「蓉子さぁ、……何でそんな優しいの?」




「…何よ、唐突に」














1つ年上の、

でも何処か頼りなさ気の恋人に




蓉子はレポートに向けていた目を外した














「だっていくら私が迷惑かけてもちゃんと面倒見てくれるじゃない?」




「……迷惑かけている自覚あるのならもう少しちゃんとして欲しいのだけど」




「無理。だって蓉子が困っている姿可愛いんだも〜ん」




「………」
















いつものやり取りになりそうな気がして蓉子は再びレポートに目をやる



ぼすっ




鈍い音を立てて背中に感じる重量に、少しムカッときた


椅子を回して、枕を拾うと投げ返すと

ケラケラ笑いながらさんはそれを受け止める










「何するのよ」



「だって照れちゃった蓉子がまたまた可愛くてさぁ」



「照れてないわよ、無視しているの」



「無視しちゃう程恥ずかしかったんだよね?」




「…勝手にそう思ってなさいよ」








再びレポートに目をやると、


またしても背後に鈍い感触




痛くないのはさんの優しさ

痛くないように弱く投げてくれるから









「…いい加減にしてくれないかしら?そう言いながら迷惑かけているって判ってる?」



「あははっ……あ痛っ…」






今度は顔に当たるように少し強めに投げると、

間抜けな声を出して顔面キャッチをしてみせた






顔が少し赤くなっていて、思わず噴き出す










「ぷっ、ふふふ、凄い顔しているわよ」



「ワタクシの見解によりますと蓉子のせいだと思われます」




「そうね、悪かったわ」




「謝るなら、慰めてください」




「え?」





「ほら、こうして痛いの痛いの飛んでけ〜って」









自分の鼻先を擦りながら小さい頃良く母親にやって貰っていた仕草をするさんに、


ため息を1つ吐く









手を引かれて、促されるままにベッドの上に片膝を乗せる



胡座をかいて座っている彼女の膝に横向きに座り込むと腰に手を回された

それに応えるように首に腕を回すと、
急速に2人の距離が縮まった










「だからさ、蓉子は優しいじゃん?」



「…優しかったら痛くないように投げるわよ、貴方みたいに」



「ま、あれは照れ隠しから来る物だから許す」



「悪魔でも照れ隠しと言い切るのね」



「まぁまぁ、いいじゃん。だからさ〜、蓉子はさ〜、優しいじゃないか」



「…そういう事にしとくわ」



「つまり隙が無いじゃない?誰にでも優しいから弱さを見せないでしょ」




「そう、かしら?」












軽く口付けを交わす


じゃれるような口付け






それだけでも私は潤うのよ
















「たまには甘えて欲しいな〜なんて思ったり思わなかったり」



「どっちよ」





「んあぁっ!思う訳よ!思うの!!」







「ふふ、そうね…じゃあもう1回キスして」









「…承りました、女王様」











女王って何よ、というツッコミは心の中に閉まって置く

訪れる優しい口付けに目を細めて



綺麗な顔を盗み見ながら何度か啄ばむ口付けを堪能すると、

再び出来た僅かな距離









「ギュッ、として」



「はい、女王様」








「……」














背中に回る温かい腕


強すぎず弱すぎず丁度欲しいと思う力加減で抱きしめてくれるから







貴方の優しい処が好きなのよ









優柔不断と言う人も居るけれど


私はそうは思わないわ









優しさは貴方が誇って良い1つの特技よ











でもね、






貴方の嫌いな処が1つあるの


























…すぐに調子に乗る処

















「誰も抱いて、とは言ってないわよ」





「え?そうだっけ?言ってない?ん〜、まぁいいじゃない」









ブラウスの中に進入しようとしていた手を掴んで睨むと、

わざとらしく惚けてみせるさんに何度目か判らないため息が漏れる









「良くないわよ、昼間から嫌よ」







「気にしない気にしない」




















再び進入を開始する手に、

諦めて掴んでいた手を離す













貴方の恋人だっていう事を考慮し直さないといけないのかしら




























fin