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最近何処か、織姫が余所余所しい


前みたいにいつも笑っている事がなくなったし


明るさが取り得なのに、塞ぎこむ事が多くなった








何よりも、鳴と目を合わせなくなった












千鶴もその変化に気付いているみたいで、
鳴と一緒に織姫に絡むことも無くなった…

















そして、私のもう1人の大切な人










鳴も、

元気が無い















私は、誰かを忘れている気がする






記憶の片隅で


顔は思い出せないけれど



その人はいつも鳴と仲良さそうに一緒に居た






その影にはボヤかかっている










……誰なんだ














その人のせいで鳴も織姫も、一護もオカシイの?























「なぁ、たつき」





「…何だよ?」









「忘れちゃった?」














隣を見ると、彼女はフェンスに掴まって空を仰いでいた




そのまま目を離したらどこか消えてしまいそうで

そっとその制服のシャツを掴む













「何、を?」









「…ん、いや。何でもない、忘れて」















「…変だよ、お前」













「ふふっ、変なのはどっちさ」

















私の手首を掴んで、

自分の頬へ運びながら鳴はこっちを見る



でもその笑顔は何だかとても悲しかった





何かに耐えているみたいで


















「なぁ、たつき。私さ、しばらく居なくなるけど…良いよね?」






「居なくなるって…」











また、空が私達を押し留めるように


風が吹く







でも鳴の目は遥か遠くを見つめていた














此処には無い、誰かを求めて



















「ん…すぐ戻るよ。大切な人が私を待っている」









「……私より大切な人なの?」






「えっ?」













判ってる


子ども染みた事言っているのは






でも、やっとコイツと近づけたのに再び離れる事になりそうだったから











きょとん、と私を見つめる灰色の瞳が切ない
















「…ふふっ、たつきとは意味が違うよ。だってアイツは悪友だもん」






「………答えになってない」











「だからさ、たつきは恋人…でしょ?」




















真っ直ぐそういう事が言えるコイツが、今更ながらに恥ずかしい


真っ赤に染まりつつある顔を見られたくなくて





反らすと










押さえ気味の笑い声が聞こえた
































「大丈夫、すぐ戻るよ…ただその時はボロボロかもしれない」







だからいつもと同じように接してよ



それが私の元気の源だからさ









































そう言って







一護と


織姫と



チャドと




石田と
















消えた

















夏休みの気だるい空気の中で、

誰もが知らない出来事









それは…私も知らない


































『たつき』









アイツの声が聞こえた気がして

窓の外を見る









でも真夏の風が渦巻く町が見えるだけで






アイツは、居ない












冷房の効いた部屋で、世界中の生徒達の天敵である課題に向き直る





数学の課題も、

古典の課題も、


頭が働いてくれない





髪の毛を掻き毟る











くそっ、アイツめ…






















『たつきぃ』








あぁ、また空耳だ



アイツがへらへら笑っている

でもアイツは居ない











『たつきの馬鹿』





煩いな


それはお前が織姫に如何わしい事言うからだろ














『開けてってば』











何をだよ


















「…………ってえぇっ!!??」










再び勢い良く窓を見ると、


へらへら笑ったいつものアイツが居た








「ちょっ…お前こんな所で何してんだよ!っていうかここ2階……」




叫びながらも慌てて窓枠に飛び付いてそれを開ける

鳴は2階へと続くパイプをよじ登っていた





「さっきから呼んでんのに気付いてくれないんだもんなぁ」





開けるなり、私に抱きついてくる

勢い余ってベッドになだれ込むと、嬉しそうに顔を上げてニッコリと笑う






「ただいま、たつき」






視界が涙で滲んだ


アイツの顔がボヤけて見えない




こんなにも会いたかったのに、

いつもと変わらない様子で拍子抜けしてしまう











「おかえり」




「ん、ただいま。たつき」















頭上から降ってくるキスを受け止めながら、









鳴が今確かに此処にいる事を確かめたくてギュッと抱きしめ返す















会いたくて






会いたくて
















貴方に会いたくて















貴方がとても愛しい




















「…で、何でお前はどさくさに紛れて私の服を脱がせようとしているんだ」


「え~、久しぶりだしさぁ。こう…ご無沙汰な訳だし……という訳で、ね?」



「何が『ね?』だ!!お前の脳みそはそれしか無いんか!!」



「痛い痛い痛い痛いっっっ!!!!ボディブローはキツイって!ギブギブギブ!!」



























日常が、







還ってきた

















fin