私が貴方と、

初めて会ったのは













雨の夜だった























『ごめん…、私は由乃の事があるし……約束があるんだ』




『約束?』











『そう、私の世界中で1番大切な人との約束』
















長年の想いを伝えて、返ってきた返事はNOだった




行き場を無くした想いを抱えてただ歩いていたの


危ないから近寄っちゃいけないと言われている街外れを彷徨っていたら






目に流れ込むネオンの中に、













貴方を見つけたの
















傘も差さずふらふらと頼り気ない足取りで、どんどん路地裏に入っていく貴方





まるで絶望でもしているかのような目だったわ














まさか、こんな所にあの人が居ると思わなくて



でも、由乃ちゃんと喧嘩でもしたのかと気になる自分が居て






結論は貴方を追いかけて行ったの














ネオンの光も届かないくらい奥に行ったところ、

行き止まりの道にただ忘れ去られたゴミ捨て場があって



そのゴミの中に座り込んで貴方はビルの間から見える星空を眺めていた








雨に濡れるその顔は、










泣いているように見えた















『令…?どうしたの?こんな所で……』





傘を彼女の頭上に差して、

目と、夜空を、遮る




そこで初めて私の存在に気付いたのか、貴方は若干驚いたように私を見つめ続けていたのよ








そして、やっと判った




貴方はあの人じゃなかった、って








あの人の目には絶え間なく燃え盛る小さな炎があったけれど、











貴方の目には、ただ夜の街を濡らす雨しか映ってなかった








いつまでも言葉を発さない貴方に、不審に思いながらもハンカチを差し出す








『ほら、傘も差さず…。風邪をひくわよ?』












それでも、あの人に似た貴方は口を開く事は無かったわ





そして…貴方はずっと喋らなかった








家の車を呼んで、

シャワーを浴びさせて、

温かいスープを飲ませて、




眠りにつくまで貴方は喋る事がなかった












翌日、熱を出した貴方を掛かり付けの医者に診断して貰った時は本当に驚いたの








『耳が、聞こえてないみたいですね』












そういえば、と




名前を尋ねても

家を尋ねても


何があったのか尋ねても








貴方はただ明後日の方向を見ていた





聞こえていなかった…のね











『でも、喋る事は出来るはずですよ。声帯にも何らかの異常は見当たりませんでしたし…』











なら、どうして貴方は喋らないの?








そんな事ばかりを考えて、貴方に付きっ切りで看病したっけ



その甲斐あってか2日後には全快した









そして、貴方はベッドから這いずり出し私の頬を擦って





ただ優しく微笑んだの








(ありがとう)






そう言われている気がして、ふと思った




喋らなくても、この人の感情が死んでる訳ではない










何とかなるわ

















あの人にとても良く似た顔で、貴方は優しく微笑む


あの人にとても良く似た顔で、貴方は可愛らしく拗ねる





…あの人に全然似ていない顔で、貴方はただ静かに涙を流す

















そんな貴方を放って置けなくて


でも何をすれば良いのか判らなくて






貴方を、求めたわ








貴方は必要とされているって事を教えたかったの






ただ静かに微笑んで、貴方は頷いてくれた


あの人は私を拒んだのに…あの人によく似た貴方は受け入れてくれた








何だかマリア様の悪戯に思えて

とても切なくなったわ



















貴方と愛を育むようになってから、






あの人の顔がまともに見れなくなった




全然関係ないはずなのに、


何故だかその顔が見れなかった








































「それで?祥子は令のお姉さんと付き合っているって事?」






信じられない、という形容がとても良く当てはまる顔をしてみせて聖は聞き返した


さすがの蓉子も仕事なんてしている場合じゃないらしい
ペンを卓上に置いて、江利子の顔を凝視する




視線の集中されている主は、ため息を1つ吐いて頷いた







「ええ、多分…祥子は知らないんだと思うわ」

「じゃあ…その、つまり祥子の相手は男なんかじゃないって事?」

「……姉って言葉は男性にも使用するの?知らなかったわ」

「…………マジで?」

「マジで」

「幾らなんでも判るでしょ?双子なんだし…祥子だってさ」

「判らないわよ、世の中には自分と似た人なんていくらでも居るもの」







驚きを隠せない表情に、江利子は紅茶を一口飲んでから

空席となっている妹の席を見やる








「問題は令の方なのよ、実は」




「令が?どうして?」







蓉子の顔を見据えて、深刻な顔つきで説明をした








「依存、しているわ。多分、令は…自分の片割れに」




「依存て…由乃ちゃんに対するのみたいに?」









「いいえ、恐らくはそれ以上ね」










聖と蓉子

2人が顔を見合すのを見届けてから、



江利子はまたため息をついた












「きっと、嵐が起こるわ。あの3人が向き直ったら……」





























きっと、累は、







嵐を



呼び覚まして








全てを














壊すんだ……
































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