朝起きて1日の始まりにする事

まず自分の横にまだ寝ている彼女の姿を確認してから


重たい身体を何とか起こす





もちろんまだ熟睡中の恋人を起こさないようにそっと







それから、ベッドの脇に落ちている自分のYシャツを拾って軽く羽織る



ベッドの周りに2人分の服が散らばっているのを見て昨夜の行為の激しさを思い出した

自分で勝手に思い出したくせに自分で恥ずかしくなっているんだから理不尽な事この上無い





2人分の衣類を拾い集めて、そっと寝室を出る










洗面所に着くとそれを洗濯機に投げ込み、私はシャワーを浴びた


ノズルを捻ると最初は水が出てきたけれど次第に丁度良い温度のお湯が出てきて、

目を瞑りながら顔からお湯を浴びる





さて、今日も服を着て仕事に行く前に大事な事がある





寝室にある全身鏡で自分の身体をチェックする事


大してよくチェックをしないまま肩の肌蹴た服を着て出勤してしまうととんでも無い事になるのだ

それは我侭な年下の恋人の付ける印




事務所の秘書の子に顔を赤らめて指摘された日にはもう慌てて室内でもコートを羽織る羽目になった事があったから




もうあんなヘマはすまい、と誓って


今日もキスマークのチェック



力強く念を押したおかげで肌蹴る部分には付けなくなったけれど、

気を抜いたらいつも首筋やらよりにもよって目立つ部分に付けようとする行為にはほとほと呆れかえっている










そういえば昨日、少し胸元に鋭い痛みを感じた


でも行為に夢中になっていたからその時は深く考えなかったけれど…
あれは何だったんだろう


激しい愛撫からくる痛みじゃない






ちらりと、胸元を見てみると


そこには大きな……






















「……何よこれ」

























先程まで全神経をフル活用させて音を立てないように気をつけていたというのに




もうそんな気遣いなど忘れたかのように、ツカツカとベッドに歩み寄ってシーツを剥がす













「…寒っ……」














シーツの下から現れた恋人

冬眠中の熊のように丸まって寝ていたが呻きながら肩を抱きかかえる












「寒っ、じゃないでしょ。ちょっと、起きなさいよ!」













裸のまま眠たそうに薄目を開けてこちらを見るに、遠慮無く怒鳴った


しばらくして思考が働きはじめたは、
私が怒っている理由を思い当たったらしくニヤニヤ笑い始める










「おはよ、蓉子」



「はい、おはよう。笑っているって事は判っているらしいわね」



「ん?」









蓉子の手から布団を取り返して軽く上にかけてから、

寝癖の付いた髪を乱暴に掻き毟る



惚けたフリをする彼女に、蓉子は苛っとして眉間の皺を深くした














「何よコレは…どうするの、キスマークの様に消えないでしょ」


















そう言って着ていたバスローブを肩から少しだけ脱ぐ

現れたそれをしばらく黙って見つめていたが、やっと口を開いた














「色っぽいじゃん」




「昨日あれだけ言ったのに!今日は仕事でパーティに出席するのよ、ドレス着れないじゃない」




「いいじゃん、胸を出さなければ大丈夫でしょ。代わりにキスマークは付けてないんだから」
















は両手を組んで枕のように後頭部に持っていきながらニヤニヤする




そう、蓉子の胸から少し上にあるのは…









まるで昨夜の行為の激しさを語るかのように付けられている、歯型だった



赤くくっきりと、の歯並びを記憶している




















「あのね、事務所の代表者としてそれなりの格好をしなきゃいけないの。地味な物は着れないわ」




「……んふふっ、おっかし…」




「何が可笑しいのよ」









「だって蓉子の慌ててる姿なかなか見れないじゃん」


















卑しくニヤニヤと笑いを浮かべているに蓉子はため息を吐いた



ちらりと、壁にかかっている時計を見やるとバスローブを再び着直して

布団を掴んでの頭から投げつける



まるで頭隠して尻隠さず基、足隠さず状態のは何とも奇妙な感じだった













「………だって蓉子が色気のある格好を私の前以外でするの嫌だったんだもん」

















「…ふふふっ、貴方がやきもちしてくれる事自体が珍しいじゃない」














頭から布団を被ったままで小さくボヤくのその顔は見れないけれど


蓉子は先程までの怒りなんて何処かに行ってしまったかのように笑いながら布団の上からその頭を撫でる












「…煩い、阿呆」














きっと布団に隠れている顔は、真っ赤なのだろう


昨夜行為に及びながらその事を考えていたのかと思うと愛しい気持ちが溢れてきた











身体のラインが見えるのを頼りに、踏んでしまわないようベッドに腰掛ける

そして布団をゆっくりと下に引っ張ると、


やはり真っ赤な顔をしたがばつ悪そうにこちらを見ていた





微笑みながらその瞳から目を離さずに、布団をもう少し引っ張ると肩が現れる



そこに顔を寄せると、まさかという顔でこちらを見ていたの肩に噛み付いた











「ちょっ…痛いって」












困惑した様に笑うを他所に、蓉子は血が出てしまわない様に強く噛み付く


口を離す瞬間に舌でぺろりと舐めると

そこには綺麗な歯型が残っていた












「あ〜…どうすんの、今日は暑そうだから袖なしの服を着ようと思ってたのに…」














自分の肩を見ながらぼやくを見て



蓉子は一言言い放つ



















「いいじゃない、胸を出さなければ大丈夫でしょ。代わりにキスマークは付けてないんだから」
































それは、愛の印






























fin