だから、私はそれらを蒔く事にしたわ




あの子が好きだった煙草を添えて










あの子が好きだった、夕日が良く見える丘に蒔く















「もう…何処にも居ない……の?」











まだまだたくさんの言葉をかけたかった








まだまだたくさんの愛を捧げたかった

















ある日突然ひょっこり現れそう






お願い







何も無かったかのように、



また笑って








声をかけてよ







































―2日前―











「ねぇ、聖!ちょっと…これ見てよ」




「何〜?おぉ、これはこれは……」




「江利子に見せたら喜ぶと思わない?」





「絶対喜ぶ」












市外のコンビニで、


聖が買いたいものがあるというので付き合った所






暇つぶしに雑誌でも買おうかと本棚へ向かった






すると見慣れたような見慣れてないような顔があって

その雑誌を手にすると






若い女の子達向けの、普段なら絶対読まないような雑誌の表紙に




親友の江利子の恋人が写っていた






















「モデルのバイトしてたんだ、あの子…。なるほどなるほど、お金に困らない訳だね」



「そうね、家に寄り付かないで生活する方法なんて働くしか無いもの」










特集面ではバイクに寄りかかって、ニッコリ微笑んでいたり



左目を瞑って舌を出すという遊び心たっぷりだったり








見た事も無い累が居た











編集者とか


読者達のコメント欄を見ると




かなり人気があるらしい















動かない彼女の瞳を見ていると



吸い込まれそうで








祥子や江利子達


そしてこの雑誌の読者達が






彼女に惹かれた理由も判る














顔に何も変化が無いという事は


きっと今回の事件が起こる前に撮ったんだろう






傷なんて何も無く




笑顔もちゃんと出ている


















「こんな、風に笑える子だったのね」



「うん、…こうやって見たら令と似ているね」



「ええ、双子だって言われて納得出来るわ」








よし、という声が聞こえたかと思うと


手中に収まっていたそれを上から奪われる









「買おう」







レジへと向かう聖の後ろ姿を見送ってから


まだ本棚に置かれている雑誌の表紙を飾っている累の顔に目を向ける








そして






視線を感じて




ちらりとその上を見ると

















「……っっ!!!???」











本人が硝子に張り付いてこちらを見ていた




心臓が口から飛び出るという形容が正しい程動悸が止まらない胸を押さえると







段々可笑しくて笑えて来た














「何やってるの?」




(デート?)





「違うわよ!」




(へぇ、羨ましいこった)














読唇だけの会話にクスクス笑いながら

コンビニを出て直に彼女に笑いかける









「吃驚したわ、いきなり本物の貴方が居るんだもの」




「お買い上げありがとうございます」









馬鹿丁寧に頭を下げる累の隣に、

雑誌にも写っていたバイクが停まっていた





ちなみにその隣には聖の黄色い車があるんだけどね














「どうしたの?こんな所で」




「どうしたのって言うか…此処うちの近くだし」




「ああ…そういえばそうね」









辺りを見回せば、そういえば令の家の近くだった、と確信する


ついでに由乃ちゃんの家の近くでもある












「…蓉子さん、何か…良い匂いがする」






「……あぁ、さっき聖と香水見てたから」







「う〜ん、この香水買った方が良いよ?うん、ピッタリ」







「え?…ちょっ……」










累は頷きながらいきなり抱きついてきた


そして首筋に鼻を埋めて更に納得する










そして、







聞き取れるか聞き取れないかくらいの声で





















彼女は呟いた


































「あ〜〜〜っっ!!何やってんの!累!!!」









店から出てきた私と累を見つけて、
大声で叫びながら向かってくる聖に



累はパッと離れた















「え…ちょっ、累…」















「聖さん、ヤキモチ?」



「煩いよ、君は。公衆面前で何やってんだ」



「聖さんだって所構わずなタイプでしょ?」



「もち!」




「断言しないでよ」


















聖とケラケラ笑いながら背中を叩きあっている累を見ると



まるで今しがた聞いた言葉を発した人間と同一人物とは思えなかった








実際笑ってはいないけれど



まるで今の累は









笑いたいけれど







笑ってはいけない、と

















自分を戒めているみたい




















「聖さん、蓉子さん一筋なのも良いけど江利子さんも構ってあげなよ?」




「何ですか、突然」








「江利子さんは、2人の大事な友達でしょ?」











「……そうだよ」
































「じゃあ、江利子さんが泣いていたら直に飛んで行ってくださいね」





























































「どうしたの?蓉子。さっきから変だよ」






車を危なっかしい運転で操縦しながら、

隣から聖が話しかけてきたけれど





私の頭の中は先程の累の言葉でいっぱいだった







どういう意味?










ねぇ…



















「ねぇ、聖。『江利子を頼む』ってどういう意味だと思う?」











「累がそんな事言ったの?」













「……そう。抱きしめられた時に耳元で言われたの」































『江利子さんは、強いけどきっと強いゆえに弱いから…お願い、頼むよ』





















「どういう意味?」








「判らないわ…でもあの子……」






















まるで自分が居なくなった後、後を頼む








って





















託しているように聞こえない?












































「祥子」




「何?」










夜空は、瞬く星達が見えてたらきっと浪漫なんだろうけど


こんな都会にそんな光景が見られる訳無い






ただ1つ弱々しげに輝いている月を見上げて











あの日と同じように











小笠原家の門の前で、累は夜空を見上げていた













「あぁ、寒いよね…。何処か喫茶店でも……」




「平気よ、それより話って?」











カーディガンを羽織って肩を擦る私を見て累はハッとしたように気をかけてくれたけれど


今の私にそんな余裕は無かった





早く本題を聞きたい


これ以上何を言われるのか判らないけれど








私は令から言われていたから








累が

目の前に居る累が笑える日が来たら





その時はもう1度ちゃんと令と累、どちらかを選んで欲しい




















私に選ぶ権限なんて無いと思っているけれど









それでも令は言ってくれたから





令の代わりに令の大事な人を求めてしまったという大罪を犯した私に
















だからちゃんと答えなきゃいけない





それが今の私に出来る唯一の事だから
















「ねぇ、祥子」






「………何よ?」












「空は、広いね」










「…何よ、今更」








































「私が1人居なくなっても、世界は何も変わらず周り続けるんだよ」












































さぁ


















夢に見た





















世界へ


























私は旅立つから






















最後に貴方へ

























愛の言葉を捧げよう


























捧げて


























突き放そう







































私を忘れてくれるように…




































「手紙を書くから」



視線そらした君の声








意地張って





強いフリ














時を戻して



怒れば良かった?



待てないよと肩を落としたら?























今はできる

























どんなことも































next...