「……ねぇ、人権の損害って知ってる?」









「知ってるわ」









「じゃあさ、プライバシーの侵害って知ってる?」









「あのさぁ、。私達の事馬鹿にしてる?」









「こっちが聞いてんの!!!」









「知ってるわよ、それがどうかしたの?」
























「…はぁ、アンタ達がしてる事は正にそれなんですけどね」













目の前に居る江利子、聖、蓉子にため息を大げさについてみせるものの

効果は全く無く


そりゃこの人達だから意味無いのは判ってるけど…








さすがにこんな物まで出されちゃ黙ってられない









「…何処でこんなん手にいれたの?」






私の机に置かれている1枚の写真を眺めながら、

何故か1年生の教室に来てまで寛いでいる薔薇様方とやらを見やる





3人共楽しそうに笑った






あぁ、もう…教室中が落ち着かないじゃないか

学校中で敬られているアンタ達が集まってたらさ、
周りの目を引きまくりじゃんよ





頬を赤らめている子達にサービス精神旺盛で手を振り返す聖

全く興味が無いのか私だけを見つめてほくそ笑んでいる江利子

聖程じゃないけれど、周りでそわそわしている女の子達に微笑みかける蓉子









…やめてくれ





















「で!何処で手に入れたのか聞いてんの」




「「「令を脅したらすぐにくれたわよ」」」





「…あんの男女ぁっ」








ハモって答えた3人の前で

頭を机に突っ伏して唸る




急激に目の前になった写真は小さい頃の私が映っていた



令ちゃんと由乃と3人で公園で砂場遊びをしている処


確か、由乃のお母さんと令のお母さんが居て

その時に撮られたものだと思う





だってこの私、砂で作って固めた山にトンネルを通す事に夢中だったから、

気付いていないんだよ、撮られているって事
令ちゃんと由乃はばっちりカメラ目線で笑っているけど











「で、何が望みだ。脅迫してみろ」


「あら、心外ね。脅迫なんてする気さらさら無いわよ」



「私が小さい頃の写真を人に見られたくないって事知ってんだろ」


「そうだったの?あ〜、そういえば令がそんな事言ってたような…」


「ふふふっ、前に貴方の小さい頃の写真とかが競りに出された事があるんだって?」


「……白々しい…」


「まぁいいじゃない、ちょっと私達のお願いを聞いてくれれば良いのよ」


「そうそう」


「それだけの事よ」













「………お前等地獄に堕ちろ」














「「「何か言った?」」」






「い〜えっ、何でも」
















嘘臭い笑顔を向けると、


3人ともまた嘘臭い笑顔を返してきた





多分事情を知らない者には、和やかな光景に見えるかもしれないけれど


事情を知る者の目には、

その間に火花が散ってんだろうな…



















「…イマ、ナンテオッシャリマシタ?」





「日本語下手な外国人みたいなアクセントで喋らないでよ」




「ワタクシニホンゴワカリマセ〜ン」








真顔でそう言うと、
蓉子と聖が小さくふき出して笑い出した


江利子が面白くなさそうに対応してくる









「だから、私達全員を堕としてみなさいって言ってるの」



「堕とすって何処に?あ、地獄ね。祐巳ちゃんは無理です」



「…何でそこに私達が入ってないの」




「え?だって江利子達は言うまでも無く、その他は…ねぇ?まともなのは祐巳ちゃんだけだよね?」










たまたま隣を通りかかったクラスメートに振ってみると、

吃驚された


心なしか、顔が赤いのは聖が私の前にある彼女の席に座っているからだろう




しばらく反応が返って来ないから、
とりあえず切り上げようとちょっと微笑んで、再び目の前の3人に目を戻す









「「「…女垂らし」」」


「…は?何、突然?」




「「「…………」」」






「それにさぁ、その女垂らしに自分達を落とせって頼むのは筋違いじゃないっスか」










左手で肘杖をついて
右手で手にしていたペン先でコツコツと机に叩きつけながら言うと





聖がニコリ、と微笑む











「手っ取り早く言えば私達賭けしてんだよね」




「賭け?」





「そう、に堕とされるか堕とされないか」





「…なんちゅう事を……」






「もちろん、皆同意してくれたよ。参加する事に」






「それで?賭けの対象は?」




















「この写真含めて数枚ののお宝写真」














の机にあった写真をピラピラを見せながら、


不敵に笑う薔薇3人











「…うっそ……なに、そのお宝って…」








「え〜?の昼寝シーンとか寝起きシーンとかあわよくば入浴シーンまでも」

「極めつけはヘルメットを脱いだ時の写真よ」









「……お前らどっからそんなもん入手してきたんだ…しかも最後のは何だ最後のは」










「ふふふっ、ヘルメットを脱いだ時は髪が少し乱れていてため息も必ずつくでしょう?」


「それがまた色気があってセクシーなんだよねぇ」












「…かんっぺきプライバシー侵害じゃねぇか。盗撮だろ、それらって!!」

















「この写真、その他が私達のうち誰かに渡って欲しくなかったら取り返す事ね」













蓉子の発言に、顔を向けると


彼女は静かに妖しい笑みを浮かべていた











「貴方が私達全員を堕とせばこの写真は手元に返るのよ?」







「…つまり何が何でもやれ、と」








「簡潔に言えばそうなるわ」














「……判りました」



































「れぇいぃっっ!!!??????」





薔薇の館に着くなり、令に掴みかかると

令は苦笑で返す







「ごめんっ!ごめん、ホントごめん!!!お姉さま方に詰め寄られてさ…」





「…っはぁ……いいよ、私だって結果的にはあの3人には逆らえないし…」







見渡せば、苦笑している皆

…3薔薇以外




首に手をやって、ポキポキと鳴らすと1つため息をつく











「で?堕とせば良い訳?」






「さぁ、いらっしゃい」










いらっしゃいって何だよ、いらっしゃいって…





両手を広げて楽しそうに笑う聖に一気に脱力する


こうなったら早いとこ終わらせるしかない






まずは、机の1番右側に固まって座っている1年生トリオ



わくわくしているのか、目が光っている由乃

どうすればいいのか困っている祐巳

何事も流れに任せる雰囲気の志摩子







彼女たちに近付くと、1番最初に牽制の笑みを向けた







「…私に堕とされない自信があるの?」









「「「ないわ(よ)」」」








……じゃあ何でこの賭けに参加したんだよ



あぁ、写真目当てか





…何のために?



学校内で売りさばくつもりか?





じゃあ何としても阻止しないと













まずは、祐巳の隣に立つと

不安そうに見上げてくる彼女と目が合った



目の前に手をついて顔を覗き込む







「ね、祐巳」


「なっ、ななな何かなっ!?」










動揺しているのがまる判りの反応を見せる祐巳に笑みがこぼれた


口元を押さえながらくくくっと笑う








「祐巳、か〜わい〜っ」



「っな…そんっ、そんな事ないよっ!?ちゃんの方が可愛いよ!」



「ううん、祐巳には敵わないよ」









それとだけ言うと、

その耳元に唇を近づけた



それだけで全身を強張らせるのが判って、面白い









「祐巳…君は最高だ」









とどめは、耳に息をふぅっと吹きかける事











「っっっっ!!!!!!!????」













福沢祐巳、堕ちたり






「終わり」






「記録は13秒、さすがね…」


「湊さんの所でたくさんの女性相手してただけあるわ」


「…何か…気にいらない」






舌を出して左手で祐巳を指して皆に見せると、

真っ赤にした祐巳を見て3薔薇のそれぞれの反応が窺えた





つぅか聖、気にいらないならこんな事持ちかけんなよ



最初っから…











「志摩子」




「何かしら?」







うぅむ、やはりこの人は侮れない

さて



どうしたもんか








指を志摩子の柔らかい髪に絡ませながら

その綺麗な顔を見つめる


いつもと変わらない、平然とした態度に少し苦笑した







「志摩子さ、クールだよね」


さん程じゃないわ、貴方程口数の少ない人はなかなか居ないんじゃないかしら」


「そう?至って普通なんだけどなぁ」


「ふふっ、その無意識な処が皆惹かれる要素の1つなのね」


「惹かれてもなぁ」







髪を弄る手はそのままで、

志摩子と会話をしていると何だかこっちがかき乱されそうだった


本領発揮



行きますか!








「でもさ、その志摩子の心を全て覗きたいと思うのは私だけだよ」



「あら、覗いてどうするの?」







「そりゃもちろん、志摩子の全てを愛したいから。身も心も、骨の髄まで」
















「…参りましたわ」

















よっしゃ!



藤堂志摩子、堕ちたり





つぅか頬を赤らめて俯く志摩子が新鮮…
なんて言うか、可愛いじゃん




思わずガッツポーズをしてみせると、



部屋内の至る処から視線を感じた








「…あのさ、これってこういうゲームなんだからしょうがないよね?ねぇ」







特定の誰かに言うでもなく、

見回しながら問いかけると



身体中に感じられていた視線の山が一気に消えた





というか、皆何処かしらに目をやっただけだけど



不満は消えてないようだった












「言っとくけど!私は簡単には堕ちないわよ!?」






背後からした声に、最後の1年生トリオが居たと気付く


でも今度は自信あり




勝ち誇った笑みをやると、由乃は何事かと眉を顰めた








「由乃、大好きだよ」




「っ……!!?」









手段はそれだけ



そう言って、頬にキスをすれば








はい、終わり











島津由乃、堕ちたり
















「…瞬殺とはまさにこの事ね」



「まぁ、と由乃ちゃんは小さい頃から居るんだから相手の弱点を知っててもおかしくはないか」



「令、簡単に堕ちるんじゃないわよ」






江利子に念を押された令は、

ちらりとを見てから



肩を大袈裟に落して深いため息をついた 












……自信ないから

令は最初から






だから、仕方ない











「…祥子姉ちゃん」


「な、何?」


「ね、ね、今日泊まりに行ってもいい?」


「え?あ、ええ、いいわよ」










いつも泊まりに行ってるから、祥子姉ちゃんは快く承諾してくれる







けれど、まさかこの場で言われると思ってなかったのか最初は驚いてた




しかしすぐに微笑みながら頷いてくれる





残念、ここからだよ



私のホストテクニックはここから本領発揮なんだよ












「じゃ、一緒に寝ていい?」



「もちろん、いつもの事じゃないの」













(えぇっ!?祥子とってそんな事してるの!!??)

(抜け駆けは許さないわよ)

(幼少時代の幼馴染ってポジションは得よね、お風呂も一緒に入れるだろうし)

(あの…祥子が…まさか、ねぇ……あはは…)








…なんか、後ろが煩いけど……邪魔しないでくれるかな








「じゃ、寝る前にキスしてくれる?」



「もちろん」









一気に背後の騒音が大きいものに変わった


…うっさい、お前等



静かにしろと伝わるように笑顔を向けてから、

再び祥子に向き直る










「じゃあ、ギュッとしてくれる?」



「ふふっ、甘えん坊ね…いいわよ」










嬉しそうに笑う祥子姉ちゃんはとても綺麗だった

祐巳が見惚れている



相変わらずここの姉妹は姉馬鹿と妹馬鹿で成り立ってんな…




















「そこまでしてくれるなら、私我慢できないよ?今夜は寝かせないからね」












極上の笑顔で



言い切ると最初はキョトンとしていた祥子の顔がだんだん赤く染まっていく








小笠原祥子、堕ちたり








なんか…もうここまでトントン拍子に上手く行くとさ、


ピースサイン出したくなるよ




さてと、次は、と








令ちゃんの方に顔を向けると


今までとは違って令ちゃんの方から声をかけてきた








「…ねぇ、?」



「え?あ、ん?何?」







少し俯き加減だから、何だか暗い

令ちゃんの隣に立ったまま、その顔を覗き込むと


避けるようにふいっと逸らされてしまった








「何だよ?」


「………本当?」



「な〜に〜が〜っ?」





「祥子と…その……いつも…」














「………」








ぷっ






あはははっ











令ちゃん真剣に悩んでるよ




祥子姉ちゃんの家に行くのは、月の終わりで食費とかヤバイ時だから

靖ちゃんがいつでもおいでって言ってくれるから行くだけでさ



キスするのはお母さんとの生活の習慣が身に染まっているから寝る前にするんだって



抱きしめて貰うってのは…まぁ祥子姉ちゃんだけじゃないし




蓉子にも

聖にも

江利子にも



して貰ってる事じゃん?




令ちゃんだってしてくれるじゃん








「くっくっくっくっ…」




声を抑えて、笑っちゃ悪いというように笑うと、

令ちゃんが不満気に見上げてきた








「何が可笑しいの?」




「いや、ね」





「?」













…………あ、そういえばこれって賭けしてたんじゃん



危ね、危ねっ、忘れるとこだった








心底可笑しかったのを堪えて、


ニッコリと優雅な笑みに持ち変える









「じゃ、令ちゃんが相手になってくれる?気持ちいい事しよっか」









「………っ!!!???」






ボンッ


あ、お湯が沸かせそう



漫画だったら頭の上にヤカンを置いて、それがピーッと鳴るんだよね








ま、なにはともあれ






支倉令、堕ちたり




















……………ふっふっふっふっ…









最後はやっぱりアンタ達しか居ないでしょうよ



ニヤリと3人を見下ろして笑うと、

3人共苦笑する





ここまで上手くいくとは思ってなかったのだろうか

3人ともヤバイというようにそれぞれの視線が宙を彷徨っていた











…逃がさないよ?













「聖?」




「…何だい?」




「蓉子?」




「…何かしら?」





「江利子?」





「…何よ?」












3人の名前を呼び、それぞれの視線を自分へと向ける

警戒しているのか



3人共珍しくただ黙って私を見ていた

















「ね?交換条件出さない?」






「「「はぁ?」」」











ここまで来て何を言うのか、と聖と蓉子と江利子は眉を顰める



けれど、私は怯む事なく人差し指をちっちっちっと振ってみせた













「もし写真を返してくれるのなら、キスしてあげるよ。もちろん3人共好きな場所に」





「「「っ!!?」」」










「ちょ、ちょっと!!ずるいわよ、!3人にだけ!!」


「そりゃ無いよ、






従姉妹の2人が制止を振りかけてきたけれど


それどころじゃないのだ









「どうする?」






「…それは、オイシイかも……」


「そうね、こんなチャンスは2度と無いだろうし」


「じゃあ2人ともそれでいいわね?」





「「了解」」







蓉子の問いに、聖と江利子は片手をあげる


思わず顔を満面の笑みが支配した











「じゃ、聖は何所がいいの?」




「ここ〜」







語尾にハートマークが付きそうなくらいご機嫌な顔で、

聖は自分の額を指した







「……そんな所でいいの?もっとさ、こう…」






何だか謙虚ささえ見え隠れする要求に、

私は首を傾げて聖に近付くと、その首筋に顔を埋める






「っ!?」





小さな音を立てて唇が聖のうなじから離れる時についでにペロリと舐め上げると



顔を真っ赤にした聖が出来上がり


自分の首筋を押さえて俯いている聖を見ると何だか普段の白薔薇様の威勢が欠片も見えない







軽くぽんぽん、と聖の頭を撫でてから

くるりと蓉子を振り返る







「蓉子は?」






「っ……わ、私は頬っぺたでいいわよ」






「蓉子も遠慮しなくていいのにさ〜、例えばこことか弱いでしょ」











近付くだけで緊張からか、ビクリと身体を振るわせる蓉子



にっこりと微笑んだままその耳元へ唇を近づけると

そっと口付ける





「っっ!!」






聖と同じように離れていく瞬間に1度だけぺろりと耳の中を舐めると


蓉子も顔を真っ赤にさせて俯いてしまった






軽く頬を撫でてあげると、困ったように顔を赤らめて笑う蓉子と目が合う














「江利子」




「ええ、いいわよ」







「…何が?」












「いらっしゃい」












他の2人とは対照的に堂々としている江利子を訝しげに思いながらも、

誘われるままに江利子の側へ寄ると



いきなり顔を両手で掴まれる





「なっ…!」


「黙って」





それとだけ言うと、江利子の唇が私の口元へ近づいて来る




今までのようなキスとは違って、それは恋人同士がするもの

合わされた唇の間から誘うように舌がやってきて唇を舐めてまた離れていく


だからついつい追いかけるようにこちらから舌を差し伸ばすと




待ち構えていたように隠れていた舌に迎えられて、


お互いを求めるように音を立てて舌を絡めあう





「んっ、…ふぁ……っ……ん…」





色っぽい声を出しながら私の動きに応える江利子は、

とても綺麗で




薄目を開けて覗くと少し高揚したその顔が見れた






なんか…ヤバイ……



私こんなに盛ってたっけ?



うわぁ…

















どれくらいの時間が流れたのだろうか



ふと気付いた時には、首になんらかの感触があって


それによって江利子と引き剥がされた











「ぐえっ!?」




力強いものに首を思いっきり引っ張られて蛙が潰れたような声が出る

江利子の方も首を掴まれたらしく、軽く堰をしていた




江利子と2人で、それぞれを掴んで引っ張った犯人を見やる





江利子には、聖が



私には、蓉子が







それぞれ非常にご立腹なようで…






思わず引きつってしまう












「えぇと…蓉子、さん?どうしました?」



「………」










首元の制服を掴んでいた腕が首に回される


そして蓉子は何も言わずに私を抱きすくめた







「………蓉子〜…」






とりあえず呼びかけても反応が無いし、

この体勢だと蓉子の顔色は窺えないし



このままでいよう


その方が無難だ…










「けほっ、…何するのよ。聖」





江利子の首を掴んでいた聖は、蓉子みたいに江利子に抱きつく訳でもなく


…つぅかそんな事する訳ないんだろうけど、この犬猿の仲の2人がさ






「それ以上はこんな所でやっちゃ駄目でしょ、まだ純粋な子達も居るのに」



「あら、…祐巳ちゃん顔真っ赤ね。さっきより…」





「っていうかねぇ、……私のに何してんだコラァッ!!!」







あ、蓉子と同じく両腕を首に回した!…と思ったら

聖は江利子の首を締め始める



本気では無いらしく、江利子も顔も平然としては居るけれど





……怖いよ、アンタ等







ってかいつの間にお前の物になったよ、オイ


こっちが『コラ』だよ、オメェ













「あ、まぁ…さぁ、とりあえず……写真返してくれません?」







背後に居る蓉子に手を差し伸べるとぺしっと叩かれる




「痛い」



「………」




「蓉子〜……蓉子さん?もしもし?」




「………」





「起きてる?」




「………」






「生きてる?」






「生きてなかったら動かないわよ」






「だぁよねぇ、あはは」











とりあえず無表情で乾いた笑いをすると、


その場の空気が異常に冷たいことに気付いた







ふと辺りを見回すと





全員という全員が冷た〜い目で睨んでくる









「えっ?何っ?えっ?!」








わざとらしく両手を上げてアイドルのようなリアクションを取ってみると


またしても頭を叩かれた









「痛いよぉん」





再度演技をしてみると、


上から降って来る手を今度は受け止める





蓉子の手を握ったまま、首だけ後ろにやって


文句を言う








「痛いんですけど」





「デリカシーの無い人は嫌いよ」





「あ、はい。すみません」





「だから、写真も渡さないわ」







「……契約違反じゃないスか」








がっくりとうな垂れると、


祥子姉ちゃんが痛いくらいに大きなため息をつくのが見えた



令ちゃんなんて黙って紅茶を啜っている





1年生トリオは僅かに赤らめている顔をあちこちに持っていって、

なんとかこちらを見ないようにしているけど




…ウブだなぁ




まぁ、だから可愛いんだけどねぇ












「あんな事自体契約違反だもの」


「あんな事って…ディー…だっ…」







3度目の鞭







…痛いよ、マジで











「はぁ…じゃあどうしたら返してくれるんですか」





「…そうね、出張ホストなんてのはどう?」






「さも当たり前のように言ってるけどさ、…いやいや、それって100%私食われるよね?」








平然ととんでもない事を口走る蓉子に

顔は見えないけれどツッコんでみる






「大丈夫よ、私が食べられてあげるわ」




「………頭大丈夫?」




「ええ、至って良好よ」





「…………」














ねぇ




…ねぇ?





私さ、とんでもない事になってるよね?









何、食う食われるって






いつの間にそんな話になってんの








ホストってそこまですんの?


…あ、すんのか……












「じゃ、私も1つ宜しくね」



「…佐藤聖、ご予約入りましたぁ……」



「もちろん私もでしょうね?」



「………鳥居江利子、ご予約…入りましたぁ…」













もういいよ


この際



だって本人達が承諾してんだから、

浮気とかそういうのは無いだろうし…







開き直って、

黙っている他のメンバー達に呼びかける






「祐巳は?」



「えっ?」




「予約します?」





「えぇっ!!??あ…出来れば…、その…如何わしいのはナシで普通に遊びに来て欲しいな…」




「あいよ、ご休息サービスは無しで。福沢祐巳、ご予約入りましたぁ」




「ごっごごごご休息って何言ってんのっ!?ちゃんの馬鹿ぁ!!」







「はいはい、で志摩子は?」




「1度お茶でも飲みに来てくださいな」





「あ〜い、藤堂志摩子、ご予約ぅ」





「……私は、その…どちらでも構わないわよ?」





「じゃあ成り行きで〜。で、由乃」




「私はもちろんご休息で!!」




「……はいよ、頑張りま…す……。祥子姉ちゃんは?」





「…はぁ……私は遠慮しておくわ。普通に泊まりにいらっしゃい」




「ふぅん、勿体無いねぇ」





「もっ、勿体無いって何よ!?」





「ま、そゆことで。今度飯宜しく。令ちゃんは?」





「…はは………、ね?普通に…あの、ケーキでも食べにおいで?」





「やたっ。んで、蓉子と聖と江利子は予約済み、と…」





「ええ」

「うん、楽しみにしてるよ〜」

「寝かせないわよ?」















……………










「ってぶぁあっか!!馬鹿か、オメェ等!んな事する訳ゃねぇだろ!殺されるわぃ、オメェ等のファンに」








よしっ!!!



言ってやった!!




言ってやった、と!!!!








よし!!!!!!



私のプライドも威厳もまだまだ消えてねぇぞ!!











「…じゃあこの写真奪還は放棄って事ね。はい、皆、山分けよ」





「え?」




いつの間にか離れていた蓉子


何所から取り出したのか、蓉子は数枚の写真を1枚1枚皆に配ってく


受け取ったそれぞれの人達は嬉しそうに、

または少し顔を赤らめてその写真を大事そうに眺めていた







「おぉいっ!!ちょっと待てっ!何だソレは!!!」






少なくとも、3薔薇以外は契約通り堕とした筈なのに…

どうして目的達成できた人達まで貰ってんだ!?






最後に、手元に残った1枚を大切そうに胸に抱いて、


蓉子が振り返って言う









「それぞれ1枚1枚取り戻したかったら最初から1人1人口説いてみるのね」














…最初から?



しかも皆既に賞品を手にしているからなかなか手放してくれないだろう













嘘ぉっ








悪魔だって!!






悪魔だよ、アンタ等…
















そういう訳で

いろんな意味で史上最低な1日となったのだった

























fin