堕ちていった歯車の破片は
粉々になって
気をつけないと踏んでしまいそうだから
私はそれらを拾い集めてポケットに入れるの
「どうして私達に何も言わないで……」
―4日前―
「これ、あげる」
突然部屋に入って来るなり、
差し出されたのは大きなダンボール箱
床に座って本を読んでいた令は呆気に取られていた
目の前のちゃぶ台に置かれるそれをただポカンとか見ている
「何、これ…」
「色々、要らないから貰ってよ。令も要らなかったら由乃にでもあげて」
「突然どうしたの?」
本を床に置いてそのダンボール箱の中を覗き込むと、
そこにはたくさんの本が積まれていた
「うわ、たっくさん」
「うん、あ〜別に売っちゃっても構わないからさ」
「だから突然どうしたの?」
きょとんとした妹の問いかけに、
累は部屋のドアを閉めてからベッドに腰掛ける
1冊1冊物色しながら取り出している令の背中を見つめながら
累の口が開かれた
「……少し整理しようと思ってさ、身の回りの物を」
いつもと様子の違う累の声色に、
令は振り返って彼女の顔を見るけれど
いつもと変わらない顔で
ただ
「ふぅん」
とだけ頷いて背を向けてしまった
あの時、背を向けてしまった事をとても後悔している
もし、もっと問い詰めていれば
思いとどまってくれたかな?
「令」
肩にかかる重みに
身体中の筋肉が働くのを忘れてしまったらしい
「色々と、ごめんね……君は私の自慢の相方だ」
耳に囁かれるそれは
聞き取れそうで
聞き取れなさそうで
何だか
累が消えていってしまいそうな気がした…
やっと戻ってきてくれたのに、
今度は何所へ旅立とうとしているの?
その、
傷ついた身体を抱えて
傷ついた心を抱えて
貴方は何所へ旅立とうとしているの?
……考え過ぎだと良いのに
「あ〜っ、令ちゃんと累ちゃんがイチャイチャしてる!」
突然の声に、背後に集中していた意識が全て消える
累が耳元でクスクス笑っているのが聞こえた
由乃が不満気に部屋の中まで入ってきて、
私と累の間に割り込む
一旦、私を背後から抱きしめる累の手が離れたかと思うと
その間に由乃を抱えてもう1度抱きしめてきた
「重いよ、由乃、累」
「あははっ、こんなの何年振りだろうね〜」
「あ〜、暖かいなぁ由乃。子どもは体温が高いって言うからかな」
「何よ!私は子どもだって言うの!?2人共私と1歳しか違わないじゃない!!」
「そうやってすぐムキになる所が子どもなの」
「令ちゃんまで!馬鹿馬鹿馬鹿!!」
「痛い痛い痛い!何で私だけ!?」
「2人共…ずっと仲良くしなよ」
「「え…?」」
「さて、と。行かなきゃ…」
するり、と2人の身体から離れた腕が
とても冷たかった
立ち上がった累を、令と由乃は見上げて
ただ見守るしか出来ない事を痛感する
「何所に行くの?」
「ちょっとそこまで」
由乃の問いに、
答えた累の顔に
久しぶりに笑顔が見れた気がして
何だかとてつもない不安にかられる
累の袖を引っ張って、立ち止まらせた
「何所?」
「……何処かへ」
「……また、行っちゃうの?」
「…だから、ちょっとそこのコンビニに行って来るだけだって」
「本当?」
「大丈夫大丈夫、すぐ帰って来るからさ」
久しぶりに見れたと思った笑顔は
気がついたら消えていて
目の錯覚だと思ってしまったけれど
あの時、
本当に累は笑っていたんだと思う
ねぇ…
何処かって
何処なの?
旅立つ君に
冷めた背中見せて
聞いていたよ
1人戦うの?
ズルイよね…
「帰って来るから」
追い越してゆく君の声
意地張って
強いフリ
時を戻して
叫べば良かった?
行かないでと涙こぼしたら?
今はできる
どんなことも…
next...