全ての歯車は

軸を失い、音をたてて








堕ちていった――――
















「累ちゃん…どうして……っ」

















言えなかった、たくさんの言葉は……






もう、貴方に届かない











だから、私は


ただ






祈るの

















































―5日前―








薔薇の館はあの日と全く変わっていなくて、


相変わらずギシギシと不安な音を出す階段を昇る


とても恐い



永遠にこの階段は続くのでは無いかと思うくらい、
その先にあるドアまで遠く感じた






蓉子に促されて、開けられた扉の向こうでは


祥子と令が2人で自分達の紅茶やら何やらを淹れていた





1年生達はそれぞれの用事で居ないらしい












「祥子…」










声を絞り出すと、

祥子の手に抱えられていたティーセットが床に落ちた



幸いなことに割れはしなかったものの




恐る恐るこちらを振り返る彼女の背中は


恐怖と不安で埋め尽くされていた









久しぶりに会った相手に、

互いに目を合わせて逸らさない




それぞれの大切な人達が見守る中で



緊迫した空気を最初に破ったのは累だった









「…痩せた?祥子」




「……貴方こそ」











ふと、微笑んだ祥子と対照的に累の表情は凍りついたまま


そんな彼女に祥子は、




改めて痛感するとそれが顔に出ていたのか




肩に手を置かれた














ごめんね













そうとも汲み取れる温かい手に




ずっと堪えていた気持ちがとめどめ無く溢れ出てくる











「っ……心配ばかり、させないで頂戴…」






「…うん、ごめん。……でも令が来てくれたんでしょ?」













「馬鹿ね、貴方は貴方でしょう?累、貴方の元気な顔が見たかったのよ」








「……ありがとう、祥子…私はもう大丈夫」











ふと、祥子の眉が顰められる


肩に置いていた手首を掴まれて至近距離に引っ張られた











「?」




「大丈夫…じゃないでしょう?」




「え、何で?」














「笑わない貴方は貴方じゃないわ、私の知っている累はもっと優しい笑みを浮かべていたもの」













「祥子、それは…」













真剣な眼差しで目前にある累の目を見つめている祥子と、



固まったまま動く事さえ出来ない累







両者を見かねて令が2人を止めに入る













「精神的なものによるし、累だって意識して無表情になった訳じゃないんだから」



「そうね、今この子にそんな事を言っても仕方ないんじゃないかしら?」







令が祥子の背中に手を添えて呼びかけると

江利子も、累の肩を引いて祥子から下がらせようとする





けれど祥子の目は依然として累から離れなかった



累も、そんな祥子の目から逃げる事さえ許されないかのように真っ直ぐ見返してた














「私…笑えてない?」




「ええ、全然…笑う所か困った顔もしないし、怒りもしないわ」






「………そっか…また不器用になっちゃったんだな……」


















「気にする事ないわよ、きっと本当に嬉しいと思ったら自然に笑える時が来るわ」










それまで机に着いていて成り行きを見守っていた蓉子が助け舟を出す



祥子も





令も






江利子も











誰も見た事のない



今までで1番悲しそうな顔を見せられて

何も言えなかったから











「大丈夫、焦る事無いさ。ゆっくりやっていけばいいんだよ」




















「ありがとう、蓉子さん、聖さん。…………でも」





































私にはもうあまり時間が無いんだ――――






























君の言葉は 



夢の優しさかな?







嘘を全部覆い隠してる

















ズルイよね……


































next...