貴方は









たくさんの嘘を私に吐いていたけれど


















そのほとんどは嘘だと見抜いていたのよ?






























でもね





1つだけ判らなかった真実があるの






























私は貴方を愛していました

































貴方は
























私を愛してくれていた…?




































言えなかった




1000の言葉を


遙かな

君の背中におくるよ








翼に変えて












言えなかった


1000の言葉を



傷ついた

君の背中に寄り添い





















抱きしめる……








































―1日前―


















「……何してるの…」







お母さんに呼ばれて部屋から降りて来てみると、


リビングには俄かに信じられない物が広がってて

さすがの私も呆気に取られる






日曜で仕事が休みなため家に居た3人の兄貴達が、昼間っから酒乱パーティを開いていた




何よりも驚きの原因は

その真ん中には無表情で黙々と酒を飲んでいる累










「えぇと、ね…1時間くらい前からいらしていたんだけどあの有様で」



「もっと早く呼んでよ、お母さん…」



「だって私も累ちゃんに会うの久しぶりだったんだもの、だからついつい世間話に花を咲かせてたのよ」




「……とにかく、累は返して貰うから」











いざ行かん、戦場へ



酒の空缶が転がっているソファ周りを慎重に掻い潜って
真ん中に拉致されている姫…もとい、王子を救い出す



もう兄貴達はべろんべろんに酔っ払っていて意識さえも危ういから

それは思いのほか簡単に達成できた










「ほら、累。貴方も昼間っから何飲んでるのよ」









手を差し伸ばすと、

ゆっくりと顔を上げた累と目が合う




そして





その手を握ったかと思うと、前方へ思いっきり引っ張られた











「っ!」








私の身体は引力と重力に逆らわずに前へと倒れこんで


累の腕の中に納まる



仕方なくその膝の上に座り彼女の首に両腕を回して顔を覗き込んだ







相変わらずいつもの氷の顔なのだけど


心なしか頬がほんのり色づいているのはお酒が回っているからなのだろう











「…酔っ払ってるの?」





「ん〜、全然」





「嘘吐き、顔が赤いわよ」






「それは江利子さんが綺麗だからだよ」







「ふふふっ、口説きのテクニックは衰えてないわね」







「そりゃどうも」
















自然と近付くお互いの顔に、


目を閉じる








…が、いつまでも唇に感触が無く




目をそっと開けると













私と累の顔の間に大きな手が立ち塞がっていた














「……邪魔しないでくれる?」









「駄目だっ、俺達の江利ちゃんと如何わしい事をするな!」



「江利ちゃんとそういう事していいのは俺達だけだぞ」



「ほらほら、降りなさい。そんな所に居たら襲われかねない」











酔いつぶれていたはずの兄貴達が復活していて、


3人で揃って私と累の間に立ち入っている






累も、本来令とあまり変わらない性格だから特に抵抗もせず


ただボーッとして私と兄貴達のやり取りを見ていた
















「私がキスするのは累だけよ、自惚れないでよ。もう…部屋に行きましょう」





「なっ、なななっ……何ていう事をっ!!」

「いけないぞ!部屋に行ったら今度こそ襲われ…ぐっ…!?」

「え、江利ちゃん…」






煩い兄貴は殴るに限る







膝から降りて、累の手を引いてソファから立ち上がらせた


邪魔な兄貴達を押しのけて部屋から出る道のりを作ると、




手を繋いだままリビングから出る










が、その身体はビクリとも動かず


その場に立ったまま動かない












「累?」




「…いや、私帰るから」






「え?まだ全然話してもいないじゃない」






「いいんだよ、江利子さんや皆さんの顔が見れたから」
















そう言って兄貴達とお母さんの顔を見回す累



そして、そっと私の頬に手を添えた

















「さよなら、江利子さん」






「え……」



















触れるだけの、優しい口付けを終えた彼女は




1度だけそっと抱きしめてきた











異様な雰囲気を感じ取ったのか、

今度は兄貴達も何も言わない
















「それじゃ、バイバイ」



















すり抜けていった手を、










私が握り締めて






















離さなければ














累は私の側に居てくれたのでしょうか…



















遠ざかるバイクの音をバック音に




私の頭の中を1つのフレーズがリフレインし続けた
































聞こえてる?



1000の言葉を
見えない




君の背中におくるよ








翼に変えて


















聞こえてる?


1000の言葉を


つかれた
君の背中に寄り添い













抱きしめる











言えなかった


1000の言葉を


Lalalala...

君の背中におくるよ









翼に変えて











聞こえてる?





1000の言葉を

Lalalala...









君の背中に寄り添い















Lalalalala....







































そして、







累は再び私達の前から姿を消した――――

























「令、累を起こして来てくれる?」





「は〜い」












静かな朝、お母さんがキッチンで朝食を作っている音だけが家の中に響き渡る中で


私は洗面台の前で制服のタイを結んでいた









お母さんの声に、返事を返すと今しがた降りてきたばかりの階段を昇る











累の部屋に入る時にノックをするという義務は無い



それに睡眠時は補聴器を外しているからいくら呼んでも聞こえないから









「累、起き…………」










ドアを開けると、


そこには誰も居なかった










ただ、綺麗に畳まれている布団と


空になった本棚だけがある

無質素な部屋に朝の日差しが侵入しているだけ

















「…あれ、もう起きてるのかな」













独り言でもいい


とにかく何故か逸る気持ちを押さえて、


再び階段を降りてリビングへと向かった











「お母さん、累もう学校行ったんじゃないの?」




「あら、そうなの?珍しいわね…」




「うん、だって……」












お母さんと2人でそんな会話を交わしていると、


玄関の扉が開いてお父さんが帰ってきたのが判る





朝の稽古を終えた父親が、タオルで顔を拭きながらきょとん顔でリビングに顔を出してきた














「今日学校休みなのか?累のバイクが無いから…何処に行ったんだ?」







「…え……!?」























慌てて車庫へ出てみると、



確かにバイクも無くて












家中を探し回ったけれど、








累は何処にも居なくて





















累が気に入っていた真っ黒な革靴も消えていた……





















『もしもし、令?私よ、どうしたの?こんな時間から』



「あ!お姉さま!!朝早くからすみません!あの…累がそちらにお邪魔していないですか?」







眠いからなのか、少し気だるそうな声に気を遣うのも忘れて

私は受話器を掴んで叫ぶ







『累?来てないわ。昨日の昼来たっきりよ?何かあったの?』



「そう…ですか。いえ、累を起こそうと思ったら何処にも居なくて、バイクも消えているんです」



『何処かフラッと遊びに出たんじゃないの?生真面目な貴方と違って気まぐれだし』



「でも……なんだろう、凄く、嫌な予感がするんです」



『令、ちょっと貴方落ち着きなさいよ』
















「どうしよう、…っまたあの人死のうとしているのかな」































ねぇ、マリア様




累は、最後に笑ってましたか?













ねぇ、累








聞こえますか?




私達の想いは

















届きますか―――?






































































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