「では、この人は支倉さんでは無くて貴方の遠い親戚の方なのですね?」









「…はい。小さい頃からよく遊んでいてとても仲が良いんです。だからそういう仲だと間違えられても仕方ないと思います」





何度目かの確認をしてくるシスターに、

凛と背筋を伸ばして答えるものの、正直参っていた



登校するなり周りは異様な雰囲気だし、

クラスメート達もいつもに増して私を避けるし、

妹である祐巳ですら朝から1度も顔を見せない



原因を知ったのは、放課後のHRが始まる前に生活指導室に呼ばれてからだった




いつの間にか、
私と令が付き合っているという事実が明確にでっち上げされていて、



かなり度肝を抜かれた






こうして答えては居るけれど









何だか累という存在を揉み消しているみたいで悲しい


累という人間は存在するのに、





でも










とても悲しい




















「判りました、では…新聞部に注意をしておきますので。ご苦労様」





「…はい、それでは失礼します」







やっと、この詰問から解放されるのかと思うと自然と急ぎ足になった

とりあえず、お姉さま方も心配しているだろうから薔薇の館へと向かう





中庭を過ぎる時も背後に視線がちくちく感じられたけれど、

気にしない







だって、








私と令が付き合っている事実自体は何処にも無いもの










私は、それを望んだけれど



令は、それを拒んだのよ












馬鹿馬鹿しい

人を格好のネタにして盛り上がっている生徒達が軽蔑しか出来ない










「只今戻りました」




ビスケット扉を開けると、ぎょっとこちらを見て話を中断するメンバーに


内心傷ついた



仲間達だけでも信じてくれれば良かった、のに

きっと噂について話していたのだろう




不自然に笑いかけてくる祐巳ですらイライラする








「おかえりなさい、疑惑は解けたの?」


「…ええ」




お姉さまに答えながら、いつもの自分の席についた

ふと、周りを見回すと、


いつもの数が1人足りない








「あら…、令は?」





そういえばあの場に噂の対象である令が居なかったのはおかしい

今更ながらに気付いた





「熱を出して休んでいます」




由乃ちゃんが苦笑をしながら、令の席を見つめて教えてくれた

熱を出す事も一緒なのね


と、心の中で自虐的に笑う










「そう…珍しいわね」



























「貴方は風邪ひかなかったの?」




「「江利子!」」











私を正面から見据えながら、頬杖をついて詰問をしてくる江利子さま

それを同時にお姉さまと聖さまが咎めた








「…?……いいえ、ここ数年患ってませんが」








江利子さまの、顔が歪む



それは怒っているとも窺えるもので

何処か怖い









「…江利子、やめな。祥子だって訳わからないよ」







聖さまがそう告げると、江利子さまは私を捉えていた視線をふいっと窓の方に向けた








「ごめんね、祥子。江利子今日アレでさぁ、機嫌悪いんだ」



「あぁ…そうだったんですか」








ふと、周りを見ると


皆からの眼差しが何処か変だった










それが何を意味するか判ったのは









ずっと















ずっと後の事だった……






































「累さん、美味しい?」




「………」





「そう、良かったわ。貴方はあまり甘い物を好むとは思わなくて、甘さ控え目にしてみたのよ」






「………」








清子の問いかけに、累はモグモグと口を動かしながら頷く


それを見てホッとした様子の清子は累の頭を軽く撫でた







「今朝から元気無いから心配だったのよ、何処か具合が悪いのかと思って」



「…………」











確かに朝起きてから身体がダルい

熱こそは無いものの、動く事がおっくうでありずっと祥子の部屋に居た

















(………ダウンしたか)











彼女は心の中でフッと鼻で笑う





今頃寝込んでいるであろう一身同体の相手を想って



















(もっと、もっと苦しめばいい)








































アンタは私の全てを奪った




























私は、アンタの全てを奪ってやる






















苦しませてやる










もっと、立ち直れないくらいに苦しませてやる



















(そろそろだな)


























嵐が、


到来した







後は目的の場所へ向かうだけ……





























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