[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。


























(珍しいもん見ちゃった、江利子さんがあんなに泣き叫ぶなんて信じられないな)
















久しぶりに会った累は



相変わらず悪戯っ子のような笑みを浮かべて

第一声に減らず口を叩いた









自然と私の顔にも悪戯っ子のような笑みが浮かぶ





2人でただニヤニヤしている光景なんて


気持ち悪いだけかもしれないけど










でも私達流のコミュニケーションはこれなのよ


















(うん、生で見られなかったのが残念)








『何よ、子どもみたいに飛び出して死ぬ間抜けに言われたくないわ』








(うははっ、相変わらずキツイな~)


















心底可笑しそうにお腹を抱えて笑い転げる累に


しかめっ面をしていた私も次第に可笑しくなってきた


















『久しぶり、累』









(うん、……ただいま。江利子さん)






















累の目を見て、優しくそう言うと







嬉しそうに目を細めながら累は頷く



















私の手を取って


自分の頬に当てた








温もりが伝わってきて安心する






あの日の累じゃない












血が溢れ出して


だんだん冷たくなっていく累じゃない













あの頃の、


私の中に居る累だった






















『お帰りなさい、累』









(ただいま)

























ずっと貴方に言いたくて







言えなかった言葉





















今こそ言うわ

































『愛してたわ、貴方を』













(うん…ありがとう)














『愛しているわ、貴方を。ずっと、永遠に』


















(………江利子さん、ごめんね。本当に)

























そう告げると、

累はただそれだけ呟いて私の身体を抱きしめてくる







どうして謝罪の言葉が出てくるのか、意味が判らない

























どうして?







































(江利子さん、もう貴方を縛らないから…貴方にはあの人と結婚して欲しい)



















『何言って……』












































(いつまでも私に縛られないで、貴方にはちゃんと前を向いて歩いて欲しい)











『随分勝手な事言うのね、最初は令を苦しませるために私に近づいておいて』











(それは、悪いと思っている。祥子にも本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだよ)










『それで私を貴方なしでは生きていけなくさせといて、いきなり放り出すの?』











(違うって、江利子さん。私は……貴方を愛しているよ。ずっと、永遠に)











『なら、どうしてっ!?』



























抱き寄せていた私の身体を少し離して


累は私の顔を覗き込む













































(私は、もう…死んだんだ)

















その言葉にはっとして、顔を上げると

















すぐそこで、彼女は優しく


でも悲しそうに笑っていた


































(しょうがないよね?だからもう、いつまでももう存在しない人の事を想い続けては駄目だよ)














『累…』































(私はね、ずっと…皆の記憶に残れる方法を考えていたんだ)































『累、貴方はもう…』





































(そのためには、死んだらどうだろうって何度も考えてたんだ)


































『………』









































(でも、今はこんなに…こんなに生きて居たかったと思う自分が居る)


















































そっと涙が零れ落ちたその後頭部を自分の肩に引き寄せて抱きしめる




僅かに震えているその身体が堪らなく愛しく、力の限り抱きしめると

弱々しく私の背中にも両腕が回されて力無くも私の背中を握り締めてきた























『馬鹿ね、貴方は…もう皆の中に特別な1人として存在しているわよ』




















(………本当?)
























『ええ、誰も貴方の事を忘れなんてしないわ』
































(だとしたら、嬉しいなぁ。嬉しくて…幸せ過ぎて……泣けてくるよ)












『ふふっ、もう泣いているくせに。令に約束させたんでしょ?泣かないって』
































(……江利子さん、令は笑ってる?)











『ええ』
















(祥子は、笑ってる?)















『ええ』















(聖さんと蓉子さんは?)















『幸せそうよ』

















(由乃と、志摩子と祐巳ちゃんは?)















『相変わらずよ』















































(江利子さん)
















『何?』








































(貴方は、笑っている?)
































『………貴方が居てくれたら笑えてたわね、きっと』































(ごめんね、江利子さん。本当に……)



















『…いいわよ、もう。貴方はいつだって側に居てくれるんでしょう?』
































(うん、約束する。江利子さんとあの人が幸せになれるよう、祈ってるよ)


























『…累』


















































(愛していたよ、江利子さん。そして…愛しているよ)


















『ええ』














































(さよなら、愛しい人。こんな私を守ってくれて有難う)


















































さよなら












愛しい人

























こんな私を愛してくれて有難う





























有難う、愛しい人




































生まれてきてくれて、有難う










































































夢は、覚めたけれど






忘れないわ

















貴方と過ごした日々




貴方の温もり




貴方の声




貴方の微笑み



























さよなら




















ずっとずっと愛しい人








やっと言えるわ



さよなら、って


















それはとても寂しいけれど























とても、嬉しいわ






































改めて向き合えて






















言葉を交わせて
































私はもう、それで十分よ









































支倉 累












貴方へ送るわ





私達の想いを































貴方を、忘れないわ









































































fin