ピピピピッ





いつでも令から連絡が来ても良いように、

常に手の中に握っていた携帯を慌てて開くと



そこには1通のメールの着信報告があった





令には電話するように言ってあるから、

だから、違うのだと落胆する





のろのろと、どうせまた蓉子から学校に来るように催促なのだろう、とメールをちらりと見る














「…え……だってまだ…」














メールの主は、そんな筈のない人物から




令から待ちに待っていた連絡はまだ来ていないし


誰かが累の携帯を使っているのだろうか、と







少し急く気持ちを抑えつつ、携帯を目の前に掲げた












(暇。話し相手になってよ)




「令…な訳ないわよね。…………」









(誰ですか?)












そうとだけ返すと、


携帯電話はベッドの上に放置した






すぐに返事は返って来たけれど

期待させられて裏切られた分の落胆は大きくて
しばらくメールを開ける気にもなれなかった











「江利子…?電話が来ているわよ、蓉子さんから」







部屋のドア越しに、お母さんの声がして


重たい身体をベッドから起こして1つ、ため息をつく

ドアを開けると、心配そうな顔があった



お母さんも累の事は知っていたし
むしろ気に入ってたくらいだから、私がこういう状態なのに対しても何も言わない



煩いのは無神経な兄貴達と親父だけど…










「…ありがとう」










それだけ言って、受話器を受け取ると


ドアの向こうにお母さんは消える

閉まる寸前に少しだけ目が合ったけれど、
今は何も話す気になれない










「もしもし?代わったわよ。蓉子?」




『江利子、令からまだ連絡は来てないのよね?』




「来てたらとっくに家には居ないわよ」





『そうね…、私達今から病院に行くのだけれど。江利子も来ない?』












行きたいのはやまやまよ





でもね、




令が祈りを捧げている側で累を見ている事なんて出来ないでしょう?






令を、裏切る事になってしまう

今度こそ本当に





だから、累が目覚めて1番に見るのは


あの子じゃないといけないの











「悪いけど、行かないわ。令から連絡があったら行くから」




『そう…、江利子こそ体調崩してはいないわよね?』









ベッドの端に腰掛けると


先程放置した携帯電話が目に入った





メールの着信を知らせるサイドランプが絶え間なく光り続けている






とりあえず、右手で確認だけはする事にした





ピ、ピピピ…ピピ……









「私は大丈夫よ、それよりも祥子の方はどうなの?あの子の方が危ないんじゃないの?」




ピピ…ピ…




『そうね、確かに心配だけれど。でもあの子を立ち直らせられるのは令しか居ないわ」





…ピ、ピ……






「令?累じゃなくて?」




ピピピ




『ええ、累さんには…きっと与えるだけなのよ、あの子は。でも令は祥子に与える事が出来るから」





……ピ…





「与える?何を?」







…………






『無条件の…見返りの無い物よ。それが何なのか私には判らないけれど』




























(ヒドイなぁ、誰って…履歴見れば判るでしょ?累ですよ〜ん。支倉累復活!!)













『江利子?』











「…待って、蓉子。私も行くわ」







『え?』










「病院よ。私もすぐ行くから!先に行ってて頂戴!!」







『それじゃ…』














蓉子の呟きは聞かず、切ると急いでコートを羽織る




お母さんの制止も振り切って、家を出るとタクシーに乗り込んだ












累…目を覚ましたの?



















私、貴方に言いたい事がたくさんあるのよ



































































「さっちゃん、そろそろ何か食べないと駄目だよ」




「大丈夫よ、放っておいてくださらない?」










婚約者の気遣いも、




今の私の心は


ただ素通りするだけ








お願いだから





私が今聞きたいのはそんな事じゃないの










私が今聞きたいのは貴方の声じゃないの


















累、お願いだから







貴方の…令より幾分低い優しい声で、




囁いて












囁いて、愛の言葉を






















求めるのなら私も囁くわ











愛の言葉を

























ふふっ、滑稽ね











きっと貴方は私以外にも同じ事を言っているんだわ














そうでしょう?















なら、私は…








どうすればいいのよ?

















令に縋ればいいの?














それとも令と同じ顔の貴方に慰めて貰うしかないの?





































教えて、累








『私には祥子しか居ないんだよ』











例えそれが、私だけの言葉じゃなくても







それだけで救われるの















偽りの言葉でも





私の心は軽くなる














軽蔑する?


























ねぇ、令……



































next...