるんだから」
「……」
「その気持ちは大切だぞ?皆だってお前を守ってやりたいって思っているから強いんだ」
「…っ」
「だから皆強いんだ、お前よりも…」
「………」
「お前はただ自分に課せられた仕事だと思っているだけだろう?」
「……」
「でも皆は…お前を守ってあげたいと思っているから」
だから強いんだ、と
皆に大切に思われているお前が羨ましい
夜一でさえお前の事は大切に、
大切に想っているのがわかった
私は、違うから
お前みたいに気が利く訳でもないし
お前みたいに綺麗な訳でもないし
お前みたいに常に周りに人が居るような人間じゃない
そんな私の思考が判ったのか、
は更に強く抱きついてきた
「砕蜂は私が守るよ」
守りたい
守られたい
それはきっと紙一重のものなんだろう
fin